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短いおはなし3

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最後の神様。



‪ひとが聞いたらびっくりするくらいのどん底なときに家から40秒のところで女の子がパン屋さんをはじめて、話したら、いろんな好みが似てて、シャイさが似てて、うたや本なんて大丈夫かな、と聞いたときだけ大きな声で、大丈夫です!このひと、最後の神様かな、と思ってただただ必死にやってる。‬

その森の朝を。

その森の朝を。



‪キツネは植物が好きだったけど、都会暮らしだから、庭なんてあるわけない。だから、マイヤイソラの樹の模様の布を買って居間に飾った。今日もうまく眠れなかった。でも、そのおかげで樹に生まれたての朝陽が射すが見れた。キツネは紅茶を淹れてその森の朝をぼんやり眺めた。‬

どんな雨粒も、朝になれば。

どんな雨粒も、朝になれば。



クマはいつか夜明けのベンチで、
大事なひとに言いたいなと思っている。
手のひらをひらいて見せながら。
ほら、暗い雨粒がついたアマリリス。
どんな雨粒も朝になれば、光になってしまう。
それをこれから一緒に見ませんか。

MOUNT ZINEさんにお世話になります。

MOUNT ZINEさんにお世話になります。



‪5月20日土からMOUNT ZINEさんに
お世話になります。
melancolia storytelling。
眠る前になでる本。光に透ける魔法付き。
という本。
写真はすべてトレーシングペーパーに印刷。
その向こうに言葉が見えたり見えなかったり。
素敵なみなさんの本と響き合えたら良いなあ。‬

本がアメリカに。

本がアメリカに。



‪MOUNT ZINEさんのMZ13に
参加させていただきます。
ロスアンゼルスのzine fesにも
本が出品されます。
アメリカのみなさま、
よろしくお願いいたします。‬

からっぽのままで来たかい?

からっぽのままで来たかい?



‪その庭に着いたらねこが言った。
あら、遅かったじゃないか。
あんた、からっぽのままで来たかい。
あんた、ただの紙切れなんだから、
価値なんか探さなくてもいいよ。
間違ってもいいことなんか言わないどくれ。
さ、からっぽで無意味でみじめで誇らしい
風がくすぐるような
あんたのうたを聞かせとくれよ。‬

美しく激しい生と死に鼓舞される。

美しく激しい生と死に鼓舞される。

リスの夫妻にクマが続けた。
庭をつくる者が、優しいと思いますか?
庭を整えるには、毎日弱った花を摘み、
雑草を抜き、土のために長く咲かせない様にします。
庭仕事は死を扱う仕事です。
同時にその何倍もの貪欲な生を扱います。
美しく激しい生と死に私は鼓舞されます。
優しさは特に必要ありません。

いちから世界を。

いちから世界を。

リスの夫妻にクマが言った。
私は、残念ながら、世界や日常や生きるものが
素晴らしい、とは即答できません。
それらは時に非常に残酷です。
だから私は庭でいちから静謐な
私の世界を創っています。
同じ理由で音楽や物語もつくっています。
唯一の逃げ場所をつくっているんです。
できるだけ無秩序に。

彼女も指から緑に染まっていった。

彼女も指から緑に染まっていった。

北駅を出た新緑列車は速度を上げた。
列車はしたたるような新緑の中を突き進んだ。
車内は緑に染まり、
彼女も指から緑に染まっていった。
やがてすべてが緑になったとき、
列車は消えた。
わずかに線路の上にキーンキーンという
列車の残響が残っていた。
残響も緑色だった。

今日は昨日と同じで、僕はずっと悲しいままなの?

今日は昨日と同じで、僕はずっと悲しいままなの?



子ぐまが聞いた。
今日は昨日と同じで、
僕はずっと悲しいままなの?
クマが答えた。
うーん、そうだな、
少なくとも今日は昨日と同じゃないよ。
だって今日は、
アイリスが3つも咲いたんだから。

ヘイデンブックスさんより、本、完売のご連絡と再オーダーをいただきました。

ヘイデンブックスさんより、本、完売のご連絡と再オーダーをいただきました。



ヘイデンブックスさんより、
本、完売のご連絡と再オーダーをいただきました。
ほんとうにありがとうございます。
ヘイデンさんは、元は、著名な華道家のギャラリー。
いつも、なんて気持ちの良い静けさなんだろうと
長居してしまいます。
本やCD、イベントも骨太。
世界に内緒で紹介したい東京の静寂。

旅行から帰ったら新しい花が生けてある。

旅行から帰ったら新しい花が生けてある。

‪クマは休日、クルマを運転して
行きつけの好きな花屋さんに行った。
花束を2つつくってもらった。
ひとつは自分のダイニングテーブル用。
ひとつは旅行に出ている両親用。
旅行から帰ったら新しい花が生けてある
なんていいな、と思って。‬

夜が明けるとなにか新しいことが起きている。

夜が明けるとなにか新しいことが起きている。



‪夜が明けると、いつも、
なにか新しいことが起きている、
とクマは思う。
昨日咲いていなかったアイリスが
こんなに見事に咲いた。
クマはひとりで黙って
今日という日の真新しさに見惚れる。‬