11章

 チビ「いちご大福~」
 ウィッシュ「かしわ餅です!」
 しろ「キャラメルコーン……」
 
 チビたちが花瓶に入った大輪の花(名前はわかりません)を囲んで、順繰りにセリフを言いながら、花びらを一枚ずつちぎっています。
 これは、いわゆる「花占い」というか「花びら占い」ですね。普通は、「好き」「嫌い」とひとりでちぎっていくんですが、チビたちはどうやら(セリフの単語名から察するに)お昼のおやつタイムに何を食べるかひとつだけ決めようという話にでもなったのでしょう。
 花びらを最後にちぎったら勝ちねー、とチビが提案したのかもしれません。ちょっとおもしろいのは、しろだけ、おもち系じゃなくて、スナック菓子であることですかね。『キャラメルコーン』というのは日本では有名なスナック菓子ですね。きつね族の間でも人気がそこそこあります。
 しろはいちいち空気を読んで他人に合わせるようなことはしないのです。素晴らしいではありませんか。しろはしろの道を行く。
 
 チビ「いちご大福~」
 ウィッシュ「かしわ餅がいいです!」
 しろ「やっぱ、キャラメルコーン」
 チビ「いちご大福食べた~い」
 ウィッシュ「かしわ餅でお願いします。ほんとうに泣きそうです。かしわ餅でぜひぜひお願いします。黒船が来て日本も開国したではありませんか。よろしくお願い申し上げそうろうでございます」
 しろ「キャラメルコーン、またの名をキャラメルコーン」
 
 チビたちはさらに威勢よく花びらをちぎっていきます。
 しかし、おかしなことに花びらの数が減ってる感じがしないのです。不思議です。はたから眺めているわたくしの目には、ちぎった花びらはテーブルの上に散らかっているのに、花瓶に挿してある真っ赤な花の輪郭は変化なく素敵に膨らんだままその美しさをモナ・リザの胸元のように保っているのです。
 
 チビ「雪見大福! あ、まちがえた、まあいいや」
 ウィッシュ「かしわ餅一択で。神はサイコロを振りません!」
 しろ「キャラメルコーン、焦がしバター味がいいなぁ」 
 
延々、花びらがなくなる様子がございません。しろはしろでキャラメルコーンの知ってる限りの「味」のヴァリエーションを連呼していくことでしょう。
 おっと、突然ですが思い出しました。前の章でチビたちがなぜ自分たちの名前を連呼していたのかについての謎が解けました。前の章の日はおそらく、三匹の中で誰が一番かわいいか、なんてことを言い争っていたのかもしれません。「争う」という単語は物騒ですね。チビたちにここで謝ります。
 
 ともかくそうやって、今日と同じように花びらをちぎっていたんでしょう。
 でも日が変われば発想も変わる。変化を求めることもたまにはある。もしくは、今日はみんなが単におなかが減っていたんでしょう。
 それではわたくしはこの状況をしばらく見守っていたいと思います。
 では、ごきげんよう!
 前の章の「二」の疑問点は、いつか自然に解読できると思います(投げやり)。


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『きつねくんにっき』

詩を書くきつねくんを中心にチビ、ウィッシュ、しろの三匹の犬が繰り広げる適当日記体小説。新しい哲学、救いの思想についても触れるかもしれない問題作。
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