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【自動車工学】カルノーサイクルの呪縛

 非常に良いホームページがあります。代表的なサイクルの図と式が載っています。図があるので、分かりやすいです。今回の図(PV線図)は、このホームページから頂いています。

 最も基本になる熱サイクルはカルノーサイクルです。これはサディ・カルノーが蒸気機関の燃費(石炭消費量)を検討するために考えたもので、これを基本にその後熱力学が生まれます。
 カルノーサイクルのPV線図、熱効率は下記となり、熱効率は最高温度と最低温度だけで決まります。最高温度T1は最高蒸気温度(石炭の燃焼温度ではない)で、最低温度T2は大気温度です。

 次にオットーサイクルは下記で、熱効率は温度でいうと、最高温度、最低温度ではなく、筒内容積最大時V2のときの温度差、筒内容積最小時V1のときの温度差で決まります。変換すると圧縮比と比熱比だけの式となります。

 さてここにカルノーの定理がありまして
1.熱機関の最大効率は作業物質にはよらず、2つの温度のみで決定される
   これは、カルノーサイクルの効率の式のことですね。
2.不可逆機関の効率は可逆機関の効率よりも小さい
   この可逆機関の代表がカルノーサイクルです。
 
 この二つから、どんなサイクルもカルノーサイクルの効率を越えられないという迷信、呪縛が生まれ、いまだに信じられています。

 でもカルノーサイクルの効率は超えられます。カルノーサイクルで、T2=0にするのは不可能です。0℃ではなく-273.15℃、つまり絶対零度ですから。

 一方オットーサイクルでは、膨張行程でどんどん膨張させれば、筒内温度を大気温度まで下げることも可能です。つまりTB-TC=0とでき、そのときの効率は1となります。カルノーサイクルを優に超えます。

 普通のエンジンでは圧縮比=膨張比で、そこまで圧縮比は上げられないので、膨張シリンダを別に設けることが考えられます。昔の蒸気機関では、3段膨張(膨張シリンダが3個)まで実用化されました。調べてみると、イギリスのエンジン研究所のリカルドが、膨張シリンダ付きエンジンの研究をしていたようです。

参考文献
 サディ・カルノー『カルノー・熱機関の研究
 鈴木孝『名作・迷作エンジン図鑑

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