真理の彼方(すべての対義語を捨てるための詩)

第一章

完全な闇も完全な光もない

狂気だけがある

あの人とあの人に捧げる詩は書かない

新しい哲学のために書くというわけではない

狂気だけがある

新しい哲学などない

すべてはもうあるだけである

愛や愛の絆を書くというわけではない

愛や愛の絆を知っているからこそ

狂気だけがある

第二章

「魂の質量」が散歩する・泣くまいとして・歯を・食い縛りながら・「無理矢理拵えられた神」・という偽物の真理の穴に・落ちそうになる
「無理矢理拵えられた神」は・己が・計り知れない洞察力で・観察対象となっていることに・気が付かない

神は自殺する気だ・と・「魂の質量」は思う・が・視線は・「無理矢理拵えられた神」には・届かない

死んで・無一物になるのは・「無理矢理拵えられた神」にとっては・朝が夜を・夜が朝を・繋ぎ留めるほどに・露骨な・正当さである

「魂の質量」は・戦慄の場としての・生と死から・散歩に出かけるのは・響きのない・稚拙な自己投棄に過ぎない・と・考えている・が・自らも「無理矢理拵えられた神」の・観察対象と・なっていることには・気付かない・それは・歴史が・止揚という・運動によって・時間という・いかがわしい・乗り物を・でっちあげているということに・それに乗る存在者の側が・気付いていないのと・同義である

第三章

「無理矢理拵えられた神」はこう言った

僕にはもう・靠れかかる・壁がない・ジ・エンドです・儘ならない・夜は既に夜である・歩き方も・鈍重で・ヴェーダの韻律がない・正鵠を射た・ジ・エンド・宇宙以前は・希望だけの・大海原だったんです・昼は・まだ・昼を・迎えてはいなかったんです・波と風と・風と・風と風と・そして波が・繰り返すだけでした・光は増えたり・減ったり・するでしょう・ですが・僕は・闇ばかりを・凝視してきました・報告的に・アイデンティティを・吐露する・態度でした・ とある神話が・とある宗教に一掃され・そこに・形而上学的・変化が生じたとき・あらゆる素粒子が・好き勝手に・ふるまうための・関数・の・アルゴリズムに・哲学という・宇宙塵が・伽藍状に・降り積もりました・世界の・道幅が狭くなり・風が・止みました・そのときなんですよ・偽物だとわかったのは・人というものが・産まれたんですよ・僕は・完全なる真理というものに対して・注意を・怠り過ぎたんです

第四章

わたくし人間は・日常を・散歩する・それは現実・と・虚構という対立を・要さない・現実・と・虚構・の・重ね合わせでもない・そんな・場ではあるが・大きさを持つことはない・カミュは間違っていたか?・不条理・とは・胚胎する生・不肖の息子としての死・としての・薔薇色の不条理・だろうか・いや・それは人生という・政治的動力と・堕天使的密会を・するか?・まさに・マス・コミュニケーションだね・滑舌よく・言い切るのに・相応しくない・単語だ・はは・海沿いの・僻地の・出っ歯の・腐った蜜柑の・知性には・ちょうどいい・ありきたりな・コード進行だ・英雄!・未完成交響曲・ラ・ヴィアン・ローズ・という名の・アパート名・そして・部屋の中の・聖書台は・快楽を・処理する・事務机だ・セックス・フレンド・としての・アーメンだ

第五章

無重力で歌われるべき「魂の質量」の鼻歌

ハンカチで奇蹟の披露をするように

「魂の質量」は

人間の観念をありえない位相から愛撫 する

すると

人間には形があるのに

鏡に映るのは

生と死だけ

第六章

「魂の質量」は
人間に指図する
鏡の周りに観客が集まってきたとしたら
そいつらはきっと知性や理性と呼ばれるものたちだ
頼むから
奴らをほっといてやってくれ
神話の城で
妙なる調べでも
永劫回帰の嘘に気づくまで奏でていろと
手招きして声をかけてやれ

「魂の質量」は
鬼気迫る顔で
時間と空間を探し続けながら
独り言を言う
どうも
生と死の奴らをトウヘンボクだと決めつけたいらしい
ふらふら歩けば
月や太陽や宇宙が付いてくるという
科学とやらを宗教にしたいらしい
どうも
俺の紡ぐ詩や説教の穴から
すっぽり抜け出たいらしい
いったい逃げてどこへ行くのか
精神というものへか
観念というものへか
イメージというものへか
一度しかチャンスのないコソ泥のよう に
足音を忍ばせて
偽物の真理に潜り込んで
謎の取引をしようとしている
俺しか知らない取引を

人間には形があるのに
鏡に映るのは
生と死だけ
崇高だがあくどい契約だと言うだろう
人間は
俺はゆっくり奴らを眺めるだけさ
いくらでも仲介してやる
人間どもが気付かない限りは
人間どもが高慢である限りは
取引は謎のままだ
原罪はすべての対義語であるということに気付いた奴は
まだいない

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