飲んで飲まれて仮想現実
タバコは”迷い”だと前回まで書いたところで、さて、今回はまた自分のストックから短編をアップしようかと”死神は眠らない”と言う作品を読み返して手直しをしていたのですが
”どうにも収まりが悪い”
とても好きな作品であるはずなのに、この場に上げるにあたっては、”調子が合わない”という感覚を果たしでどれだけの人に共感してもらえるのか、または伝えることができるのか、あまり自信はないのだけれども
そこで、その作業はいったん手を止めて珍しくも他の人のnoteに目を移してみた
”僕は書くのは好きなのですが、読むのは苦手なのです”
そう、このことも共感と伝えることができるかどうか、次の機会にでも挑んでみようかと思うのですが、嫌いと苦手は違うのですよ
BAR TooLさんは、僕の住んでいるところから電車で10分もなのでいつか立寄ってみようと思っていたのですが、たとえばBAR TooLの文章は僕にとって読みやすく、好きな文章ということになりますが、それを置いて大事な点があって
”一緒に飲んでみたい人”これにあたります
僕は夏目漱石とは飲みたくないが、太宰治とは飲んでみたいと思うのです
夢枕獏もスティーブン・キングも同じでしょうか
彼らの書いた物語に登場する、ちょっとしたセリフや描写や情景、登場人物の心当たり(やめろと言っても非日常な場面では必ず羽目を外してしまう男や男から見てまったくわからない出来事から手のひらを返す女性など)について、あれこれと酒を飲みながら、ああでもある、こうでもあると話をしたいなと思える人の文章はいくらでもお腹に入る
おっと、すでに書こうと思いついた事からだいぶ断線しそうなので、話を戻すと、書くことの話ではなく、呑むことの話、お酒の話をしたかったのだった
”酒の次は、お酒だろう”
結論から言ってしまえば、”タバコが迷い”なら”酒は出逢い”だと僕は思う
だから群れないで一人で飲みに行くことが多い
かといって主戦場がバーカウンターというわけでもないのが、僕の飲み方で、極端チェーン店に一人で飲みに行って、誰と会話することなく店を出たとしても、僕は、たとえばあなたと出会っている
僕は案内された1人がけ用の席からハイボールとから揚げと少しさっぱりとしたツマミを注文し、そこから世界を観る
隣の席では、待ち合わせなのだろうか、とても一人で来るようには見えないような女性がテーブル席に座ってレモンハイを飲みながらずっとスマフォをいじっている
荷物は少なく、きっとこの店に歩いて来れるくらいの距離に住んでいるんではないかと、いろいろと考察する
その二つ向こうのテーブルではいい感じに年代がばらけたサラリーマン4人組が、時々真剣な趣で話をしながらも和気あいあいと飲んでいる
同じ部署の飲み会だろうか
一番年配と思われる男性は物腰は柔らかいが、短い言葉で一つの文脈のシメになる言葉で、必ず結論や方向付けをする
それに対して一番若い男性は感心しつつも何か新しい提案はできないかといろんな角度から案件を突っつくが、中間の二人が交互に「それは考え過ぎだ」とか「極端に言えばそうだが」とか、やや話をぼかしに入る
自分が社会人になってから現在に至るまでの年表を見ているような気分にさせられる
そこに先ほどまで一人で飲んでいた女性のところに大き目のバッグを肩からかけて、少しばかり小走りで女性が駆け寄ってくる
「ごめん、待ったぁ、仕事がなかなか終わらなくて」と声をかけると、先に来ていた女性は「ううん、さっき来たばかりよ。久しぶり」と彼女を温かく迎いれる
僕はそんな日常的な光景を眺めているのが本当に好きなのだ
カラオケボックスにひとりで行くことはないけれど、カラオケ居酒屋ならぜんぜん一人で入って初めての人とも一緒に肩を組んで熱唱することもできるし、バーカウンターでマスターと世間話をすることも、その会話に入ってきた隣の席のきれいなお姉さんとの会話を楽しむこともできる
酒があるおかげで、それらは成り立っている
僕にとってまず、”酒は出逢い”であり、そこから紡ぎだされる物語をもっとも好むのかもしれない
たとえばこんなお話
さて、今日はそのさわりだけ
次回は2杯目の話をしましょう
飲んで飲まれて、仮想現実
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