【まくら✖ざぶとん】⑨②『もみじ狩り』
さてさて季節は行楽の秋。なんて毎年のように飽きもせず同じことを言っとりますが、昨年は甥っ子つれて蹴まりを観に行ったが今年は違う目的地、どうやらなにやらちょうど見ごろのものがあるらしく。
根も葉もあるどころか根と葉そのものの噂を聞きつけて出発した行楽地たるや栃木県は日光の広葉樹林。赤く色づけば紅葉で黄色くなれば黄葉、人々が心を高揚させる効用を求めるのがもみじ狩り、いちご狩りやぶどう狩りと違って口にはしないが腹の足しより心を惹きたけりゃ団子より花、団子鼻の日本人がすごいすごいと感想を哀れな語彙力でもって口にする。
あるいは自然が織りなす色彩の氾濫、夏までは緑一色だった山肌に赤・黄・橙がぼやける印象派の風景画、均一に染まって赤一色になれば九蓮宝燈。〈一色の紅葉〉とかけて〈麻雀の役満〉と解き、どちらも拝むのが難しい絶景、とその心を割り切ってオチつけてみりゃ、風光明媚を見て風流韻事する日本人たるものわびしさびしの感傷ともののあはれに通ずるのは儚さ。
オチに儚いといえば落ちて儚いことそのものなのが落葉、行楽地で幸楽を感じられるのもほんの束の間、数日後にはいろはにほへとちりぬるを、紅い葉が落ちれば紅落、黄色が落ちれば黄落、赤一色が落ちたら地面には赤い絨毯たるレッドカーペット、アカデミー賞はまだ先の話ならバカデミー賞ともいうべき爆笑レッドカーペットこそ浅き夢見るようなショートネタの祭典。
せっかくオチから風情のある落葉につなげたってのに、またオチに逆戻りしたなら笑いで落とすほかなし。
今年の紅葉をあえなく見逃したってんなら、風呂から上がった身近なリアクション芸人の背中を平手で「モミジ!」
バチン!と叩けばそこには儚き一葉、数分後にはいたみのこれどちりぬるを。
えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!