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月が見えないのは曇り空のせいじゃない

 中秋の名月、皆さんの地域では見ることができました?

 東京は予報では曇りでどうかなぁと思ったのですけれど、宵の頃にはいい感じにお月様を拝むことができました。

 僕は月に愛されているって自覚があります。

 うぬぼれではなく、見上げれはそこにいつも月があるからなんです。

 僕の名前は太陽と書いてふとしと読むんですけどね
 これは父がほぼ勝手につけた名前で、母はそのことについては納得はしていなかったようなのですが、それでも僕の名前は愛してくれていたと思います。

 名前の意味を知って、それになるべく恥じない生き方をしようと思ったのは事実ですし、今日に至るまで、どうにかやってこれたのもこの名前と言う呪詛のお陰だと思っています。

 母は月です。

 戒名に”慈しみ”という字と”月”と言う字を頂きました(いただいたという表現が適切であるかどうか不勉強で申し訳ない)。

 別にその時から月に縁ができたわけではないですが、なんとなくそうかもという思いがまたしても名前という呪詛によって、おぼろではなく”そういうものだ”という当たり前に変わったのです。

 いや、嘘です。

 そこまで激的に変わりはしません。実のところそう思うようになったのはここ1年くらいですかね。何か思うところがあって、ふと夜空を見上げるとそこには月があって、いろんな表情を見せてくれます。

 他の誰にも見えなくても、空を見上げれば雲の合間から、ほんの少し顔を覗かせてくれるんですよ。

 僕の友達の女性がある悩みを抱えていて、それは想い人にメールを送ってもなかなか返事が返ってこないし、時系列がバラバラで会話が成り立たない、意思疎通がとれないって話でした。

 その時に僕が彼女に読んだ歌を昨日月を見ていて、ふと思い出しました。

 月詠みて
 恋しき人に
 文出さば
 指折り数えて
 届く想いよ

 即興だったのですが、これは文字通りに彼女はメールではなく、手紙を書くことにしたんですけどね、どうやらそれが読まれずに溜まっているらしいって。最初はちゃんと読んでくれたのにと、そんな愚痴を漏らしたものだから、面白がって、こんな歌を詠みました。

 そんな二人が今どうなっているは知りませんが、僕にも似たようなことが起きたもので、想いを伝えるべく書いた手紙が読まれずに・・・つまり既読にならないメッセージとかそういうどこにでもあるようなエピソードではあるのですけれど、ちょっと遊び心をくすぐられた僕は、この歌をもう少し”よきもの”にしようと思ったのです。

 月詠みて
 恋しき人に
 文出せば
 指折り数えて
 届く想いよ

 ”出さば”、”出せば”はあまり意識せずに選択したのですが、じっくり読んでみるとこの歌は

月詠みて=月夜見て=月よ見て と3つの意味を重ねられる
文出せば=踏み出せば と2つの意味を重ねられる

 であるならば、まず”文出せば”に変える、そして月詠みは暦を詠む、月日を数えるという意味にもなるので”指折り数えて”はなくてもいいかもしれないし、”踏み出せば”の意味を持たせるのであれば、ここには想いを前にだすという意味の句があったほうがいいと考えました。

 指に触れるは
 夢かうつつか

 踏み出して指に触れられるのは夢になるのか現実になるのかというは悪くないと思いつつも、ちょっと飛躍しすぎているように感じる。

 届かぬことを
 密かに願う

 一度文を出したら、途中で戻せないのでいっそ届かないで欲しいと願う。
また踏み出しても下がってくれれば今の距離は同じだからそれでもいいと願う。

うーん、これは消極的過ぎるか。

指折り数えて
募る想いよ

まとまりはいいけど、ありふれている。

夢見し蝶か
うつつおぼろげ

或いは

夢見し蝶の
うつつもおぼろ

 想いを明かしたからにはその返事がくるまで 夢とも現実ともつかない ふわふわした時間を過ごすことになる という意味なのだけれども悪くはないが、よくもない。

 夢見し蝶に
 想い委ねる

 ああ、なんか整ったかなと思ったのですが、踏み込みが甘い。

 省みる間に
 想いは募る

 後悔しないと文をだし、踏み出して、それでもやめておけばよかったと 思っている間にも その人への想いはどんどん膨らんでいく。

 「間に」にするか「間も」にするのか「募る」か「満ちる」どちらがいいかを考える。

 月詠みて
 恋しき人に
 文出せば
 省みる間も
 想いは満ちる

 ふむ、月を見て、人恋しくなって月を詠った恋文を想い人に出したのだけれども、踏み出さないほうがよかったかなと後悔する気持ち以上に、その人への想いがどんどん大きくなる。

 よきかな

 僕は短歌についてそれほど詳しく調べもしていないし、漠然と57577の形と調子を整えただけなのですけれど、たまにはこうして花鳥風月を愛でてみるのも悪くはないですよね。

 僕が最後に彼女にしたアドバイスは

 月が見えないのは曇り空のせいじゃないし、彼が変わらないのは彼のせいではない

 でした

 あなたには月が見えますか?

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