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足利銘仙の宣伝・販売戦略 vol.3

新生活や新しい門出を祝うかのように、桜のシーズンが到来してきましたね。
桜の開花が今年は例年より少し遅いようですが、春を待ちわびるワクワクと新しい季節が始まることへの不安のような気持ちが混ざったこの季節。この時期特有の緊張感がありますね。
私は、3月末に埼玉の幸手市の権現堂桜堤にお花見に行ってきました。まだ一部しか咲いていませんでしたが、菜の花と桜が一緒に楽しめる素敵な場所ですね。屋台の匂いにつられて、花より団子…になった感は否めませんが(笑)
夫が各地の風景を撮影し、故郷を思い出すようなきっかけになれば…という趣旨でインスタを投稿しているおかげで、今年は何ヵ所か桜の名所を巡れそうです♪
 


 
 
さて、今日は足利銘仙の宣伝、販売戦略の四つの柱のうちの3つめの要因、日本一を目指す為の宣伝ポスターとレコードの制作についてお話します。
 
前々回からもお話していますが、足利銘仙では、図案や染めの職人を京から呼び寄せる一方で、宣伝や販売戦略にも力を入れ大胆で先進的な方法を実現させていました。
 
足利銘仙を売り込むために、「思い切った手を打たなければ駄目だ」という思いのもと宣伝ポスターやレコードの制作を行いました。そして、日本一を目指すからこそ!という思いから、ポスターを描いてもらう人も日本を代表とする人でなければと考え、数々の有名な日本画家・美人画家・洋画家・図案家にポスター作製を依頼し、足利銘仙を纏ったモデルには当時の人気女優を起用しました。そして完成したポスターは、日本国内はもちろん、満州・朝鮮・台湾の問屋などに、また前回でも述べたように女子中等学校にも配布され、ポスター以外にも絵葉書も作成されました。その結果、足利銘仙のポスターは、宣伝販促だけのものという枠を超え、美術的な価値が生まれたと言えるのではないでしょうか。
 


 
ポスターの他にはレコードも作成され、ポスター同様、当時の人気歌手に依頼しました。
ポスターは目からの情報、レコードは耳からの情報ですね。まるで世間を銘仙一色に染めるかのような宣伝、販売戦略だったのかもしれません。商品名を繰り返すようなCMや記憶に残るポスターやキャッチコピーなど、記憶を思い起こすとなにげにありますよね。
インターネットやSNSも無く、また販売店も少なく、今より限られた宣伝方法でありながらも、日本一を目指すべく足利銘仙では、活気的な宣伝、販売戦略を生み出し実現させていたと思うと、関わる人の熱量とアイディアの豊富さに驚きます。
またこれらのおかげで足利銘仙には、衣服としての機能以外に新たな価値付けがなされたかもしれません。商品の機能や目的の他に、販売方法やパッケージ、CMに起用する人物などを通してイメージとして付加価値が付けられていることがありますよね。今ではよく聞くブランディングが、当時の足利で実現していたと思うと、足利銘仙に関わる人々の想いが強かったのだと想像できます。
 
ポスターやレコードの資料は足利にある足利織物伝承館で実際に見ることができますよ♪