プロジェクトデザイナーの思考___4

企画書の書き方

「企画書」とは何かを行うときや作るときに、自分の考えた内容を、実行に移すための具体的な計画を記載した書類のことを言います。1つのプロジェクトを行うには、たくさん準備をしなければなりません。

身近な例を挙げて「飲み会」を開くとしましょう。そのためには参加者、開催場所、開催時間、予算、会費、所要時間などを決めなければなりません。これらの具体的な内容を決めることを「企画」と言い、それを書面にしたものが「企画書」となります。

5つの心構え

・基本は自分の作りたいものの形が相手に伝わるように書ければよい
・大事なのは自分の言いたいことが、「ちゃんと相手に伝わること」
企画書を通して「ちゃんと相手に伝わること」
・企画書が自分の手元を離れても相手に伝わること
言葉による補足は使えない。(だって、その場に自分は居ない可能性の方が高いから。)

※言葉を変えて同じこと言ってます。

企画書を書くときに、注意することを1つあげるとすれば、つまり企画書の原理原則とは何か?

まぁ心構えと同じですが、企画書を書くときに注意することは1つ。

「実現したいモノのイメージが、相手に伝わるように書く」

ここでの相手とは?
企画を承認する人。(偉い人、役員、マネージャー、など)
相手を想定して、相手をイメージして企画書を書くというのが基本中の基本です。

なぜなら企画は通らなければ、企画は実現はしないからです。


そして「企画書の書き方」の本noteは「実現したいモノのイメージが、相手に伝わるように書く」を、最低限成立させるための手法・テクニックの話しでしかありません。


それでは本題「企画書の書き方」について最低限必要な構成要素について

企画書に必要なもの=企画書の構成要素

企画書には明確にしなければならない項目があります。
「伝える」ための基本項目だからです。

ではそれらの項目について、なぜ必要なのか?を1つずつ説明します。
加えて注意して考えるポイントも抑えます。

企画の構成要素

<表紙>

<目次>
1章 概要
1-1.背景
1-2.ターゲット
1-3.目的
1-4.目標数値
1-5.企画のアイデア(課題解決のアイデア)

2章 作るものの要素
2-1.UX視点(使う人の視点、この企画書の対象者の視点)
2-2.主要画面イメージ
2-3.製作物一覧(見積なども)

表紙:タイトル、サブタイトル

タイトルが明快だと企画のイメージが最初から共有しやすくなります。
タイトルとサブタイトルで企画全体を簡潔に定義しましょう。
企画書を読む人のイメージを助けましょう。

「イメージを助ける」これは企画を承認する人の思考の負荷を下げる効果もあります。

何度も言いますが、企画書の原理原則は「実現したいモノのイメージが、相手に伝わるように書く」です。

そしてタイトルはなるべく明確に、わかりやすくしましょう。悩んだら「言いたいことをそのまま書きましょう」

写真などのイメージを使うのも良い手です。

1章 概要

1-1.背景(課題)

課題を発見したからこそ、その課題を解決するために企画を書くことができます。

または「こういうのやりたい!」という想い中心なら、その企画を実行することで現在の世界とどう変わるのか?を企画書に書きましょう。

そして周辺や裏側も可能なかぎり把握して簡潔に説明しましょう。

ポイントは
・その課題がそもそも正しいのか?
・創りたい世界はワクワクするか、楽しいか?どう世界が変わるのか?
そこが間違っていたら、その後の企画自体が間違ってしまう。
ワクワクが共感されなかったら、企画はそもそも通らない。

各種データの収集と分析も大切です。
それにより企画を決裁する人が「判断」しやすくなります。

ここで「判断」と書いているのは、決裁する人が各種のデータをみて、そもそも課題の設定があっているのか?を見るためです。

最終的に企画を「承認」するための材料です。

また誰かの指示で企画を行う場合でも、確認の意図も含めて、課題の把握は必要です。部長が言ったから。では駄目です。

1-2.ターゲット層

どのユーザーをターゲットにしているか。子供・大人、男性・女性、小学生・中学生・高校生?ビジネスマン?

