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アンチテーゼ~お化けなんてないさ

 ”霊感”と言う言葉があって、あるとか、ないとか、強いとか言いますよね

 まず僕にはそういった能力はないようで、心霊現象というものに出会ったことはありません

”10代の頃に心霊現象に出くわさなければ、その後幽霊を見ることはない”

 なんてことをテレビだったかラジオだったか、或いは友達同士の会話の中で聴いたことがあって、なんとなく安心したというか、納得した僕は、基本的に怖がりなんです

 怖がりだからこそ、”何が怖いのか”については敏感だったり、警戒心だったり、こだわりというものがあって、故に僕が書く小説にはそのようなネタを使った作品が多くあります

 心霊現象は科学的には証明できないので非科学的であり、つまり”信じない”ということは僕にはありません

 どちらかというと”信じたい側”じゃないでしょうかね

 たとえば亡くなった大事な人も幽霊でももう一度会いたいと思うこともあれば、自分が何か理不尽な死に方を誰かのせいでしたとして、化けて出てやりたいと思ったりします

 そしてそれは少なからず他の人の共感を得られる感覚だということを信じて疑いませんから、多数の人が望むことはこの世界では”現象として現れる”というのが、僕の仮説です

 ジークムント・フロイトという心理学者の夢判断やカール・グスタフ・ユングの分析心理学というのは、人の心を分析していく過程で無神論を唱えるフロイトとそれを保留し続け、やがて歴史や宗教と無意識の関係を重要視するようになり、他にも理由はありますが師弟関係は断絶します

 僕としてはユングの側に寄り添う立場で人間社会を見た方がとても合点がいきます

 死後の世界のイメージや臨死体験が宗教観と無縁ではないということは、わりと確かな事実だと思いますし、オカルトに傾倒しがちに見えたユングにこそ、人間らしさを感じてしまうのは僕だけではないと思います

 彼が提唱した”シンクロニシティ―”という「共時性」「同時性」「同時発生」といった概念は、誰しも心当たりがある”複数の出来事が意味的関連を呈しながら非因果的に同時に起きる現象”については、”虫の知らせ”から”超能力”まで科学といえるかどうかについても諸説あるにしても、まったく否定をする気にはなれないものです

 さて、”幽霊の正体見たり枯れ尾花”ということわざがありますが、これもまた真理であることには違いないと僕は思います
 だからといって、すべてプラズマや電磁波のせいにするのも興がない

”科学とは何かの現象のしくみを解き明かすためにあるのであって、何かの現象を否定するために用いるものではない”

というのが、僕の”ものさし”になっているのですが、

”現代の科学では解き明かせないこともある”

という超常現象を是とする人の”枕詞”に寄り添うものでもありません

 ”不思議なことなど何もない”という心構えで目の前で起きた現象を冷静に見ながら、”不思議なこともあるものだ”という起きた現象に対する畏怖の念を忘れないでいることが肝要だと、僕は思うのです

 人の脳は誤作動をする

 これはまぎれもない事実であり、ある特定の環境下においては幽霊やUFOを脳が観てしまう現象は起こりうると思います

 じゃあ、幽霊もいないし、魂などというのは概念だけの存在で実際に人は機械的な生命の器でしかないと結論付けるには、人類の知りえない領域の存在に対する畏怖がなさすぎるというか、奢りでしかなく、もっと言えば思考停止の罠に陥っているだけに思うのです

 人間だけが神を持つ

 どんなに科学が発達しても、どんなに情報ネットワークが発達しても人間は未だに神の存在について否定できないでいます

 タイトルは忘れましたが海外のSF映画で、人類が宇宙人(と言ってしまうと子供っぽいですが、地球外知的生命体の存在を探索するお話です)とコンタクトをとる代表を決める際に、無神論者を使者に選んでもいいのかどうかという論争が湧き上がります(※1)

 僕は非常に面白いテーマを扱った映画だなと思いました・・・まぁオチはともかく、神を捨てられない人類が幽霊を否定するなどおこがましいだろうというのが、僕の立場です

 さて、僕が怖いと思うことを少し披露するのならば、或いは人類はやがて生命の秘密や宇宙の神秘について方程式を解き明かすときが来るかもしれません

 その時には偶然などはありえず、すべて一つの現象から波及してある一定の確率で起こってきたこと、つまりすべては仕組まれたことであり、来るべき未来への過程としての現在には、夢や希望といった人間的価値観などなんの役にも立たないのだと知る時が来るかもしれません

 それはすなわち絶望じゃないでしょうかね
 だから僕が望むのは・・・

 ”不思議なこともあるものだ”と言える世界なのですよ


思い出しました

※1
『コンタクト』(Contact)は、1997年のアメリカ映画。カール・セーガン[2]によるSF小説の映画化作品。SETIプロジェクト、人類と宗教、科学、政治、地球外生命、などをテーマとするSF映画


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