時鳥エシック

感想:2016年VOCALOID10選(全文)


実は私、2016年末に「2016年VOCALOID10選」なるものを公開させていただいているんですけれども (http://www.nicovideo.jp/mylist/57902212) 、見ていただければわかるんですがそちらの方にマイリストコメントという形でそれぞれの曲に感想を述べさせてもらってるんですね。

しかしこのマイリストコメント、文字数制限があるんですよ。体感で240字くらいかな?とても全ての文を収めきれない。そのため一度メモ帳に書いてみて、それを文字数の上限に合わせて感想を再構成をする、というしちめんどくさい方法をとっていました。


ですがせっかく書いたならそっちも載せたいじゃないですか。全部見てもらいたいじゃないですか。そういうわけで、以下に続くのは10選コメントの全文です。

こちらは下書きという扱いでマイリストコメントに書く際に推敲というかブラッシュアップをしているので、文がところどころおかしいかもしれないです(一応もろもろ確認・修正はしましたが・・・)。何か変なところがあればぜひ指摘お願い致します。

それではどうぞ!




時鳥エシック

上半期からの続投で10選入り。2016年最初の衝撃といえばゴーストルールで、投稿直後からの人気爆発ぶりに私自身も同じく衝撃だったわけですが、曲としてのインパクトでいうなら、個人的にはこの曲が最初の衝撃でしたね。

曲に対して「ここ一番での爆発力」のような評価はよく使われるものですが、こちらは最初から最後までずっっっとボーカルのメロディがド好み。勘弁してよ。


一番のポイントは強く心を揺さぶる歌と歌詞です。私は歌詞をあまり気にしないで聴くのでちゃんとした解釈などはできませんが、『好きの次は嫌いになってさ それで腐ってやれ』『夜明けが来ても意味はないから』など、歌詞の多くの部分に感銘を受けました。歌詞全体を通してのメッセージは抜きにして、一つひとつの歌詞単体だけで惹かれてしまうようなパワーのこもった言葉だと思います。

もう一度言いますが、私は普段歌詞をそれほど意識して聴きません。それでもこの曲の歌詞に対して感動させられてしまったのです。もうね、完敗とはこの事かと。”歌”の持つ力を嫌というほど私に知らしめてくれた、そんな曲でした。

歌詞解釈をよくするという方は、ぜひこの曲の歌詞に対する解釈を私に教えていただければと思います(丸投げ


そしてこの作品、イラストも素晴らしいんです。荒れに荒れ果てた部屋の真ん中で、満面の笑みを見せるミクさん。

この絵を見ながら曲を聴くと、なんていうかこう・・・歌詞がグッと深みを増すんですよね。後ろ向きな面と前向きな面、双方を覗かせているという共通点がこの”深み”の正体なのではないかと考えています。

イラストを描いた13さん、これを曲のイラストに起用しためひかりさんは天才ですね。こちらのイラストはピアプロからも見ることができるので、是非に。(ヘッダー画像にも使わせていただきました、URLは一番下にあります)




ロックンロールハイプのテーマ

去年「アグリラ」「アフタードリームにて。」で(個人的に)猛威を振るった沢田凛さんですが、今年も傑作を引っ提げてきました。

こちら土山時雨さんとの共作となっておりますが、土山さんのブッとんだギターと沢田さん独特のメロディセンスが絶妙なバランス感覚を保っています。

次々と変わっていく曲調に目移り(耳移り?)しそうになりますが、ラスサビでしっかりと落としてくるニクいやつ。『明日を迎えたならば』のとこのコード、そしてその後の『そんな』が本当にエモい。エモいって言葉あんまり使いたくないんだけど本当にエモい。ここの一連の流れが大好きなのです。


ところで私は2016年上半期ボカロ10選を過去に公開したのですが(まだ見ていないという方はそちらもぜひ!)、そちらに3月投稿のこの曲は選出されていません。

なんだ入れ忘れたのかこいつと言われそうですがそうではなく、この曲の持つ魅力に気付いたのが下半期になってからだったのです。初聴の時とか「あーこれは挑戦しすぎかなー」とか偉そうなこと言ってた。たしか。