ターゲット層、つまりはより具体的なユーザーのイメージを具体的に想定する事は、企画を作る助けになります。

ターゲット層の注意点その1

ターゲット層を具体的に設定する以上に注力すべき点は、
・外からの新規のユーザーか?
・既存のユーザーか?
・別カテゴリーのユーザーか?
既存のユーザーをターゲットにする企画は特に注意が必要。
ひとつ間違えると、既存のサービスも含めてサービスが壊れる可能性もあります。

ターゲット層の注意点その2

ここ大事。

お客様の視点 ≠ 企画者の視点

視点を混同しすぎると独りよがりになってしまいます。(注意)

1-3.企画の目的

具体的な目的がなにか、数行程度で説明できると良い。
・収益の増大
・ロイヤリティの向上
・新しい価値創造
・新規加入者/ユーザーリピート率/ユニークログイン/いずれかの向上

1-4.目標数値

具体的な目標はなにか、目的とセットで説明すること。

収益の向上なら、どの程度向上するのか?何%上がるのか?
何時までにいくつ達成するのかの具体的数字を。

例えば
・新規契約数は今月は1,000人
・新規会員登録フォームの離脱率を10月末日までに2%改善

また目標数値はKGIとKPIで分けての整理も重要
「1-3.企画の目的」はKGIの領域、「1-4.目標数値」はそれを分解したKPIの領域と捉えると良いです。

1-5.企画のアイデア(課題解決のアイデア)

課題の発見と目的が明確になったら、その課題の解決方法、すなわちアイデアを企画書に書きます。

大切なポイントは

課題の解決方法について具体的に相手に伝えられるレベルまでイメージできているか?
対象となっているお客様(ユーザー)をイメージしているか?

どんなアイデアなのか、数行程度で説明すること。
数行に収まらないものは複雑なサービスの可能性があり、ターゲットとするユーザー層には受けにくい。 場合によっては言葉でなくてイメージでもよい。

この企画を通して何をしたいのか、またはお客様(ユーザー)にどんな行動を期待するのか?を書くこと。

※「1-2.ターゲット層」ではターゲット層という言葉を使っていますが、本章では「お客様」または「ユーザー」という言葉を使うほうが有効です。なぜなら自分も決裁者もプロジェクトを推進するメンバーも、その他大勢の関係者も、より生々しいユーザーをイメージしやすくなるからです。細かい話ですが、結構大事。

そして全体を俯瞰してみる

1-1.背景(課題)
1-2.ターゲット層
1-3.企画の目的
1-4.目標数値
1-5.企画のアイデア(課題解決のアイデア)

この流れを何度も確認します。

2章 作るものの要素

2-1.UX視点

ユーザー体験の設計です。例えば

WEBサービスの場合
・サイト全体の視点でお客様を、どう誘導するかを考える。
・どの経路で各コンテンツに誘導するかを考える。
・最初に何を見せるのかを考える。

2-2.主要画面イメージ、プロダクトイメージ

作る企画によって様々ですが、例えば以下のものを書く。

WEBサービスなら画面。ワイヤーフレームなど。
プロダクトなら、プロダクトイメージ。
住宅や店舗なら、模型。

デザイナーとのコミュニケーションに使うので、とても大事。
コミュニケーションのための章という視点をもちましょう。

2-3.製作物一覧

自分が把握しておくためにも、用意しておきましょう。
書いておけば、指摘も受けやすいです。
完璧にする必要はありません。

デザイナーやエンジニアと詳細は詰めていきましょう。

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企画の9つのチェックポイント

□ 企画のポジショニングを意識したか?
□ ユーザーのレベルを意識したか?
□ テーマを考えたか?
□ コスト意識はあるか?
□ スケジュールを考慮したか?
□ マイルストーンを意識したか?
□ リスクマネージメントを考えたか?
□ ゴールは共有したか?
□ プレゼンテーションの準備をしたか?

□ 企画のポジショニングを意識したか?

ポジショニングを設定することの意味は?

例えばWEBサービスの場合。
ネット社会全体、または市場にあるサービスの中でのポジショニングを明確にする。その市場の中から、お客様をどうナビゲートするかを考える。

□ ユーザーのレベルを意識したか?

