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アンチテーゼ~おまけの夜なんかいらない


 ”深夜のファミレストークの閃き”という、僕にはピント来ないキャッチフレーズの番組がyoutubeにあるのですが、毎回、楽しみにしてみております。

 それが”おまけの夜”という番組

 映像ディレクターの柿沼キヨシ氏が配信するこの番組は、実はそれなりに歴史があるのだそうだが、そのあたりは割愛してどのような番組なのかを軽く説明すると。

 映画やドラマ、音楽といったサブカルチャー或いは大衆向けエンターテイメントについてあれこれ語る・・・だけの番組であるのだが、つまりやっていることが面白いのかどうかは別として、そこで語られる内容が僕にとってはとてもマッチしたということで、もしかしたら万人が面白いと思える番組ではないのかもしれない。

 とは言え番組登録者2万6千を超え、ライブ配信での同時視聴者数は、300を越えた会もあったと記憶している(間違っていたらごめんなさい)

 僕がこの番組にはまったのは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を女友達に薦められて、下心込で見たのがきっかけだった。

 すでに『アベンジャーズ/インフィニティーウォー』がDVDレンタルを開始していた時期であり、MCUのフェーズ3※1も大詰めというところだったのだが、僕はガーディアンズで使われた音楽にすっかりやられ、女友達にしつこいくらいに使われている音楽のことを解説したものだったが、大体そういうことは、女性に嫌われるのである。

 80年代を代表する? ケビン・ベーコン※2という役者が出演した『フットルース』のことを15以上も離れた彼女に力説したところで、尊敬されるわけでもなく、面白がられるわけでもなく、そんなわけで、彼女とはいろいろあって喧嘩をするわけだが・・・

 それはさておき、僕はどっぷりMCU沼、あるいは柿沼にはまり、”おまけの夜”を片っ端から視聴し、”アメコミ芸人”柳生玄十郎氏※3のファンになるわけだが、MCUに限らず、ホラー映画やジブリ作品、時には”江戸むらさき”や”ごはんですよ”で有名な桃屋などを取り上げ、多角的な視点で浅すぎず、深すぎず、広すぎず、狭すぎずの絶妙なチョイスが、僕にはとても楽しかった。

 しかしながら、僕としては忸怩たる思いもある。

 2012年3月よりライブ配信番組『めけラヂオ』を毎週日曜夜9時30分から現在に至るまで、実に8年間、相方のザンボとともに、ある意味似たような番組をUSTREAM、Fresh!、ツイキャスと渡り歩きながらやってきたわけだけれども、冷静に見て、”おまけの夜”のほうが面白い。

 番組を作る際に僕らが目指したものは”深夜の居酒屋トークの暴言”であったことを、相方のザンボもすっかり忘れているのかもしれないが、ファミレスでだべることが嫌いだった僕は、お酒の飲める場所で、好きな映画や音楽について、あれこれ仲間と話をするのが楽しかったので、それを番組にしたらどうかという発想で”めけラヂオ”は始まったのである。

 だから”深夜のファミレスの閃き”がピントこないというのは、ファミレス嫌いな僕からすると、そんな場所からどれだけの閃きが生まれるのか、まるでわからなかったからなのである。

 まぁ、それはこの祭、面白さの軸とは関係ないというか、むしろ同じような立ち位置であるだけに、パーソナリティの違い、そして配信を始めたばかりでわくわくしているテンションの差の二点は大きく、そして多くの視聴者を獲得している点は、もはや嫉妬でしかないわけです。

 ここからが本題

 ”おまけの夜”にしても、”めけラヂオ”にしても、ある一つの共通点があるのだけれども、それは映画や音楽の話を、まじめにあれこれ好きに言い合う場が少なくなったからこそ存在意義があるという点である。

 もちろんSNS、ネット社会においてそれらのコンテンツは常に話題を提供しているわけなのだけれども、では、そこで自由な発言が許されているかといえば、決してそんなことはないのだと思う。