いやいや迂闊でした・・・まさかこんなインパクトの塊みたいな曲にスルメ要素があるとは誰に予想出来ましょうか!ふと気が向いてもう一度聴いてみた時の衝撃といったらありませんでした。気が向いてよかった・・・。




メルヘンチック遊園地

こちらも上半期から引き続き。この曲、1コーラス目が終わった後はイントロ→3拍子→間奏→Cメロ→イントロ→ラスサビ→アウトロという流れなのでAメロBメロは1番でしか登場しないのですが、だから流しで聴いていいかというとそんなことは微塵もありません。最初から隙のないキャッチーなメロディが容赦なく襲ってきます。


今からとても失礼な発言ととられかねないことを言いますが、この曲は盛り上がりの最高到達点がサビではないんですよ。

もちろんサビはサビとして機能してきちんと役割を果たしているのですが、そこでテンションは打ち止めになりません。

まあ結局上半期のコメントと同じことを言うことになるんですけど、何が言いたいのかというと、Cメロ終わりからボルテージを上げに上げて、そこからイントロに帰ってくるところが最高に最高なんです!ここでこうくるのか!みたいな!もう止まれねえぜ!みたいな!もう俺はここに骨を埋める!みたいな!!(違う)


これはさすがに主観の入りすぎた意見なので何の参考にもならない気がしますが、とにかく「曲の魅力は歌の外にもまだまだあるぜ!」という熱量を感じました。




絶対的関係性推進論

上半期からの続投です。そしてこちら、2016年ボカロ曲キャッチー部門最優秀賞の作品となります(今考えた)。

イントロでまず「あぁ、演奏陣がつよい曲だな」という印象を抱くのですが、それは半分間違いです。確かに後ろの音はとんでもなくハイクオリティかつ高密度ですが、それほどに主張の強いこの音たちをもってしてもこの歌の前では引き立て役となってしまうのです。

とにかく一度聴いただけで耳に焼き付いて離れなくなります、私は初めて聴いた後、曲を脳内再生しようとするとどうあがいてもこの曲しか浮かばなくなるという事件が数日間にわたって続きました。


息もつかせぬリズム変化、2サビでのまさかの変拍子(サビで全部の拍子が変わるってどういうことやねん)、コール&レスポンス、そしてボーカル・・・といったように数え上げればキリのない目玉要素たちが視聴者の休憩を許してくれません。3回聴いただけで「もう耳タコだよ!」となるくらい。これこそまさに音の暴力です。


ところでこちらの曲、上半期10選以外でも、もったいないリスト(過去に公開したリスト)でコメント付きで紹介させていただいたので、今回でこの曲に対する感想は3回目となります。

いやー長い付き合いですね。正直「お前何回その話するんだよ」って部分もあるような気がします。そういう意味では私の2016年を象徴するような曲だと言えるでしょう!




気まぐれメルシィ

こいつは本当に問題作です。俺の10選の基準を、有り様を変えやがった。

10選を決める時にずっと考えていたのは「PVという理由でこいつを10選入りさせてもいいのだろうか」ということです。

私の打ち出す10選とは、曲のみの評価に基づく10選なのか、それとも映像など音以外の要素を加味しての10選なのか?こんなことを考えたのは前代未聞でした・・・。


もちろん曲単体で見ても文句無しの出来栄えです。私は八王子Pの曲でTRAP×TRAPが一番好きでそちらは実際に過去の10選に入っており、この曲もそれと同じくらいに好きだと言える曲には違いありません。

いつものどっしりとしたテクノとは一味違う、P*Lightさんを感じさせるような鮮やかなキャッチーさがドストライクでした(思えばTRAP×TRAPもそんな感じだった)。

え?P*Lightさんの名前を出した意味は特にありませんよ?ただ単純に似たテイストの音として思い浮かんだのがこの方というだけですよHAHAHA


しかしながら、これを10選に選出する決め手となったのはPVによるものが大きいと言わざるをえません。

だって見てよこのミクさん、かわいすぎかよ。『振り回さないで』ってこっちが振り回されっぱなしだよ!1番Aメロで小首を傾げながらこっち見ないでくれ惚れちゃうから!1サビでちっちゃくサイドステップしてるのほんとにかわいすぎて鼻血出そう。2番Aメロの瞳どアップの時のこの純粋な目!くりくりしてか、かわいい・・・。

