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#3 二階建てバスでオックスフォードの語学学校へ 30代からの英国語学留学記 2018年2月12日 その2

オックスフォードの住宅街からバス停まで

イギリスらしい、どんよりとした陰気な空の下、オックスフォード郊外の住宅地を歩きバス停へと向かう。
イギリスに限らず、海外の住宅街を歩くのは初めての経験。

単なる住宅街と言えば住宅街なのだが、年季の入ったレンガ造りの英国版長屋ことテラスハウスが立ち並ぶ光景は日本では見られない。画一的な造りのため、ちょっとしたディストピア感がある。
流石ビックブラザーの国。

大した会話もなく、バス停へ到着。
他にも4,5人、地元の人らしき人が並んでいる。

家からバス停まで所要時間はおおよそ5分。
学校まで20分程度、というシナンの言葉を信じるなら、バスから語学学校まではあと15分という計算になるのだが、本当に到着するのだろうか。
そもそもバスの頻度はどの程度なのか。ちゃんと来るのか。

バス移動というのは日本でも、地元でもイマイチ読みづらいというイメージがあるため、不安は募るばかりだが、予想外にバスはすぐ到着。

しかもイギリス名物2階建てバス!!

観光用途だと思ったのだが、普通に日常の足としても使われていた。
これにはちょっとビックリ。そして感動。

「バスがいつ来るか俺はわかってるんだよ。一年ここに暮らしているからな!」

したり顔で語るシナン。何だかんだで頼りになる男、なのか?

初めて乗るよ!英国ダブルデッカーバス

オックスフォードの二階建てバスの2階

いよいよ人生初の英国公共バス、しかも2階建てバス(英語だと"double-decker bus"ダブルデッカーバスと呼ぶ)に乗車。
運転手がいる前から乗車するようだ。

他の乗客はSUICA,PASMOのようなICカードを使い悠々と乗車している。アブドゥル、シナンも同様。
しかし英国滞在二日目の僕は当然そのようなものは持っていない。20ポンド紙幣とクレジットカードしか持っていない。そもそも何処で降りればよいかもわからない。

だがそこはシナンが行先を運転手に告げ助けてくれた。事実上流通している最高紙幣である20ポンド紙幣しかなく、嫌がられるかと思ったが、バスの運転手は淡々とチケットを発見し、お釣りもちゃんと渡してくれた。
渡英まで地味に心配していた所だったが、こんなにあっさりと行くとは。シナンには感謝しかない。

無事最後の乗客として乗車したのだが、僕が乗るや否や、即ドアが閉まり猛スピードでバスは発進。危うく倒れそうになるが、どうやらこれが英国バススタンダードとのこと。日本だったら新聞投書レベル。

後で知ったのだが、英国の公共バスは定時運行に非常に厳しい。
これは運転手の意識や英国人気質というわけではない。
英国の公共バスは運航会社を入札で決めているようで、定時運行遵守率がよろしくない場合、入札の際に不利になるらしい。そのため経営側から定時運行を守るよう、バスの運転手は強く言われているようである。
今回は初めてバスに乗る僕が乗車時にかなりモタモタしていたため、そのリカバリーのため急発進をしたようだ。恐縮。

揺れるバスの中で英語力の無さに悲嘆にくれる

オックスフォードのシティーセンター近くにあるパブ
英国でもバレンタイン反対!というのを楽しむ文化あることに驚く

シナンに2階へ行くよう促され、激しく揺れる中、階段を上って何とか2階へ移動。
ダブルデッカーバスはバランスが悪いため、上に行けば行くほど揺れが激しい。中々にシンドイ。
最後部座席へ座るよう、提案を受けたためそこに座る。一方アブドゥルは僕を気にすることなく、既に他の席に座りスマホをいじっていた。
ちなみにシナンとアブドゥルは殆ど会話をしない。
ルームメイトならぬホームメイトなのだが仲が良くないのであろうか。

