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I'm not in love 10ccは四人の精液の合計?

頭の中でずっと音楽が流れている

そのほとんどは70年代から80年代後半くらいまでの洋楽のヒットチューン

暇さえあれば、或いは隙さえあれば授業中でも僕は音楽を聴いていたのだから、その頃の楽曲が頭にこびり付いて離れないというのは至極当然のことのようであり、でも、その中で僕の脳内i-Tunesで何がランダムに選ばれるかは、結局のところ無意識なリクエストなのかもしれないですね

最近のお気に入りは10ccのアイム・ノット・イン・ラブ(I'm not in love)と言う曲で、これには多少のうんちくがあります

テン・シー・シーという奇妙な名前は

「10cc」というバンド名の由来について、男性が一回に出す精液の量×4人分がだいたい「10cc」という事でつけられたと言われる都市伝説があるが、これは正しくはない。
 実際は、バンドの所属レコード会社の社長、ジョナサン・キングが看板に「世界で最も偉大なバンド、10cc」と書いてある夢を見て、「これは神のお告げかもしれない。」と考え名付けた。(wikiより)

僕の記憶では前者についてラジオだったか雑誌の記事で読んだ記憶があるかどうか、それすらも怪しいくらいに日本ではそれほど話題にはならなかったバンドとして理解している

しかし、ラジオから流れてきた「I'm not in love」という曲は当時の僕に衝撃を与えた

なんて美しい曲なんだろう!

スローテンポのせつないバラード、中学生程度の英語力でも、だいたいどんなことを言っているのかわかる
当時僕が聴いていたラジオのDJが言うには「架空の映画のサウンドトラック」というコンセプトでリリースされた『オリジナル・サウンドトラック』中の曲だそうで、その時はアルバムの中の曲をいくつか紹介していたように思うけれども、他はまったく頭に残っていない……たしかピーター・バラカンの解説だったかな

当時定期的に購入していたFM雑誌のロック名盤100選のなかにもこの『オリジナル・サウンドトラック』は含まれていたので、中古レコードで見つけたら買おうと思っていたのだけれど、現在にいたるまでお目にかかることがなかった

僕は縁がないレコードはあえて聴かない主義……というか、当時は通販で手軽にレコードを買える時代ではなかったし、ディスクユニオンやハンター、シスコといった中古レコード店に足を運んでジャケ買をするくらいだから、そっちまで手が回らなかったというのが本当のところだ

昨年の暮れ、ある人のススメで、マーベルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を観たのだけれど、その映画の中の挿入歌として最初に流れたのがこの曲だった

主人公ピーター・クイルが少年時代に一人病院の待合室でウォークマンを聴いている――5歳の少年が1988年にこの曲を聴いているってどういうこと?
その彼に祖父が声をかける
「そんなところにいないでお母さんのところに来なさい」

少年は母が重い病気で苦しんでいる姿を見るのがいやだった
母から送られたカセットテープには母が好きな70年代のヒット曲がいっぱい詰まっている(やや偏っていてスーパーヒット曲よりも一発屋的な、その時代を表す曲たち)
「I'm not in love」の曲の間奏にこんなセリフが入っています
 (Be quiet)  しー、静かに
 (Big boys don't cry) 男の子が泣いちゃだめでしょ
 (Big boys don't cry) 大の大人が泣いてどうするの

僕は映画冒頭、このシーンを見ただけで
”ああ、なんて監督だ! この人本当に音楽をわかっている!”
と興奮してしまい、それから劇中に流れる曲にうならされっぱなしでした

さて、映画はこのあと母が亡くなり、悲しみにくれた少年が病院を飛び出すと空がまばゆい光に包まれ、宇宙船に連れ去れれるという展開になるのだけれども――

少年の母親は宇宙人の父親を愛し、それで生まれたのがスターロード=ピーター・クイルということになるのですが、およそスペースオペラのような痛快な映画の冒頭には相応しくないだろう10ccの名曲が、どうして僕のハートをギュッと掴んだのかお分かりいただけたでしょうか?

まぁ、聴いてみてください

訳詞についてはこちらを

僕は是非、この映画の監督、ジェームズ・ガンと洋楽談義をしてみたいと思うのですが、もっとも彼は世界で一番映画を知る男と自負するくらいの超おたくらしいので、僕ぐらいの音楽の知識ではとても相手に成らないのでしょうけれど

歌詞はとてもシンプルな恋愛歌
モチーフもいかにもって内容だけれども、だからこそ、これと同じようなシチュエーションと言うのは、日常茶飯事、誰にでも起きることで、或いはこんな経験を一生しないような輩には、永遠にわからないような恋愛の負け組の歌なのです

恋愛の基本は ”惚れたら負け”

過日、僕の住んでいる地域のコミュニティエフエムに僕はこの曲をリクエストしました
曲が流れ、艶っぽい女性DJが僕のメッセージを読んでくれました

”この歳になって、うっかり誰かを恋しいなんて思ってしまう自分がいることに少しばかり戸惑いを感じます”

彼女は僕のメッセージを読んだ後
”ポエムのような素敵なメッセージですね。恋に年齢は関係ないと、私は思いますよ。だってこの番組のタイトルは『夕暮れ恋時間』、素敵なリクエストありがとうございます”

思春期にラジオを聴きながら誰かに思いを寄せていたあの頃のことを思い出して、その日は一日、心地よいブルーな気分になりました

僕はこのようなエッセイを書き、おどろおどろしい奇譚や不倫をテーマにした恋愛小説や、魔女狩りを扱った長編や未来人がやってくるSFなんかを書いたりしている一方、バンドをやったり、自分で曲を作って録音したりしています

普遍的なテーマはチープになりがちだから、ついつい奇をてらった様相を模索してしまうのですが、「I'm not in love」は、架空のオリジナルサウンドトラックという体裁の中で、べたべたのラブソングを成立させるというズルい手を使っています

そう、みんなわかっているけど、照れ臭いんですね
素でこういう作品を作って歌っちゃうことが

今でも僕の頭の中では脳内i-Tunesがこの曲をリピートしています

あなたには、そんな曲がありますか?

いつか誰かの脳内i-Tunesでヘビーローテションになるような曲や何べんも映画でリメイクされるような恋愛小説を書いてみたいものです

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