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シリーズ「私の愛するラーメン」 ①心が震えたラーメン5選


 子どもの頃からラーメンが好きだった。自分の好みの味を求めて, いままでどれほどの労力を費やしてきたことだろう。見知らぬ街で道に迷い, 日が暮れていったことも何度もあった。学生時代は三田の二郎東池袋の大勝軒の行列で, 気が遠くなるほど長い時間を過ごした。本当に美味しいラーメンは, 一口食べただけで鳥肌が立つ。心が深く揺さぶられる。夢中で食べるうちに, 無くなっていくのが惜しくなり, 気づけばもう食べ終えている。人生でも最高に幸せな瞬間だ。

 このブログでは, シリーズ「私の愛するラーメン」と題して, 私が長年食べ歩いてきたラーメンの中で, 是非一度は食べてほしい究極の一杯を厳選して紹介していきたい。初回は「心が震えたラーメン5選」。西野カナの歌の歌詞のようだが, 心が震えるラーメンは確実にこの世に存在する。でも, 滅多に出会うことはない。その店に行けば必ず食べられるというものでもない。店も生き物で, 経営者や作り手が変わると味が変わってしまうからだ。本当に美味しいラーメンは, 作り手の魂を感じる。ラーメンを媒介として, 食べながら作り手の人格と向き合っている感覚になる。そんな貴重な経験をしたお店を紹介したい。


⑴仙川のしば田

 究極のラーメンはこれだ。食べるたびにその確信は強くなる。どこまでも研ぎ澄まされ、洗練されている。鴨ベースの醤油スープは, 鋭さと深みが違う。細麺の食感も天才的だ。どこか浅草の老舗・並木藪蕎麦の鴨南蛮そばを連想させるクラシックな味わい。食べている瞬間、作り手の魂と対話している感覚になる。

 カウンターに座り, 店主がラーメンを丁寧に作る様子を眺めるところから贅沢な時間が始まる。一杯分ずつ雪平鍋にスープを入れ, 麺を茹でる。ひとつひとつの所作が美しい。食べ終えた後, 私は店主の目を見て「美味しかったです」と言う。店主もこちらの目を見て「ありがとうございます」と返事をしてくれる。店主と同じ時代を過ごすことができて幸運だった, と巡り合わせに感謝したくなるほど美味しい。


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