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お花畑で

そこへ悲しみがトボトボと口をへの字に曲げてやって来ました。

わたしはようし、と深呼吸をして
できるだけ元気な声で
でもおどろかさないように細心の注意を払って声をかけました

「やあ、こんにちは。どうしたの?何かあったの。」

悲しみはビクッと体を強張らせましたが
わたしの顔を見るとちょっと安心してウルウルと涙を浮かべました。

「なんでも話して。遠慮はいらないの。それに、話さなくってもいいわ。
ただ、黙ってるんでも全然構わないの。だけど。その、つまりね、
いてくれて構わないってことなのよ。」

わたしは言ってしまってから、あちゃーと思いました。
多分相当に余計なことを言ったのだと思ったのです。
でも、もう言ってしまったことは仕方がありません。
取り消しできません。

それで、もう腹を決めて、そこにある花を摘み始めました。
(なんでもなかったことにするのが一番優しいことだ。)
小さい頃ともだちと喧嘩したときにそれが一番いい方法だと信じていたことがあったのです。

ともかくわたしはそれを実行して見ました。
すると、なんだか心がすうっとしてきました。

悲しみも気がつくとそばに座って
同じようにシロツメクサを摘み始めていました。

私たちはあっという間に冠と首飾りを編み上げて
お互いの頭と首とにかけてあげると
何がおかしいのかクスクスと笑い出し
挙句には大声でゲラゲラと笑ったあと
すっかり満足して草の上に大の字になって寝転がりました。

雲がゆっくりと流れています。
台風が行ってもまだ風が残っているので
いつもよりもずっとずっと早く動きました。

ふと横を見ると
悲しみが薄くなって消えていくのが見えました。
すうっと草と同じ色になって
見えなくなっていきました。

クスクスと笑い声だけが
なぜだかいつまでもこだまのようになって
森の中まで響いていました。

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