便利な機能が必ずしも良いとは限りません。
時にはサービスを壊すこともあります。

上級者の人にとって便利な機能でも、初心者には難しい。
このような場合の最悪のケース
→初心者に敬遠されてしまい、新規のお客様が増えない。
 →上級者がその機能によって、100%残留するということは
  まずないので、結果人は減っていく。

よくある話です。
常に視野を広くもって企画を進めなければなりません。

□ テーマを考えたか?

・キャッチコピー
・ビジュアルイメージ
・テーマカラー

テーマは企画の理解にとても大きな影響を与える。
上手く行けば、企画者の意図以上に、企画を想像してくれる可能性も生まれます。

□コスト意識はあるか?

コストとは?
その企画のためのコストを意識する。
かけたコストが、それ以上になって帰ってくるか?
それを意識。企画のためのコストを意識しましょう。

コストとは?例えば
人件費:XX万円/月
(プロジェクト関係者の人件費)
サーバーなどの運用費:XX万円/サーバーX台

□ スケジュールを考慮したか?

ざっくりでもスケジュールを決めておくとは大切です。
提案のレベルでいいです。
スケジュールが無い。だと前に進みません。
企画段階でのスケジュールは例えばリリース予定日(希望日)を決めてから逆算する。現時点から積み上げ式で計算する。など、やり方はいろいろありますが、大枠でいいのでスケジュールを企画書の中で提案しましょう。

より具体的になることで、企画が判断しやすくなります。

□ マイルストーンを意識したか?

マイルストーンとは中間目標地点のこと。
マイルストーンという概念を意識して取り入れましょう。

プロジェクトでは計画通りに行かないことは珍しくありません。
(むしろ計画通りに行かないことの方が圧倒的に多い。)

その場合は計画を変更することになりますが、始終計画を変更していたのでは空中分解してしまします。

マイルストーンはその計画の見直しの契機になるものです。

よってプロジェクト計画を作るときには、マイルストーンをどのタイミングでとるか?が重要に成ってきます。

多くの場合はスケジュール上厳守したいスケジュールをマイルストーンに設定します。顧客との共同作業が発生する場合には顧客の作業の節目をマイルストーンにする場合が多いです。

いずれにしてもスケジュール管理を円滑に進めるためには重要な概念であることは間違いありません。

□ リスクマネージメントを考えたか?

想定されるリスクを把握しているか?

例えば、良い戦略には必ずリスクがある。
リスクがない戦略は、戦略ではない。

尖った企画にも失敗というリスクが伴う。

ときには自分では何もできないリスクもある。
野外イベントでの天気など。

リスクをどこまで企画に織り込むか?
という話。

□ ゴールは共有したか?

ゴールを共有することで方向性が明確になります。

私は「旗を立てる」とよくいいます。

大きい企画をつくるとき、フェーズを分けて設定する事がよくありますが、その時も向かっている最終ゴールがメンバーで共有され明確ならブレることはありません。

途中で最終ゴールが違うかも!となったときも、変更するときの判断として有効です。間違いは間違い。と認識できる。

いずれにしても「ゴールの共有」は曖昧ではいけません。

□ プレゼンテーションの準備をしたか?

プレゼンテーションにおいて重要なのは、あなたが伝えたい企画の情報量ではありません。企画を判断する相手に伝達される情報量です。

ゆえに全部伝えるのではなく、何を伝えるか?
何を覚えてほしいか?
何分で伝えるのか?、何分時間をもらったのか?

エレベーターピッチっと言う言葉もある。
30秒で話す!と言うことです。

最後に

企画書を書くのは難しい。
唯一のコツは、企画書の原理原則とは何か?

「実現したいモノのイメージが、相手に伝わるように書く」

ただそれだけ。

これは難しい。
しかし最低限の型はあります。
慣れていない人はまず「型」から。

それが上達するための最初の一歩です。


こちらも是非。

企画者の7つの習慣

企画者の思考法マガジン

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Photo by José Alejandro Cuffia on Unsplash

アレとソレを組合せてみたらコノ課題を解決できるソリューションができるよね?と言うパズルをやるような思考回路です。サポートして頂いた費用は、プロジェクト関連の書籍購入やセミナー参加の資金にします。