見出し画像

スプラで学ぶ経済学 「認知的不協和」

今回は、スプラトゥーンを通じて経済学を学ぼうシリーズ第二弾です。
「認知的不協和」という行動経済学の理論を用いて、「味方批判」をする人の心理を解説します。

そしてそこから見えてくるスプラトゥーンというゲーム(eスポーツ)の、今後の展望を考察してみたいと思います。

*注:当記事は「味方批判」という行為の是非を問うものではありません。

1.認知的不協和とは:「すっぱいブドウ」の心理

「認知的不協和」とは、社会心理学や行動経済学の分野で用いられている用語(理論・仮説)です。

有名な例はイソップ寓話に出てくる「すっぱいブドウ」の話。
キツネが高い木になっているブドウを食べたくて何度か飛び跳ねてみたものの届かなくて手に入れられず、最終的に「あのブドウはまだ青くてすっぱいブドウだから」と言って去る、という内容です。

このように人間(寓話はキツネですが(笑))は、何らかの不満足(不協和)を感じるとそれを減少させるために考え方や行動を変化させることがあり、この現象を「認知的不協和」と呼んでいます。


2.「野良マッチングのスプラトゥーン」に不協和を感じるのは必然

前項の例を理解して頂ければ、スプラトゥーン2のゲームシステムにおいて、ガチマッチ、2人リーグマッチ、ソロサーモンラン等の、いわゆる「野良マッチング」には「そもそも不協和が沢山存在している」というのは想像に難しくないと思います。

分かりやすく、良くありそうな例として、
・塗らないわかばシューター
・キルが取れないチャージャー
・初期位置で放置しているプレイヤー
・煽り行為

等が挙げられると思います。

不協和を感じるというのは、何らかの不満足を感じているということです。
不満足を感じるということは、まず何らかの期待をしているということ、です。

上記の例ならば、
・わかばシューターだから、きっと塗ってくれるだろう
・チャージャーだから、きっと敵を撃ちぬいてくれるだろう
・ガチマッチなんだから、全力で頑張ってくれるだろう
・ゲームとはいえ人間相手なんだから、互いの気持ちへの配慮はしてくれるだろう

そんな「期待」がまずあって、しかし「野良=事前打ち合わせのない状況」であるがゆえに、期待を裏切られそれが不満足につながり、それを解消するための行動を取るようになる・・・という現象になります。


3.認知的不協和とどう向き合うか

冒頭の「味方批判」もこの認知的不協和から生じた行動の一つ、と考えることが出来ます。

上記のような野良マッチングから生じる認知的不協和については、各々のスタンスで適切なアクションを起こすしかないのですが、問題は「チーム内で生じた場合」でしょう。

すなわち、チームリーダーにはこの認知的不協和を如何にして「健全な批判的思考」に持っていくことが出来るか、という事だと思います。

今後スプラトゥーンがeスポーツとして発展していくには、大事なファクターの一つになってくるのではないかと考えられます。


4.ソーシャルスタイル理論

チーム内で生じた不協和をどのように解決していくかという事については、様々なマネジメント・リーダーシップの手法がありますが、今日はそのうちの一つで、以前こちらでも少し触れた「ソーシャルスタイル理論」を紹介したいと思います。

ソーシャルスタイル理論とは、人間のタイプを①自己主張が強いor弱い、②感情が出やすいor出にくい、という2つの軸を使って4分割し、それぞれに当てはまるタイプの特徴と対応方法を分析して、組織運営を効率化しようというビジネススキル(手法)の一つです。

組織を構成するメンバーがどのタイプに当てはまるのかを考え、適切な対応を導き出す指標として使います。

ソーシャルスタイル理論は、詳細まで説明するとこれだけでも1記事書けてしまうかもしれないくらいのボリュームになってしまうので、今回はポイントだけをまとめて書きます。
実研修ではディスカッションするだけで最低2~3時間要します。

ソーシャルスタイル理論

・ドライビングタイプ(自己主張が強く、感情が出にくいタイプ)
 特徴:リーダー気質で効率が良い方法を考えたがる。
 対応方法:ドライビングタイプの人は「自分で考えて行動する」自立心の強いタイプなので、自分の思考を押し付けるのはNG。「問いかける」ことで解決方法を模索することが重要。
芸能人でいうと、ビートたけしタイプ。

・エクスプレッシブタイプ(自己主張が強く、感情が出やすいタイプ)
特徴:社交的で形式ばらない。ストレートにものを言う。
対応方法:エクスプレッシブタイプの人は直感的に行動する。行動力はあるので押さえつけるのではなく「良さを活かす」しかない。
芸能人でいうと、明石家さんまタイプ。

・エミアブルタイプ(自己主張が弱く、感情を重視するタイプ)
特徴:協調性があり親しみやすいが、反対意見を言うのが苦手。
対応方法:基本的に組織のトップには向かない。「一緒になって考えてあげる」ことが大事。
芸能人でいうと、小堺一機タイプ。

・アナリティカルタイプ(自己主張が弱く、感情が出にくいタイプ)
特徴:形式や論理を重視し、職人気質。粘り強い。
対応方法:人の力を借りるのが苦手 ⇒ 時間をかけてあげれば良質なアウトプットを導きやすい。
芸能人でいうと、タモリタイプ。


5.「人材」をどう育てるか

ソーシャルスタイル理論の基本的な考え方としては、

自分の定規で人を測るのではなく、相手のスタイルに合わせたマネジメントを考え、個々人の魅力を引き出すマネジメントを行う

というものです。

そして今後スプラトゥーンがeスポーツとして発展していくには、このようなマネジメントを実行できる人材や、そのような人材を育成するための環境を整える必要性が高まってくるのではないかと思います。

逆に、スプラトゥーンを通じてこのようなスキルを学べる機会(環境)があることで、「eスポーツ」として世間一般により受け入れられていく、と考えることも出来ると思います。

チームマネジメントに関する知識や情報は、ゲーム以外の一般にも広く認知されているとは言い難いのが現状ではありますが、だからこそeスポーツ界において発展の為のファクターとしては、非常に面白いと言いますか。
個人的な希望も込めて、この部分が今後の発展の切り口の一つとして作用し、様々なWin-Winが生まれること期待したいですね。


『スプラで学ぶ経済学』表紙へ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?