見出し画像

1992年 SideB-9「悲しみは雪のように/浜田省吾」

浜田省吾作詞・作曲 星勝編曲

・「愛という名のもとに」(フジテレビ系 1992/1/9~3/26)主題歌

 フジテレビ系木曜10時枠1月クールドラマ主題歌。もともと1981年に発売されたシングル曲をこのドラマのために再録音したものだが、自作リメイクには定評のある浜田省吾の中でも出色の出来映えとなり、結果的に170万枚を超えるメガヒットとなった。主題歌以外でも劇中で彼の楽曲が多数使用され、このドラマの世界観自体が浜田省吾の曲によって作られていたといってもいいのだが、終盤一番いいところでかかったのは岡林信康の「友よ」や「私たちの望むものは」だった(このあたりの大胆な既成楽曲の使い方はのちの野島伸司作品の選曲に影響を与えていると思う)。

 「愛という名のもとに」は、脚本に野島伸司、主演に鈴木保奈美と江口洋介ということで当然月9枠での放送が予定されていたはずだが、放送されたのは木曜10時枠だった。当時の大多プロデューサーならこの程度の横車は造作なかったろうと思う(そのあおりを食ったのが「あなただけ見えない」である)。彼はこのドラマを記録ではなく記憶に残るドラマにしたいと語っていたが、結果視聴率的にも成功を収めた。

 大学時代に同じボート部で過ごした男女7人の仲間たちが、卒業後自分の理想と社会との軋轢の中でそれぞれに悩み、その都度友情を確認していく物語。何より印象に残るのは7人全員に対する目線の優しさである。このドラマは今では普通になっている最終回の枠拡大のはしりであるが、安直なハッピーエンドに逃げず、枠拡大した最終回のほとんどを主人公たちの心の癒しに費やす丁寧さは感動的である。鈴木保奈美が心情を吐露する最終回のラストなんて、ほとんど「上海バンスキング」かと思うような苦さを内包している(最終回でチョロが自殺したと覚えている人もいるかもしれないが、チョロが死んだのは全12話中第10話。唐沢寿明演じる健吾が汚職に手を染めた父を告発するのは第11話である)。ひっくり返るような斬新さや時代を変えるような衝撃はないが、作り手たちの主人公たちへの愛情の深さが胸を打つ。

 主演の7人は全員好演でチョロの上司の加藤善博など脇役も充実していたが、キーマンを一人あげるならやはり唐沢寿明だろう。終始全力でドラマを支え、彼の存在が全編にわたりドラマの背骨となった。文字通りの出世作であり、現在に至るまで唐沢が演じる役のイメージは基本的にこの役の延長線上にあるといっていいほど大きな影響を与えている。主人公の貴子は赤名リカとは180度異なる優等生だが、鈴木保奈美はほぼ全編受けの芝居を見事にこなし存在感を示した。間違いなく「東京ラブストーリー」と並ぶ彼女の代表作である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?