005_のコピー_2

クリエイティブとは判断力。ふせんトレーニングのすすめ。

こんにちは。メルカリCXO室デザイナーのcremaと申します。

CXO室(Chief Experience Officer Team)の主な仕事は「ブランド構築」「UI / UX構築」「デザイン組織構築」です。この記事では、「デザイン組織構築」に関連した勉強会のひとつ「Talk with Takram」という試みについて、ご紹介します。

Talk with Takramとは

メルカリでは、デザインアドバイザリとしてTakramの田川欣哉さんをお迎えし、デザインに関する様々な課題に対するアドバイスをいただいています。限られた人数の社員しか田川さんとお話する機会がないのはもったいない!ということから、1〜2ヶ月に1回のペースで「Talk with Takram」を開催し、社内のデザイナーが誰でも参加できるようにしました。メルカリ側から「今回はこのテーマについて伺いたい」とご相談し、田川さんにオリジナルの講義内容を用意していただく、とても内容の濃い90分の勉強会です。

第3回のテーマは、クリエイティブディレクション能力を鍛える「ふせんトレーニング」

さて、いよいよ、「Talk with Takram」で実施した具体的な内容をレポートしましょう。メルカリでは、デザインの成果物を互いにレビューするワークフローを導入中なのですが、その際にみんなが気になるのが「レビューの基準」「デザインを判断するちから」の問題です。これを田川さんにご相談したところ、「Takramでも取り組んでいる効果的で簡単に導入できるトレーニングがあるので、みんなに紹介しましょう」と教えていただいたのが「ふせんトレーニング」。

用意するものは「デザイン年鑑やデザイン雑誌など、クリエイティブをまとまった数閲覧できる資料」と「赤黄青の3色の小さなふせん」だけ。資料のほうは、参加する人数分の冊数を用意するとやりやすいです。今回の勉強会には20人ほどの参加者がいたため、ポスターのデザインを収集したものをA3用紙4枚にわりつけてプリントアウトし(※1)、ふせんの代わりに3色の丸い小さなシールを用意しました。

(※1 社内閲覧用のみの資料で、勉強会終了後には破棄しています。)

やり方はとてもシンプルで、用意した資料を見ながら、「このデザインはOK」なら青のふせんを貼る、「このデザインはNG」なら赤を貼る、「良いか悪いか判断がつかない」のであれば黄色を貼る、というもの。

当然、人によってどの作品が青でどれが赤になるかは異なりますが、田川さんによると「実力のあるディレクターやデザイナーは判断軸がぶれないので、黄色のふせんを貼ることがめったにない」ということです。
という説明を受けたあと、いよいよ実戦スタート!

全員真剣な面持ちで、用意された画像を見ながら自分のなか基準に従ってふせん(シール)を貼っていきます。最初のうちは慣れず、判断するのにも時間がかかってしまうのですが、続けるに従ってすばやくジャッジできるようになっていきます。

ひとつの作品の中の一部分に青をつけ、一部分に赤をつけることもOKです。要は、自分の基準でジャッジした理由や内容を説明できればよいということです。

次のステップは、ジャッジの内容を隣の人に説明すること

ふせんトレーニングは、自分でふせんを貼って終了、ではありません。

次のステップは、自分がジャッジした内容を他人に説明すること。ということで、今度は隣の人とふせんを貼った資料を見せあい、なぜその色のふせんを貼ったのかをディスカッションしていきます。

このステップが非常に重要で、自分には無い他者の視点、自分の考え方との共通点や違いを知って、糧としていくわけです。最初のうちは上手く説明できず、もどかしいこともあるかと思いますが、このステップを繰り返すことにより、デザインの判断軸に関する言語化スキルが徐々に上がっていくことが期待されます。

実際に、この時間は非常に盛り上がって、ディスカッションが繰り広げられていました。

最後に田川さんからのまとめを伺って、「Talk with Takram」は締めの時間に。かの有名なジョナサン・アイブ氏のデザイン批評に関するトリビアも披露していただき、盛況のうちに勉強会は終了しました。

トレーニングを続けよう

どんな種類の勉強やトレーニングでも同様ですが、ふせんトレーニングにおいても継続が大事ですよね。そこで有志のメンバーでこれを習慣化しようと、月曜から木曜の11:00〜11:30をふせんトレーニングの時間としてカレンダーにセットし、その日に参加できる人でお題を決めて実施しています。

最近出たお題は、「交通広告」「トイレのサイン」「店内のPOP」「雑誌の表紙」など。アプリやウェブサイトのみならず、様々な分野のデザインについて考察してみようとトライしています。

必ず毎日実施できているわけではないのですが、できるだけ継続して取り組み、1〜2Q経過後には「デザインレビュー時に言語化する能力」を高められるようにしていきたいと考えています。

慣れてきたら「ふせんトレーニング実践編」という記事で、リアルなレビュー内容もご紹介できればと思っています。ご期待ください。

終わりに = デザイン組織構築に関する取り組み

冒頭で、「デザイン組織構築」はCXO室の仕事のひとつ、とご紹介しました。

私達の会社における「デザイン組織構築」とは、メルカリとメルペイに所属するデザイナーのつながりを強化し、お互いの得意分野を持ち寄って連携を図りながら、より質の高いアウトプットを目指す取り組みと言えます。

CXO室では、シャッフルランチやデザイナーが全員集合する「Design All Hands」などに加え、「Talk with Takram」を始めとする各種勉強会も通して、様々な角度から「より良いデザイン組織」を構築しようと日々取り組んでいます。

企画・執筆・カバーデザイン:crema
編集:長嶋 太陽