ファゴットと出会った話

楽器を始めたきっかけ、色んなところで話したことあるけど、ここにも書いておく。これがわたしのほぼ全て。


出会いは高校生まで遡る。〇〇ちゃんが受けるから、という理由で受けた私立高校に、〇〇ちゃんは受かった公立高校に落ちたわたしだけが入学した。〇〇ちゃんがいないその私立高校、わたしは本当に友達をゼロからつくりなおすことになり、そんなの生まれてはじめてレベルだったのでめちゃめちゃ不安だった。

部活紹介で気になったなぎなた部の体験入部に行こうとした日、クラスメイトに「吹奏楽部の部活体験に行かない?」と誘われた。
なんかクラスに10人しかいない女子のうち4人で行くらしい。ここで断ったら3年間友達いないかもしれない。なぎなた部のことを諦め、吹奏楽部の見学について行くことにした。

のだめとか読んだことあったし、音楽の授業ではリコーダーとか得意だった。当然芸術の選択授業は音楽にしてる。おまけにわたしはピアノを習っているので楽譜が読める。行っても楽しいだろうな、とは思った。
これでも、中学に入るときは「部活」という概念に所属するなら吹奏楽部にはいりたいかも、なんて思っていたのだ。まあ、地元の中学校には吹奏楽部はなかったけれども。



1日目は、楽器の体験だった。
各部屋に先輩方が待ち構えており、新入生が来ると寄ってたかって楽器を吹かせる。上手だセンスがあると舞い上がらせた新入生を自パートに着陸させるべく先輩方は必死である。

フルートと、オーボエと、クラリネットと、アルトサックスと、トランペットと、トロンボーンを体験させてもらった。いちおう全部音がなる。楽しいな。わたし、トロンボーンの音が好きかもしれない。あと、先輩がかわいい。
その日は、4人で行ったのに、バラけて行動してたから他の子が何吹いてたかなんて全く見てなかった。

2日目は、先輩方による楽器紹介だった。
昨日は来てなかった先輩のいるパートや中学からの内部進学コースで定員に達しており募集していないを含め、全部のパートが発表するらしい。昨日ので全部の楽器だと思ってたらそんなことなかったんだ。

各パート、楽器の特徴とかを話してから振り付きで軽く一曲披露していった。最初はホルン、アルプスの少女ハイジ。ベルアップがかわいいね。つぎはフルート、かわいらしい動きが音色と相まって王道にかわいらしい。トロンボーン、アルゴリズム体操みたいな動き(手を横に〜あら危ない〜のとこ)で、やっぱ昨日も思ったけどかっこいいや。コントラバス、2台でルパン三世。は?かっこよすぎる。え、え、わたしコントラバスやりたいかも〜!パーカッション、あ!知ってる!マリンバにシロフォンにグロッケン!すてきだね。

そうこうしてるうちに、最後だったか最後から2番目だったか忘れたけど、「つぎはオーボエ、ファゴットです」って聞こえてきた。昨日はファゴットは体験になかったかもしれないな、と思ってるとオーボエを持った端正なお兄様とファゴットを抱えたクールかつ清楚なお姉様が出てきた。そして、ひとことのお話もせずに、演奏を開始した。知らない曲だった。ふたりとも大暴れで、歌舞伎の大見得か?ってほどに上半身を振り回して、脚むっちゃ開いて歩きながら、え、なにこれ、意味わかんないけどすごくかっこいい、わたしも狂うんだったらこうなりたい、

そっから先はあんまり覚えてない。

わたし、あの楽器やりたいです!!!
って、希望楽器のところにでかでかとファゴットって書いて、入部届より先に提出した。
楽器の希望は第3まで出せて、パートの埋まり具合を考慮してパーリー会議(パートリーダーの会議)で最終決まるらしい。ふぁごっとになれるといいなぁ。
まだまだ楽器体験は今週いっぱいやってるから、体験また来てきめようかなぁ…って悩んでるクラスメイトを待ってる間にさっきのお姉様がやって来た。どうやらファゴットに希望が出されたことを聞きつけたらしい。早すぎ。

「ファゴット第1希望なんて神の子か!?希望はぜったい通すわよ、わたし元部長やから!」
3年生の元部長さまが権限を行使していい内容なのかはわからないが、よろしくお願いしますを言う。
爆速であだ名はちーちゃんに決まり、「明日もおいでね!!!!!」と両手をぶんぶんされた。


3日目は、またまた楽器体験。
音楽室に入るなりファゴットのお姉様にファゴットの場所に案内され、早速色々教えてもらった。たのしい。小一時間ほど吹いたら他の楽器もやってみない?と言われたのでコントラバスを弾かせてもらうことに。なぜだか、お姉様もついてくる。
「コントラバス楽しいよ〜」という眼鏡の先輩に対し「でもちーちゃんはファゴットやから!」と返すお姉様(すき)。続いてのパーカッションでも、ホルンでも、全部のパートで「このこはファゴットのちーちゃん!🤗」と紹介してくださり、なんだかとってもこそばゆ嬉しい。まだ1時間しか吹いたことないけど。まだ入部届出してないけど。まだ確定じゃないけど。

その日の帰りにちゃんと入部届を出して、次の日にパーリー会議で承諾された旨教えてもらって、晴れてここにファゴット吹きのちーちゃんが誕生した。



わたしがファゴットを始めたのも続けてるのも自然の摂理ぐらい当たり前に思えるけど、ありもしないたらればをたまに思う。
もしあのとき公立高校に受かってたら(その高校にはファゴットはない)
なぎなた部に見学に行ってたら
はたまた、中学からの内部進学コースにすでにファゴット吹きがいたら
あのパート紹介の日に3年生のお姉様がいなかったら

そのひとつだけで、ファゴットには出会えてなかったかもしれないなんてただただ不思議、そして出会えてよかったと心の底から思う。

お姉様からいただいたメッセージカードの言葉は今でもたまに読み返す。「ちーちゃんは、ファゴット好きですか?私は大好き!!」
先輩へ 始めてからずっと、始めたときよりずっとずっと、わたしもファゴットのことがだいすきです。


以上、わたしがファゴットを始めたきっかけでした。めちゃめちゃ暑い文章になってしまった。「高校のときの体験入部で、パート紹介のときに先輩が踊り暴れながら吹いてるの見て憧れたからです🫶」の真相です。そのまんまやろ?


今思い返しても全然わけがわからないな。


ついこの間、ピアノのレッスンでドビュッシーの小曲集を買うことになった。目次に弾き出しが書かれており、なんとなく眺めてたらあの曲紹介の曲があってびっくりした。ドビュッシーだったのね!
小さな黒人、とても素敵な曲なので聞いてみてください。


おわり

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