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シリーズ「私の愛するラーメン」 <番外編>デートにオススメのラーメン

⑴ラーメン二郎三田本店
 二郎に行こうとデートに誘うのはかなりの勇気がいる。焼肉よりもはるかにハードルが高い。行列はむさ苦しい男たちがほとんどだ。ここで一緒に並んで、仲良く二郎を完食だなんて奇跡的な体験。もちろん好みの強制はいけない。ひょっとして興味はあるかと確認してみよう。ちなみに総帥(ジロリアンは創業者をこう呼ぶ)はとても女性に優しい。カップルとわかると、横に並んで座れるよう調整してくれる。注文するときは、麺少なめ麺半分と言っておいた方が無難だ。ちなみに僕はいつも「ヤサイ少なめアブラカラメニンニク」とコールする。

 本店は恐ろしく凶暴な二郎を出す。特に総帥自ら作った一杯は格別だ。絶対に無事ではすまない。私はいつも、すぐ近くにある母校・慶應三田キャンパスの北館ホールのトイレで吐き、大理石の長椅子に横になって苦しむ。ある時、司法試験の問題を作っている高名な法学部の教授が、長椅子で苦しんでいる私を見つけて大丈夫ですか、と声をかけてくれた。まさか二郎のせいだとも言えず、返答に困ったのを覚えている。あんなに辛い思いをしたのに、数日後にはもう食べたくて仕方がなくなる。醤油、脂、ニンニク、胡椒は悪魔の調味料。二郎には異常な中毒性があるのだ。

 総帥は楽しい話の達人。四半世紀通っているが、店内で総帥がケラケラ笑いながら話していると、いつも聴き入ってしまう。昔、娘に二郎の秘密の調味料を教えて欲しいと言われ、ドングリの粉だよとデタラメを答えたらしい。数日後には、ネットにドングリの粉が二郎の旨さの秘訣と出ていたと大笑いしながら話していた。総帥は本当に魅力的な人だ。

 もっと慎重に、ラーメンを好きになってもらいたいと考えてラーメンデートをするなら横浜の吉村家がおすすめ。ここがダメなら、もうラーメンはあきらめていい。それくらいガツンと旨い。

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⑵横浜中華街の萬和樓(バンワロウ)
 ここの親父は、とにかく口うるさい。水餃子に醤油をつけようとすると、すぐに怒られる。そのまま食べて。それ、醤油入れすぎだよ。ちなみに卓上には醤油差しがある。まるで罠のようだ。名物の台湾麻醤麺を食べるときも、胡麻のスープは全部飲んで。残したらもったいないから。

 親父さんが言っていることはいちいち正しい。異様なまでに自分の店で出す料理に誇りと愛着がある。食べることにあまり興味がないのなら、この店にいることは苦痛でしかないはずだ。でも、ふたりとも食に興味があれば、ここは天国になる。

 ここの台湾料理は本当に素晴らしいと思う。大根もちしじみの醤油づけ牛肉麺は絶対に頼んで欲しい。


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⑶桜木町の三陽 

 ここの名物親父は下ネタ攻撃が凄まじい。メニューも、楊貴妃も腰を抜かすチンチンラーメンやおっぱいサワーなど、注文するだけで恥ずかしい。突き出しは揚げたニンニクのバクダン。ニンニクの臭いを気にする人はいきなりアウトだろう。親父さんは入店するとまず「生と餃子とねぎ鶏ね」と強引に注文を押し付けてくる。東銀座のナイルレストラン「ムルギーランチね」と言われる感じだ。これも嫌がる人はいるだろう。私は言われるままだ。むしろ餃子を2枚に追加する。実際、おすすめ通りに食べると美味しい。親父さんは、とても人情味溢れるいい人だ。

 親父さんの下ネタ攻撃や注文の強要など気にすることなく、笑い飛ばしながら餃子を楽しめる人とでなければここに来ることはできない。ここで一緒に楽しくデートできる人は本当に素敵な人だ。サッポロ黒ラベルの瓶ビールとここの餃子の組み合わせは最高。シメはチンチンラーメンを二人分に分けて出してもらおう(お子様チンチン麺2つ)。これ以上、なにを望むものがあるだろう。どんな高級店へ行くよりも極上の時間がここにはある



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諸岡浩太郎

福島原発事故から「ヒロシマと沖縄」の重みを感じています。ヴァンナチュール(自然派ワイン)と美味しい食べものが好き。慶應義塾大学法学部卒。代々木ゼミナール世界史講師。一般の社会人や高校生向けにnoteで世界史の講義を始めました。初心者の方に楽しんで読んでもらえるよう書いていきます。
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