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反出生主義という本音

仏教は生きるということは、四苦八苦が当たり前だぞ!と、
はなから説いている。
その苦しみと苦しみのわずかな隙間で生きる楽しみが
見つかったらそれでいいんじゃないの・・・ということらしい。
 
2500年も前の叡智、同じ頃、古代ギリシャでも
人生は苦しいことばかりだから、生れてこない方が幸せだという
極端な言説があったようだ。

肉体を持ってしまったがために、衣食住の必要、愛情の必要、
病や死の不安、我欲との格闘などなど、
確かに傍目から見れば滑稽なほど、苦悩と闘っている。
 
南アフリカの哲学者の本に「生れてこなかったほうが良かった」
というのがあると新聞で知った。
これを反出生主義と呼ぶそうだ。
生きることはそれ自体価値があるというのが一般的な常識で、
そのつもりで生きてきた。
この本を知って、身も蓋もないと反発心が湧いたが、
捨て置くこともできず困った。
統計によると年間で自殺者が世界で80万人、日本では2万人もいる
という事実の重さである。
もしやこの言説が迷える人の背を押すことにならないか。

実は誰しも頭の片隅に張り付いている思いだが、
言葉にすることさえ憚っている。
それをはっきりと言語化したところが
この本の趣意であり罪だとしたい。
真実を追究するのが哲学であり科学であるが、
生きること自体を全否定してしまっては、
原初の人類から現代に至るまでの
人間の営みや思考や努力を
無価値で無意味なことにしてしまう。

人生を苦か楽かでみるのは単純過ぎると憤ってみたが、
すっきりせず、胸がザワザワしている。
本音というものは罪になる。
高々100年の生涯、不可知論者のままでいいのじゃないか。

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