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無計画無職日記(3)

 先月31日を以て仕事を辞めてから早21日が経った。
今のところ世間から、社会から、順調に置き去りにされている、ふりをしている。

 唐突だが、無職にも休日はある。
勤め人の名残か、休日は休日で体内時計はきっちりオフモードになる。
少し気怠い身体を起こして、ぽやんとする。
今日は昼頃に用事があるだけで特に何もない。
気紛れが働いて、ちょうど出先の近くにいる友人に連絡すると「家おいでよ」と誘われ、二つ返事でオーケーと伝える。

 私と同じくらいのタイミングで無職になった彼女は、夕方は居酒屋でバイト、週末はある農園の軒先でハンドメイドアクセを売る、という無職を疑いたくなるようなアクティブさを展開する。
(正直無職を自称するのは止めてもらいたいくらいだ、今度会ったら経歴詐称の仮性無職って言ってやる)
そんな彼女、今日は午前で店を畳み、夕方までフリーだった。
実にタイミングが良い。
食べ損ねた昼食代わりのやきそばパンとポテチを持って、2時間半くらい居座る。
録り溜めてあったバラエティと朝ドラを見て笑ったり、彼女が推していた元ももクロの有安のインスタの写真は誰が撮ってるかだの、ユニバのセーラームーンでタキシード仮面が出てきて以降ずっと笑いが止まらんかっただの、他愛のない話をする。
私はそんな明日にでも忘れるような話をしている彼女を眺めるのが好きだ、言葉に嘘がないし何しろ可愛い。

 例によって彼女にアクセ(ヘアゴム)を作ってもらった。
暗い青の中にかすみ草とホログラムを入れてもらう。
作業スペースで慣れた手つきでひょいひょい作る姿を後ろから見ていた。
目の前には昨日自分で染めたという部分的に脱色した真っ赤な髪。
私より年下で、背が低くて、愛嬌がある。
カレシ(カノジョでもいいけど)なら、というifの妄想をするほど若くはない。
けれど、それが許容されていた時間にたまに戻りたいときもある。
選択肢の1つ1つで未来が決まっていく、なんて思ってもいなかったあの頃に。

 ヘアゴムは即日手渡し、トライアングルのデザインはとても気に入っている。
これもまた彼女の選択肢の1つの結晶だ。
大事にしよう、大事にするよ。

 最後に「退屈に飽きてブログを始めた」と言ったら、「まじかー」みたいな顔をしながらやはり笑っていた。
まさか書かれているとも知らずに、もっともこれを見たときにどう反応するかはとても楽しみである。

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