 僕の大好きな静岡で活動しているインディーズアーチスト”山作戰”が以前、こんなことを言っていた。

”世の中の事情通が、世の中を面白くなくしている”

 この”世の中の事情通”とは”業界やジャンルの知識者”ということになり、”面白くなくしている”というのは、つまらなくしているのではなく、つまり、批判的な、或いは懐疑的な存在としてではなく、放っておけば、面白くも拙い議論が起きるものを、いきなり”結論ありき”の問題定義をしてきたり、かせや敷居を設けることで、”知っている人も知らない人も好きにすればいい”はずであったものが、知らない人は黙っていろという圧力、それも圧倒的な知識人の個人的な力ではなく、協調圧力、虎の威を借る狐のごとく、拙さや偏りや達観を許さないのである。

 これは今のSNSにおける”自動浄化装置”ともえいる機能であり、なかなかにそれを止めることは難しい。

 一度、作品に”つまらない”とラベルを貼られたり、それを面白いと思う奴はどうかしているというレッテルを貼られたりすると、なかなかにそれを覆すことは難しくなる。

 再評価をする機会も簡単には与えてもらえない”ような気が”してしまうほどに、みんな乱暴に何かを神とあがめ、何かを哂う。

 僕の経験では、居酒屋トークでは正論よりも酔っ払った奴が強いのである。これがファミレストークとは、少し違うところであるのかもしれないが、好きに酔わせて、好きに吐かせればいいのだと、僕は思うのです。

 いや、もちろん汚い意味ではなく、想いをですよ。

 ”おまけの夜”が人気があるこの時代というのは、きっとどこか息苦しくて、みんな言いたいことが言えなくて、集まってくるんじゃないですかね。

 その空気は今後もどんどん酸素濃度が下がっていくような気がするのは僕だけでしょうか?

 まぁ、めけラヂオは相変わらず毒ばかり吐いていますから、TLも下ネタを含めてまぁ、荒れてますよ。

 でも居酒屋トークですから、それも許されるんですよ。

 下ネタを言わない奴を、僕は信じませんからね。

 それではおまけの夜の僕の好きな回をご紹介しますね。

 僕はお笑い芸人の”映画チンピラ”じゃがもんど斉藤氏※4を含めた柿沼氏、柳生氏の三人の回が基本お気に入りで、感想よりも予習の回が好きです。マニアックさと、そこに必死についていく感じはこの番組の真骨頂。
 桃屋の回は下手したら一番好きかも。
 そしてエンドゲーム2回目という一人語りの回も、同じ配信者として?何か感じるものがありましたので、この4本をお勧めします。


 ということで、”おまけの夜”が楽しいのは、世の中どこか窮屈じゃないのかなぁというお話でした。


※1 マーベル・シネマティック・ユニバースは、2008年公開の『アイアンマン』から始まるマーベルコミックスのヒーロー映画を現在までに第23作品(最新作は『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』)発表している。『アベンジャーズ/インフィニティーウォー』は2018年公開作品で、ヒーローたちが完敗する衝撃的なラストが話題に。

※2 『フットルース』1984年公開 主演のケビン・ベーコンは一躍スターになるが、その後あまりヒット作に恵まれず、70年代のジョン・トラボルタ、80年代のケビン・ベーコンと一発屋の象徴的として揶揄される。
 その後『トレマーズ』のヒット、『激流』でのゴールデングローブ賞 助演男優賞ノミネートなど活躍している。

※3 柳生玄十郎 アメコミトークライブ「しゃべんじゃーず」を主催するアメコミ芸人。2019年7月30日発売の雑誌『anan』のマーベル映画特集に記事が載るなど、アメコミ愛、マーベル愛の深さがアメコミファンを超えて、多くの人の支持を受けている。

※4 ジャガモンド斉藤 ジャガモンドは、日本のお笑いコンビ。所属はケイダッシュステージ。『読んだら必ず観たくなる映画レビュー』映画通というよりは映画を楽しむことをモットーとしているようにみうけられる。

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