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終結に向き合う

2020年で嵐が活動休止に入るらしい。
ぼんやりと眺めていた携帯に飛び込んできたLINEニュースに、1人絶句した。なんで、なんで今日なんだろうって考えながら。

約1ヶ月前に、好きなバンドが同じように現体制での活動終了を発表した。ベストアルバムを出したばかりの彼らの全国ツアーは、最後の全国ツアーになってしまった。
そのツアーの、わたしの住む街でのラストライブが今日だった。
なんて日だろう。始まってしまえば終わりがあるのだと、そう叩きつけられてるみたいな日。

そのバンドは、空想委員会、という。


はじめてインストアライブに行ったのが空想委員会だった。「GPS」というアルバムの宣伝に来ていた彼らに会いに行って、インストアライブが終わる頃には気付けばCDを買ってサインの列に並んでいた。3人のやさしい眼差しを、そのときのファンの方々の嬉しそうな表情を今でも鮮明に覚えている。それがきっかけで、わたしはそこの書籍部でバイトを始めた。そのときみたいに、いつか好きなバンドがイベントをしてくれることがあれば今度はもっと近くで関わりたいと思ったから。
( ここで選んだのが書籍部なのは、同じくらい「本屋さんで働きたい」という幼い頃からの夢を叶えたかったから。実際にイベントがある度に部門関係なくスタッフとして駆り出されるようになりました )

はじめて1人でライブに行ったのも、空想委員会だった。
隣にいた男の人が声をかけてくれて、気付けばライブ後も話すほどに親しくなっていた。同じバンドが好き、というたったひとつの共通項は、こんなにも無敵なんだって、そうおもった。

はじめて1人で何かをすることに、あまり抵抗がないほうだとはおもう。けれどやっぱりそれは無ではない。でもそれを行動に移すくらいの大きな力と魅力があった。それがわたしにとって彼らの音楽だった。

そしてわたしにとって、「好きなバンドが( 事実上 )解散する」という出来事の初めても、空想委員会になった。

今までいろんな友達がいろんなバンドの、アイドルの、解散や卒業を嘆いているのを見てきたけれど、いざ自分の番になると何も言えなかった。家に帰る途中に何気なく階段を上りながら見たTwitterで知ったとき、思わずその場に立ち尽くして「なんで、?」と呟いた。なんで、なんで。それから慌ててツアー日程を確認して、ああ、これは。と悟った。
1月27日。国家試験まであと19日。ああ、これは、無理だ。行けない。

バンド好きの友達何人かに「あおい、空想好きだったよね?」と尋ねられる度に「1月27日がラストチャンスかもしれない、無理だ」と返した。その度に何人もに説得された。
「行きなよ」「後悔するよ」「マスクして1番後ろにこっそりいなよ」「帰ったらめっちゃうがいしなよ」
わかる、わかるよ。背中を沢山押してくれてありがとう。勉強時間云々じゃなくて、わたしの懸念事項を払拭してくれてありがとう。でもやっぱり、無理だ。

これだけインフルエンザやら胃腸炎やらが流行しているこの時期に人混みになんて行けなかった。ましてやライブハウス。ましてや解散前ラストチャンス。
買い物にすら極力行かない、遊びになんてもってのほか。普段からみんなマスクで生活していて朝から晩まで講義室にこもっている。そんなふうに生活しているのに、わたしだけそんなことは出来なかった。まだ誰も感染症になってないのは奇跡的だね気合いだね、と先生たちは笑っていたけど、それくらいわたしたちは必死だった。
それなのにライブなんて行けない。死ぬほど行きたいからこそ、同じように多少きつくても行くであろう人混みになんて行けない。

だって後悔したくないから。もし行って風邪を引いたら?わたしは引かずとも誰かに移してしまったら?それで誰かの結果が変わってしまったら?そんなこと考えたくなかった。なにより、そんなふうにして彼らに会いに行ったことを後悔したくなかった。彼らを好きになったことを後悔したくなかった。

今日のギリギリまで悩んだ。当日券の発売時間まで調べた。それでも結局、1日家で勉強していた。ツイートを読んで、曲を聴いて、1人でちょっとだけ泣いた。行きたかったなあ会いたかったなあ、直接ありがとうって言いたかったなあ。

これからどんな困難が立ちはだかっても
僕は僕で続いてく 望んでるのは一つだけ
僕の名前呼んでください

「名前を呼んでくれ」が好きだ。今の彼らみたいで。今の自分みたいで。順風満帆とは言い難い日々だけど、それでもいつか報われるって信じて今は、自分として続いていく。

幸せなことばっかりじゃないと思います。
戦ってる日もある。でもそんな時に、
もうだめだって時に僕たちのライブが
ご褒美になれればと思います。

大学3年の6月、実習に行く前の実技試験を目前に控えていて心も体もボロボロだったあの頃、毎日朝起きて大学に行きたくなかったし、駅からの帰り道に自転車を漕ぎながら気が狂いそうになって泣き叫んだ。そんなときにぎりぎりの状態で行ったライブのMCで話してくれたその言葉が光に思えた。ずっと好きだとおもった。

今日行けなかったことはもう後悔しない。はじまってしまったら、出会ってしまったら終結するのが物事で、人生だから。
それでもわたしは空想委員会というバンドを好きになって良かったと思うし、今日の選択を後悔しない。
出会ってくれて、好きにならせてくれて、本当に本当にありがとう。空想委員会はわたしの青春のひとつでした。  

本当の最後は3月31日。場所は東京。国家試験に合格して夢が叶えば、わたしも東京にいる。
そこに賭けても、いいかな。わたしはまだ、彼らの終結を見届けること、諦めていない。

いつか来るお別れのつらさより、これまでとこれからの喜びのほうが、きっと大きい。

#空想委員会 #コンテンツ会議 #エッセイ #日記

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