「お題」オルゴール
帰ってドアを開けたら、父のでもない私のでもない、いかにも仕事のできる女の人って感じの黒いパンプスを見つけてしまって、私はしばしその場に立ち尽くす。「香織さん」が家に来てるのだという事実が私の胸の内に黒く硬質な重しとなってのしかかる。このまま回れ右をして、玄関から逃げ出してしまいたいけど、それをしてしまうと、父も香織さんも私の行動を不審に思い訝しがってしまうだろう。そもそも、ここは私の家で、なんで私がこそこそ逃げ出さないといけないというのだろうか。馬鹿馬鹿しい。私はその場でしば