この動画の魅力をどうにかして伝えたいんですけど何か方法はありませんかね・・・




コンシーテッド・ボーイ

ここから下半期投稿になります。氏の曲は15年時点で初めて聴き、今後に注目のPだと思っていたのですが、期待通りすんごいのを出してくれました。

前作のメインキャラクターに引き続き、剥き出しの感情を勢いそのままに叩きつけてくる歌詞に惚れました。曲調の面では綺麗めなテイストのメインキャラクターと比べて、荒々しいロックなこちらの方が好みなので選出させていただきました。


ポイントは曲の転換地点となる「君が望んでる正解はこうかな?『僕って才能ないからさ』」の部分です。

この歌詞から伝わる、自分を軽く見る相手を見返してやりたい、ぎゃふんと言わせたいという敵愾心がゾクゾクきます。めらめらと炎の燃える音が聞こえてくるようです。

そしてここの感情の燻りや展開をうまく後半へと引き継いでく演奏陣ですよ。ドラムほんと好き。この曲は間奏が2つ、そして後半の間奏は2回しあるということで歌以外の割合が少々大きめですが、間延びしているなんてことは全くないし、むしろこれだけ強烈なメッセージ性のある歌詞に対する間奏ならこれくらいが適当なのでは?というくらいの説得力があります。


曲全体から窺える真正面から斜に構えるとでもいうような皮肉、その中から漏れ出る身を焦がさんとする対抗心。それらを攻撃的な音楽に乗せてアツく歌いあげるこの曲はどこまでも独善的で、だからこそ突き動かされるものがありますね!『信じられるのは、僕だけのはずだろう』?




ポップガール

ここまで連続して演奏に重きを置いたコメントをしてきて、「さあ次の曲はどの楽器に触れるんだ?」と思ってるみなさん。この曲は一旦演奏を意識せずに聴いてください。歌を、聴いてください。

演奏に注目してこの曲を聴き始めた私はさいしょ、イントロを聴いた時に「これは好みではないかな?」とさえ思いました。本当に愚かです。こんなにのびのびとして美しい旋律が紡がれているというのに!

私がそれに気付いたのはラスサビまで聴いてからです。最後の『何千回何万回』『おーいぇーー!』の部分のフェイクが素晴らしいんだ本当に。

曲の終わりにようやくその魅力に気付き、もう1回聴いてみると、その歌声に呼応するかのように演奏が色づき始めます。サビの裏拍のライドシンバルの小気味よさが、間奏の綺麗なピアノと交代で入ってくるギターが歌をしっかり支えてくれます。


これだけ広いボカロの世界、プロレベルの音質だったり音圧だったり演奏だったり、そのクオリティは今でも絶えず上昇し続けています。

しかしその上質なサウンドだけを良いものとし、音に囚われてしまうと”歌”の方がおろそかになってしまいがちです。耳に心地良い音より遥かに心に刺さる歌があるのだと、そんなことを思いました。



ウェイストランド・イン・メトロポリス

世界観良し、歌詞良し、歌良し、演奏良しって全部良いやないかい!!そんな曲です。

まずサビが強すぎる。前後半に分かれた特徴的なドラムにキャッチーな歌メロ、これは反則。前半のスネア連打めっちゃかっこいい。後半の裏拍めっちゃノれる。

Aメロはハネたリズムが耳に心地良いしBメロはリフの数を少なくしたリズムを意識させる構成で、それらがすべて違和感なく接続されています。つなぎのフィルもハイセンス(2番直前のフィルが一番好き)。

後ろで支えるピアノやシンセは歌詞や世界観で表現される壮大さを後押ししており、1番2番が繰り返しの構成とは思えないほどの充足感が得られます。

そしてそこで終わることはなく、壮大さ、疾走感を増してラスサビでトドメを刺してきます。ラスサビ最後の畳み掛け、そしてラストの余韻は圧巻。殺す気かよ。


歌詞によって構築された世界の持つ壮大さと押し寄せる切なさ、情感をごく自然に共存させ、ロックとして昇華させた手腕は見事と言うほかありません。

私はオシャレ系なロックはあまり好きでないことが多いのですが、これは綺麗ながらも強いパワーを持った曲といえます、大好きです。


ちなみにラストの『進んでく世界の中で』の歌詞を『進め不正解の中で』と聴き間違え、「なんて中二なんだ、かっこいい・・・」となったのはここだけの話。よい子は真似しないでね。




