頼るのは悪いことではなくて

自分一人で悩むより、他人に相談した方がいいことは多い。誰かに話すことで、自分の中で整理されることもあるし、的確なアドバイスが貰える可能性もある。時には、悩みの深刻さが理解されなくて撃沈したり、自分が欲しいのとは違う反応をされてモヤモヤすることもあるだろうが、だからといって「もう人の手なんか借りない」と拗ねるのはよくない。Aさんに聞いてわからなかったことも、Bさんなら解決できるかもしれないのだ。

「助けを求める」ことを、何か非力で嫌うべきことのように思っている人があるが、それは違う。実際は、うまく行っている人ほど人に頼るのが上手で、できないことはさらりと他人に任せている。つまり、できる人は「これ、私は苦手なのでお願いします」「あなたのほうが上手にできると思うんです」と、他人に自分の弱みを見せられるのだ。自分はこれはできない、得意じゃない、あなたならできる、というメッセージを発することは、下手なプライドがあるうちはできない。だから、任せられる人、甘えられる人は、実際はその軟弱な外見に反して、とてもタフなのだと思っている。

もちろん、それは「なんでも他人に任せればいい。自分は何もしなくていい」ということではなく、できないことや、できるけど辛いことは素直に訴えてみるのも手だということだ。結果として助けてもらえなかったにしても、誰かに頼る勇気を出すことは大切だ。

自分は(些細なことだけれど)母親に化粧品のことで相談に乗ってもらった。普段、化粧はほとんどしないのだが、眉毛だけ色を乗せることがあって、慣れないのでうまくできない。それで母に「描き方の問題かな」と相談したら「そうじゃなくて、色を変えてみたほうがいい」と言われた。「そのカラーは髪の毛の色と合ってない」とのこと。色の問題だとは思ってなかったので、ああ、そういう視点があるのかと思った。自分一人だったら、色は無視してずっと描き方の試行錯誤をしていたかもしれない。相談してみてよかった。

何かを自分一人で抱え込んでいるときは、周囲が「助けてくれない敵」に見えたり、攻撃的になったり、不機嫌になったりする。苦手なことをしていても楽しくないし、このキツい作業をどうして誰も助けてくれないの?と被害者意識を持ちがちだ。少なくとも私はそうなる。周りの人にしてみれば、なんで機嫌が悪いのかもわからないし、手を貸そうにも本人が「一人でやる」と息巻いてるし……と声をかけづらいだろう。だから、周囲に不機嫌を振りまかないためにも、上手に頼ることを心がけていきたい。頼る理由は、自分が楽になるためばかりじゃない。一人で頑張りがちな人に伝えたいことだ。。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。