長崎広島を詠む

   其一
色滅花消只失声
爆風疾走断人営
当時試問皆焦土
社殿残門一脚迎

  其ニ
円堂惨事幾回桜
一瞬閃光滅尽精
熱線傷痕残史跡
川波相映夕陽傾

  其の一
色は滅し    花は消え   只声を失うのみ、
爆風の疾走    人営を断つ。
当時    試みに問えば   みな焦土、
社殿の残門    一脚にして迎える。

   其ニ
円堂の惨事    幾回の桜、
一瞬の閃光     精を滅し尽くす。
熱線の傷痕    史跡に残る、
川波   相映ずる   夕陽の傾くに。

  (訳)
色はなくなり花は消え失せて只声を失うのみである。
爆風の疾走は人の営みを断ってしまった。
当時の事を問えば皆焼け野原の焦土と化していた、
神社の鳥居が一脚を爆風でもがれて今でも迎えている。

原爆ドームの惨事から今咲いている桜は何回目の桜だろうか?
一瞬の閃光は生命を滅し尽くすかの様であった。
熱線の傷痕は今もその石畳に残っている、
川波に映ずる傾いた夕日に照らされたドームにである。

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