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適応型ビジネスの生態系を創る9つの指針。そして残酷なパラドックスの話

大企業における新規事業開発をいかに進めるか?という問題にアチコチで遭遇しています。そんな状況を打破するためのヒントが沢山ある「BCG 未来をつくる戦略思考: 勝つための50のアイデア」50の評論が掲載されています。これを1章単位で整理してtipsにまとめていくシリーズの3回目です。

BCG 未来をつくる戦略思考: 勝つための50のアイデア

適応型ビジネス・エコシステムの特性、構築の指針、維持の指針

適応型ビジネス・エコシステムは、多様なプレーヤーから構成され、プレーヤーたちは相互の事業目標達成のために、ゆるく組織化されたスタイルで交流する。こうしたエコシステムは、以下のようなものも含めてさまざまな形態をとる。

・多様な組織能力を集め、中心的プレーヤーが全体をうまく調和させる生産エコシステム(iPod/iTunesエコシステム等)
・協業的な生産コミュニティ(ウィキペディア、リナックス等)
・イノベーション・ネットワーク(P&Gの拡大エコシステム等)
・市場プラットフォーム(イーベイ、グーグルアドセンス、iPhoneAppStore等)

構築の指針、維持の指針

変化に対応する際、企業単独での旧来型アプローチでは難しい。そこで大切なのが、適応型のエコシステムの構築という話し。ではなぜエコシステムが必要なのか?

・商品が非常に複雑化している場合や多様さに対する需要が高い場合、それに対応するには、きわめて多様な能力や資産が求められる。
・先行き不透明な時期(新規市場参入、新規事業立ち上げのとき等)には、幅広い選択肢の準備やリスク共有が欠かせない。
・技術や顧客需要が急激に変化する状況では、多様なイノベーター集団と並行的に実験を進める必要がある。

さらに、適応型エコシステムのマネジメントは、単一企業の経営とは異なる。
エコシステムは複雑性が高い。そして複雑性をもたらす要因は
・様々な組織・個人が集まっている。
・指示系統が曖昧
・時間の経過とともに、自然発生的にルールが決まっていく
ではエコシステムを成功に導く要因は何か?9つの指針を示す。

9つの指針

【指針1】低コストで頻繁なやりとりを可能にする共通基準を確立

例えば標準サイズの貨物コンテナをイメージするとよい。

【指針2】参加者間の信頼を育む

エコシステム参加者間の相互信頼。
「ありがとうコイン」などを発行し参加者間の信頼と会社の動きを可視化することも有効かもしれない。

【指針3】参入障壁を最小限に抑え、参加者に十分な報酬を保証

現在及び将来の参加者に説得力あるバリュー・プロポジション(価値提案)を提示が大事。これができることではじめて、エコシステムは成立する。
参加に伴うコストとメリットの双方をマネジメントする。

【指針4】エコシステム外への価値の移転を制限

参加者が他の参加者の知見にアクセスでき活用できなければならない。
しかし競合企業に情報がもれるのを防ぐことも必要。
知財の管理をマネジメントすることが重要になってくる。
またはエコシステム外の企業が真似しにくい価値を保有している。(物理的・金銭的に真似が極めて難しい工場や物流システムなど)

【指針5】冗長性を確保

特定のメンバーが抜けたりニーズや役割が変化しても、エコシステムに不具合が生じないように機能を重複させる。

【指針6】多様性

変化の時代に対して絶えずイノベーションを起こすには多様な参加者と多様な能力を備える必要がある。
しかし事業を始め、競争による圧力への対応や効率性を追求していくと、いずれ多様性が低下する傾向が強いが、絶えず新たな参加者を探し多様性を保つようにする。

【指針7】柔軟性

エコシステムが安定すると、変化が起きにくい組織になってしまう。硬直的になってしまう。すなわちイノベーションが起きにくくなってしまう。
多様性にも通じる事が多いが、それ以外にも長期的な独占契約を避けたりすることも大事。

【指針8】緊密なフィードバック・ループを確保

エコシステムの適応力を維持するためには、内外の変化を速やかに察知する。
そして、すぐに対応できるようにしなければならない。

【指針9】仕組みを確立すべき場面、コントロールを緩くする場面を見極める

全体がうまく回るための仕組みは確立すべきだが、全てを仕組みやルールで縛ることはやめる。

適応型エコシステム導入に向けて、自社への問い

・エコシステム・アプローチが、自社事業にどんな恩恵をもたらし得るか
・エコシステムにどの企業(誰)を参加させたいか、どうすれば相手を参加したいという気にさせられるか
・エコシステムを構築するために、どんなプラットフォームが必要か
・エコシステムのどの要素を標準化したりコントロールしたりすべきか
・エコシステムのどの要素に柔軟性をもたせるべきか。どの要素で、創造性やイノベーションを促進するオープンな環境を用意すべきか
・エコシステムから持続的に価値を得るため、何を譲り、何をコントロールするか
・エコシステムの適応力を確保し維持するために、どんな仕組みが必要か

残酷なパラドックス

生物界でもビジネス界でも、競争には残酷なパラドクスがついて回る。

ある環境下では企業に勝利をもたらす効率性と専門性が、環境が変化した途端に適応を阻む要因になる。という残酷なパラドックス。

変化が激しく要求が厳しい環境では
・硬直性を廃しつつ専門性を実現する戦略を見出すこと。
・多様な専門能力を柔軟に結びつけること。
これが持続可能な競争優位性を実現する。

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「BCG 未来をつくる戦略思考: 勝つための50のアイデア」のtipsを整理するnoteシリーズの目次

勝つための50のアイデアTipsシリーズまとめ|BCGアイデアTips 

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