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本当のようだ、日本の評判

我が国に観光に来ている外国人が異口同音に
言うことは、キレイ、オイシイ、アンゼン,
シンセツで、金太郎飴のように同じだ。
別に疑う訳ではないが、自らの旅の選択が
正解だったと思いたいという
心理作用かと冷ややかに聞いていたものだ。
 
この程、在米40年の大学時代の仲間が、
ひと月にも及ぶ母国での長期滞在をして、
いよいよ帰国という段になって、空港まで
見送りに行った時のことだった。
 
元々日本人だし、アイロニカルな物言いを
する奴だから、この度の日本滞在の感想を
訊いたら、さぞや意表を突く言葉が
飛び出すだろうと期待した。
 
ところが返事は意外なことに、日本はどこもキレイだ。
特にトイレは清潔で必ずウオッシュレットが付いている。
九州から東北まで、うまいものを訪ねて歩き回ったが、
どこに行っても奇をてらうことなく、「旨さ」という
狭い領域を真摯に追究している。
夜中に酔っ払って歩いていても襲われる気配は
みじんもない。
なによりも人々の物腰が優しくて親切なんだなあ。
地方は自然がよく保たれていて心地良く、
どこの温泉もうまく景観を採り入れて、
野趣の醍醐味を味わえる工夫が随所にある。
 
特に東京の交通はまるで集積回路のように正確で効率がよく、
生活の必要や希望を満たすようにシステム化されていると
ベタ褒めなのだ。
 
だって、アメリカはもっと進んでいてキレイだし
凄いんだろうと訊くと手をヒラヒラさせて
「違うよ」の仕草をした。
 
それにしても73歳にもなって、こんな長期の食欲の旅が
できるとは、すごいスタミナだなあとからかうと、
食欲だけじゃないぜとニヤリとするので、
淡泊な我が身を思い、
アメリカン肉食獣の空恐ろしさを見た気がした。

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