ショスタコーヴィチの交響曲第7番~レニングラード解放80周年によせて

 一昨日、2024年1月27日は、レニングラードがドイツ軍の包囲から解放されてから80周年の記念日だった。
 ショスタコーヴィチの交響曲第7番は、レニングラード包囲戦のなか作曲されたことで知られている。このため一昨日は、解放80周年を記念してサンクトペテルブルクなどでこの曲の演奏会が開かれた。

 この曲は大好きなので、いろいろ書きたいことはあるのだが、とりあえずYoutubeにある音源をいくつか紹介したい。特に最初の3つは貴重。


ショスタコーヴィチ自作自演

 戦時中の映像らしい。ピアノで「交響曲第7番」の一部を弾いている。最初に第2楽章の集結部を弾いてから勝利を願うメッセージを一言述べ、そのあと第1楽章のクライマックスを弾いている。もちろんプロパガンダ映像だが、本人が弾いているのはやはり貴重。最新のリマスターで。

エリアスベルク指揮

 包囲下のレニングラードでこの曲を初演したエリアスベルクの指揮で、初演当時レニングラード放送管弦楽団で演奏したメンバーを加えたレニングラード交響楽団による、1964年の演奏録音。意外にも激せず、むしろ淡々とした演奏は、地獄を見た者にとって過剰な演出は不要ということか、とすら思える(なお、このレニングラード初演の関係者にとっての地獄は、包囲からの解放では終わらなかったことが、ひのまどか著『戦火のシンフォニー: レニングラード封鎖345日目の真実』には書かれている。つらい)。

フェドセーエフ指揮

 レニングラード生まれで、少年時代に包囲を生き延びたフェドセーエフが、当時レニングラードを包囲した側だったフィンランドの放送交響楽団に客演した演奏。
 私は彼の指揮するチューリヒ歌劇場管弦楽団でこの曲を聴いたことがあるが、第1楽章のあまりの速さに度肝を抜かれた。この演奏も同じで、それにはやはり何か理由があるのだと思う。彼が手兵チャイコフスキー管弦楽団(旧モスクワ放送交響楽団)と録音したCDもかつては発売されていた。

トスカニーニ指揮

 連合軍として共にドイツと闘っていたアメリカでこの曲はセンセーションを呼び、アメリカ初演をクーせヴィツキー、ストコフスキーと争った末に、トスカニーニがその権利を得た。彼はファシズムに反対して祖国イタリアを糾弾しアメリカの戦意発揚にも協力していた(ベニー・グッドマンと共演して「ラプソディ・イン・ブルー」まで演奏している)のであるから、最もふさわしいといえたかもしれない。ここでも激しい情熱を持ってこの曲を指揮している。この録音はCDで発売されている。

2024年1月27日、サンクトペテルブルク

 この曲は現代のロシアでは愛国音楽に位置付けられてしまっており、一昨年以来サンクトペテルブルクのオーケストラは何かというと演奏しているので、ルーティンになっているのではないかという気もするが、今回はさすがに気合いの入った演奏のように思える。ニコライ・アレクセーエフ指揮、サンクトペテルブルク・フィル+サンクトペテルブルク交響楽団メンバー(おそらくバンダ)。

その他

 この他、シベリアはヤクーツクのシンフォニア・アルティカ、ロシア南部スタヴロポリ地方のサフォーノフ記念交響楽団がこの曲を演奏しているのが、Youtubeにアップロードされている。
 さらに、モスクワでは全ロシアユース管弦楽団がヴェルディのレクイエムを、サンクトペテルブルク交響楽団は戦時の歌曲特集を上演するなど、この曲以外によってレニングラード解放80周年を記念する演奏会も行われているようで、興味深い。

 シンフォニア・アルティカはの映像はこちら。メンバーには少数民族らしき人も多い。


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