シャルル

はい、こちら2016年ドラム部門最優秀賞です!!とにかくリズム感やテンポで魅せる曲調が最高!こういうフィルの多い曲は大好物です。しかしフィルが多くて魅力的だとは言いましたが、フレーズもよく練ってあってどの場面でも出てくる感想が「ドラムかっけえ・・・」なのです!

1番Aメロ後半の次第にハイハットをオープンにしていくところや、Cメロ前でハイハットの数が増えていくところなど、とにかくドラムに関してとても丁寧な作りになっています。他の楽器も同じくらい丁寧なのかもだけど、そのへんはわっかんね!

2番Aメロではキメの多用やシンバルの変更で1番とかなり色を変えてくれるところもとても私好みです。

大きくリズムを展開して動きながらもちょっとした箇所の変化もしっかりつけていく。このあたりが他の曲と比べて突出した魅力ですね。大味なリズム変化で翻弄する曲は数あれど、ここまで細かく丹念に変化をつけていく曲を書くのはバルーンさんくらいではないでしょうか。


個人的に好きなところは・・・うーん、甲乙つけがたいんですけど、サビとイントロがほとんど同じフレーズなのにハイハットの位置を変えてるところ、あと2番サビ前の一連のフィルですね。

まだドラムの話しかしてないんですけど、既に文字数がすごいことになってるのでこれで終わり!




遊星まっしらけ

まさか・・・まさかまさか、この曲が投稿される日がくるとは!しかもこんな年の瀬に!

ニコレポで「遊星まっしらけ」の文字列を見た時は軽くパニックを起こしました。それくらいアルバム『遊星まっしらけ』の中で、いやピノキオPの中でダントツに好きな曲です。


「ピノキオPといえばアタックの強いスネア、そして連打」と言ったらどれくらいの共感が得られるでしょうか。

わからないという方は「からっぽのまにまに」や「胸いっぱいのダメを」などを視聴いただければわかるかもしれません。

とにかく私の中ではピノキオPといえば叩くには腕が4本必要なほどの手数、そして攻撃力の高いドラムというイメージがあります。

もちろん引き出しの多い方なのでそうでない曲もたくさんありますが、この曲はそういった曲調の最高峰に君臨する曲です。


同氏のこういった曲調のものはそのアタックの強さから、好みが分かれるような、ある種の聴きにくさがありますが、この曲ではドラムの攻撃力が控えめというか、全体的に耳にスッと入る音をしており、ハードルが低いのではないかと思います。

またバランスの良い音量バランスになってることも相まってか、AメロのバッキングやBメロでのリードメロディなど、これまでのロック曲よりギターサウンドが強調されているように聴こえます。


この曲で何より好きなのは、なんといってもBメロの静かな立ち上がりから間奏でサビに繋げるところですね。こんなのを思いついたピノキオPは天才。あと1サビが終わった後はすぐギターソロに入るので聴けなかったイントロが、最後に戻ってくるところね。この緩急が素晴らしい。


これが投稿されたのはとにかく驚きでしたが、CDとはまた少し違った遊星まっしらけも聴けて(これはリマスタリングされたものになっています)、とても嬉しいです。気になった方はアルバム『遊星まっしらけ』を手にとってみてはいかが?


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以上でございます。楽しんでいただけましたか?どの曲も傑作揃いですので、この曲まだ聴いてないやっていうのがあればぜひ聴いていただきたいですね。

そしておそらく文の雰囲気から伝わってくれてるとは思いますが、2016年のボカロシーン、並びにボカロ10選もこれ以上ないというくらい楽しませてもらいました。

マイリストからお気に入りを10曲選ぶだけでもドキドキワクワクの連続なので、みなさんも一度は、なんならコメントつきでこういった企画に挑戦してみてはいかがでしょうか。




#vocanote #感想 #VOCALOID #ボカロ10選

画像:http://piapro.jp/t/sSVB

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