最後部座席はスペースが広く座り心地が良いのだが、窓がなく外の風景が全く見えない。
オックスフォード中心部までの車窓を楽しみにしていただけにガッカリ。
今後、毎日嫌でも見ることになる光景だから、別に今日固執する必要はないっちゃないのだが、折角だから見たいじゃないか。

道中は隣に座るシナンと世間話。
学校はどんな所なのか、何故イギリスに来たのか、母国では何をしていたのか、家族は何人いるのか、故郷はどんな所なのか、云々

シナンはある程度聞き取りやすい英語を喋るとは言え、車内はエンジン音がうるさいのに加え、根本的に僕のリスニング能力が低いため、中々相手の言うことがうまく聞き取れない。
加えてまだ出会って間もない相手と英語で世間話を長々続けられるほど自分の英語力は高くない。
ちょっと込み入った内容を話そうとするとどうしても言葉がつまってしまう。
そのため、殆どの会話が終わってしまい、自己嫌悪に陥る。

そもそもその英語力を改善するために渡英したのである。
初日から自信を無くし、悲嘆にくれても仕方がないことではあるが。

バスは数分置きに停車し、その度に乗客は増える。
電車、トラム等が無いオックスフォードでは、バスが唯一の公共交通機関のため、人種老若男女問わず様々な人がバスに乗り込む。
最終的には立ち乗り乗客が通路や階段を埋め尽くすほど。
特に2階はかなり揺れるのだが、地元のオックスフォードっ子にとっては大した負担ではないようで、手すりもつかまず皆平然とスマホを弄ったり読書をしている。驚異の体幹である。

The City of Dreaming Spires, Oxford中心部へ


15分ほどで目的地に到着。オックスフォード中心部のハブとなるバス停のようで、乗客が全員が一斉に降りる。
トランジットタイムはシナンが事前に言った通りであるが、学校はバス停のすぐ側にある訳ではない。時計は9時。

これ、シナンも遅刻するんじゃないか。

乗客は皆運転手にThank youと告げてから降りており、事務的な淡々とした口調ではあるが、これには関心した。日本でありがとう、と運転手に告げて降りる人がどれほどいるだろうか。

僕は今まで言ったことがなかった。そもそも地元のバスの運転手はは全体的に態度が悪く、威圧的だったので猶更。だからと言って言わない理由にはならないが。

僕も周りに合わせてThank you と小声で告げ、人の流れに乗り、バスを降りる。

そして驚く。

テーマパークではない。観光客向けに整備された場所ではない。

他の町のように寝起きする人がいて、商業活動が行われている、歴とした活きている町である。

道中、全く外の光景が分からず、バスを降りて初めてオックスフォード中心部に触れたため、その衝撃は大きかった。

あまりの荘厳さ、美しさには文字通り息を飲んだ。

オックスフォードの雅名はThe City of Dreaming Spires,というらしい。
"夢見る尖塔の町"という意味である。まさにその名の通り。

小中学生の頃、中世ヨーロッパをモデルにしたスーファミのRPGやSRPGばかりゴリゴリやっており、社会人になってもPCでOblivionとSkyrimをMODモリモリで数年やり続けていただけ自分にとって、昔から憧れていた中世欧州ファンタジーそのものと言える空間に、まさか自分がリアルにいることが何よりも感動的であった。

日本語で「すげー!」と大きな声で思わず叫んじゃったよ。

それくらい、オックスフォードは凄い!
世界中の誰が来ても凄い!と言わざるを得ないと確信している。

感動のあまり心を奪われ、その場に立ちくして周囲をうっとりと眺めていたが、シナンの言葉で現実に戻らされた。

「何やってんだ!遅刻するぞ!早くついて来い!」

やっぱりお前も遅刻ギリギリだったんかい!

もっと早めに家を出れば良かったのではないか、散々俺は言ったではないか!と心の中で呟きながらも、シナンに着いていく他ない状況である。

夢から目覚めさせられ興ざめした状態ながらも、美しい石畳の上を駆け抜けて、語学学校へと向かったのであった。

オックスフォード シティーセンターのハイストリート


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