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1993年 SideA-7「果てしない夢を/ZYYG, REV, ZARD &WANDS featuring長嶋茂雄」

上杉昇・坂井泉水作詞 出口雅之作曲 明石昌夫編曲

・「劇空間プロ野球93」(日本テレビ系)イメージソング

 そして「ポケベルが流行った時代」とは「ビーイングが流行った時代」でもある。1993年はビーインググループアーティストの売上がピークに達した年だ。オリコンシングルチャートの3月29日付から7月26日付までの18週間、B’z・TUBEをふくめたビーイングのアーティストがオリコンシングルチャートの1位を連続して獲得。中でもこの「果てしない夢を」が2位に初登場した6月21日付ではビーイング勢がベスト5を独占。顔触れを入れ替えながらベスト5独占は3週間続いた。

 この曲はそんな絶頂期のビーイング所属グループが顔をそろえた一種のオールスターシングル。ZYYGはB.B.クイーンズのメンバーでもあった栗林誠一郎が所属した新ユニット、REVは元グラスバレーの出口雅之を中心とした新ユニットである。出口は作曲も手がけているので、この2組を中心に曲作りが行われたのは間違いないだろう。そこに当時のビーイングの2トップだったZARDの坂井泉水とWANDSの上杉昇が作詞とボーカルで参加したということになる。

 しかしこの曲の最大のトピックは、言うまでもなく長嶋茂雄のメインボーカル参加にある。もう忘れている方が多いかもしれないが、ついこの間までプロ野球巨人戦は鉄板の高視聴率コンテンツであった。特に日本テレビにとっての巨人戦は特別なもので、開局2日目の1953年8月29日にはもう、初の巨人戦中継が行われている。以来日本テレビのプロ野球中継のテーマ曲は約40年にわたって黛敏郎作曲の「スポーツ行進曲」であった。プロレス、ボクシングほか、日本テレビのほぼすべてのスポーツ番組においてこの曲が使われた(当時は各局とも自局オリジナルのスポーツテーマを持っていた)。

 それが大きく変わったのは1992年。日テレのプロ野球中継に「劇空間プロ野球」の枠タイトルがつき、各年度ごとにイメージソングが作られ、ハイライト部分やエンディングのBGMなどに使われた。この曲はその2年目にあたる「劇空間プロ野球’93」のイメージソングである。そしてこの1993年は、石もて追われた長嶋茂雄が12年振りに巨人軍に復帰、初仕事となった前年のドラフトで見事松井秀喜を引き当てて新たな黄金時代を築かんと挑んだ巨人軍にとって本当に重要なシーズンだったのである。その大事な大事な年のテーマソングがビーイングに任されたのだ。しかもたった8小節とはいえ、ミスター本人がメインボーカルを歌うのである。そりゃオールスターキャストにもなるだろう。

 当時飛ぶ鳥落とす勢いだったビーイングに主題歌を任せた日本テレビの作戦は間違いではなかったと思うが、ビーイング側ももっと本気で取り組めばよかったのにとは思う。もし歌ったのが「B’z, T-BOLAN, ZARD & WANDS featuring長嶋茂雄」とかだったらもっと注目されただろうし、今も頻繁にリピートされる曲になっただろう。あの頃の空気を感じさせる一曲として。


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