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UX DAYS TOKYO 2019 レポートその2 -音声ユーザーインターフェースデザイン-

2019.4.5に開催されたUX DAYS TOKYO 2019のカンファレンスに参加してきました。

UX DAYSは海外の一流スピーカーのセッションやワークショップを体験できる、国内最大級のUXのカンファレンスです。※要約や一部自分の主観的な表現が入っています。

音声ユーザーインターフェースデザイン: 旧来の問題に対する新しいソリューション

-Amazon Echo LookのプリンシパルデザイナーのCheryl Platz(シェリル・プラッツ)さんのセッション-

私のVUX経験

私はAlexaと一緒に架空のスイカ割りをする「エアースイカ割り」というAlexaスキルをハッカソン仲間と作った事がある。Alexaが架空の座標を設定し、スイカまで「右」「左」と人を誘導する音声対話ゲームだ。

VUXのユースケースにおいて声の操作が優位になるのは視界が覆われている時か、運転中や料理中などの手が塞がれている時。スイカ割りはもともと視界を覆うゲームだから声の操作に優位性がある。自然言語での操作性の設計が難しいVUXにおいて、「右」「左」だけのコミュニケーションは簡潔でいい。エンタメ要素に振って、小さなしゃべる機械に翻弄される人間の画も面白いなという、ちょっとひねくれたアイデアであった。Amazonさんの公式動画の1コーナーで紹介頂いたり、Mashup Awardsという開発コンテストでNTTドコモさんよりGoodおしゃべり賞というテーマ賞を頂いたりした。

VUXについて1つのユースケースを提示できたかな?という満足感はありつつも、自分としてはVUXのユースケースと自然言語の操作性という課題と真正面から向き合わなかった心残りはあった。

シェリルさんのセッションにおいてもその2つの課題について深く言及されていた。

VUXのユースケースという課題

VUXの新規性は音声でのin/out。VUXでできることはスマホで全てできてしまう。じゃあVUXに優位性はないの?と思ってしまったが、スマートスピーカーの使用タスクランキングを見るとそうでもなさそう。キッチンタイマーやアラーム、音楽の再生、巻き戻し、停止。情報の質問などがよく利用されている模様。

VUXに優位性のあるユースケースを探すコツは「顧客のストーリーを聴くこと」とのこと。例えば、手が塞がれているのはどんな時?スマホがロックされてて困る時は?目が見えなくて困るのはどんな時?などなど。

Echo Lookでは、お出かけ前にクローゼットでコーディネートをする時間など、スマートフォンをクローゼットから離れた場所に置く瞬間に着目した。

スマートフォンよりVUXが優位となったその瞬間にどこまでペインが隠れているか?その瞬間の体験をいかに魅力的なものに設計できるか?を深めることができればでビジネスに変換できそうだ。

自然言語の操作性という課題

まず、デザイナーもインテントやプロンプトなど自然言語処理のしくみを理解した上で設計すること。その上で、「正しい答えより確率が高い答え」を返すという点がとてもおもしろかった。

例えば「カリブの海賊をかけて」という命令が来たとき。それは「映画を観たいのか」「音楽を聴きたいのか?」「映画館の上映情報が知りたいのか?」どの選択肢である確率が高いのか?を振り分けるのである。音声入力されたのが、画面がないデバイスであれば、映画を視聴することは出来ないので確率が下がる。映画館の上映情報にカリブの海賊が無ければこれも確率は下がる。音楽を聴きたい確率が高まるため、音楽を再生しよう。という意思決定ができる。

自然言語処理の一番難しい点は会話が成立しなかった時の対応。人間は音声で返答するものに対して人間に近い感情を感じる。確かに、私の親がAlexaと会話しているところを観察していても、ちぐはぐな返答で会話が成立しないときにいらっとしている。逆にAlexaが「ごめんなさい、わかりませんでした。」と返答する時はしょうがないな、と笑っている。成功発話以上に失敗発話の設計は重要なのだ。

課題を解決するためにテクノロジーはある

シェリルさんのセッションで一番心に響いたのは、「私達はイノベーションと聴くとワクワクするが、ユーザーは日常を生きている。すでにある課題を解決してほしいと願っているのだ。」というもの。

お茶の間に最新技術をインストールするのが目的であってはいけない。最新技術でお茶の間の課題を解決する体験を作りたいと強く思った。

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