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VTuber配信専用アプリの世界・IRIAMとREALITYを比較しながら

VTuber(バーチャルライバー)が活動するプラットフォームは、昨今はYouTube以外にもたくさんあり、VTuberファンの方でもなかなか把握しきれないという状態ではないでしょうか。 

有名なものとしては、SHOWROOMイチナナLiveがまず挙げられます。視聴者数も多いですが、これらはバーチャル専用ではなく、生身の配信者がメインで、1つのカテゴリとしてバーチャルがあります。また、VTuber的な配信をするやるためには、別のアプリや環境と組み合わせる必要があり、それなりの知識が必要です。

ゲーム配信に特化したミラティブには、「エモモ」というアバター機能が内蔵されていますが、これはフリックに反応して動くだけで、ライバーの動きをカメラで認識するわけでは無いので、VTuberになれるとは言いがたいでしょう。

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一方で、「バーチャル専用」の配信アプリがいくつか存在しています。専用なのでユーザー数は前述のアプリよりは少ないですが、特化しているだけに独自の存在感があります。今回はその種のアプリの代表格であるIRIAMREALITYに注目し、比較しながら紹介します。また、同種のアプリだけれど若干ターゲットが違うトピアについても少し触れます。

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配信者の呼び名は、IRIAMとトピアが「ライバー」、REALITYは「VTuber」のようですが、ここでは「ライバー」で統一します。

機能などはいろいろ変わると思われるので、2019年10月13日時点のものについて書いています。

IRIAMとREALITYの共通点

配信側に必要なのがスマホと1個のアプリだけで、ほかの機材は不要なのがメリットです。外付けマイクやミキサーを使うことはできますが。

視聴側として、他のライブ配信アプリと違う特徴としては、機能や画面がシンプルで使いやすいということがあります。これは両方のアプリの配信枠の選択画面で、構成がそっくりですが、シンプルにライバーの顔が並んでいるので分かりやすいですね。

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以下はそれぞれのアプリの配信中の画面で、左がIRIAMで右がREALITYですが、簡素な背景にキャラが大きく表示されたシンプルな画面構成はよく似ています。

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スマホ専用で、PCで見ることはできません。個人的には、スマホでしか見られない配信は敬遠していました。PCのほうが画面が大きくて見やすいだろうと。でもこの2つのアプリを使うようになって、考えが変わりましたね。スマホの画面にキャラクタがアップで表示されることで、スマホを介してビデオ通話しているような、妙に生々しい感覚があるからです。これは一種のAR(拡張現実)と言えるかも。そのAR感のためにも、画面はシンプルなほうがよいのです。

画面にゲームの画面などを重ねることはできず、キャラとギフトくらいしか表示できないので、配信のメインはコメントを拾いながらの雑談です。積極的にコメントを拾う人が多いし、YouTubeなどの人気者に比べればコメントが流れる速さが遅いため、読んでもらえる確率が高いのは魅力。人があまり多くなければ、会話のキャッチボールをすることもできます。コメントでライバーと会話することがメインコンテンツと言えるでしょう。

どちらのアプリも検索機能が乏しく、名前などで検索できないのですが、わざとやっているのでしょう。運営がお勧めの人を目立つようにするので、それを見ろと。そして気に入ったら、また来れるようにフォローしておけということです。

あと、YouTubeと比べると特徴的だが、他の配信アプリにはよくある特徴として、ライバー同士が競い合う公式イベントをよくやっています。上位に入ると、例えば衣装がもらえるなど特典があり、順位はリスナーからもらったギフトなどによって決まります。そういう競争が苦手な向きもあるでしょうけど、ライバーを応援できて嬉しいという人もいるでしょう。参加した気分にもなりますし。

IRIAMの特徴

IRIAMとREALITYの大きな違いは、IRIAMは(今のところ※)公式ライバーのみが配信できるということです。オーディションで選ばれたオリジナルライバーと、既に活動しているVTuberから選ばれて参加した人がいます。公式ライバーは2019年10月13日の時点で約370人登録されており、半月に1回、〇期生という形で数十人が追加されます。女性ライバーが圧倒的に多く、男性ライバーは少ないようです。
※2019年10月時点の話で、その後公式ライバー以外も配信できるようになっています

IRIAMは技術的にユニークで、動画を配信する方式ではなく、キャラクタのモデルデータを最初にダウンロードし、配信中はその動きのデータと音声だけが送られてきます。そのため通信量が少なく、映像も圧縮ノイズが無くて美しい。遅延も少なく、アプリの出来は素晴らしいと思います。

ギフトはすべて有料というのも特徴的でしょう。ランキングが見やすいところにあり、誰がいくらギフトを貰ったか一目でわかるし、ライバーのプロフィール画面ではリスナーのランキングも表示されます。課金を競わせているわけですが、でもそれは、ライバーが収入を得て活動を継続しやすいということにも繋がっています。

初めてのライバーの枠に行くと、入室メッセージに「(初見)」と付くので、それを見て自己紹介してくれるライバーは多いです。あちらから話しかけてくれるので、初めてでも会話に混ざりやすいと感じます。

REALITYの特徴

REALITYはIRIAMと違い、誰でも配信できるので、学生、主婦、声優の卵、バーのお姉さんなどいろんな人がいるのが魅力でしょう。男性ライバーも多いです。

気軽に発信できるコミュニケーションツールとしてSNS的に使っている人が多い印象ですが、VTuber的に自分を表現するための手段として発信している方もいます。

キャラメイクでアバターを作ることができ、3Dでクオリティがとても高いですが、バリエーションが限られているので見た目はカブりがちです。パーツを編集して着せ替えを楽しめるのはいいところで、例えばハロウィン期間ではハロウィンらしい衣装やアクセサリをつける人が多いですね。

ちなみにIRIAMのほうは2Dですが、絵師さんが専用に描いた絵を使ったモデルなので、見た目の個性はあります。

IRIAMと違って無料で贈れるギフトがあり、無料ポイントを集めるにはいろんな枠を訪問する必要があるので、その過程でいい人を見つけることもあります。

始めてしばらくは、名前に「REALITYを始めたばかりの○○」という表記が入り、初心者とわかってもらえるのはいいところです。多くのライバーは、初めての人が来たらプロフィールを見ながら話しかけてくるので、そのつもりで書いておいたほうがいいでしょう。

配信が手軽にできるため、リスナーかつ配信もするという人は多く、リスナーの配信にライバーが訪問したりするので、ライバーとリスナーの距離が近いことも特徴としてあります。

IRIAMのライバーの例

どういうライバーがいるのかを示したほうが、雰囲気が伝わりやすいと思うので、例としてバリエーションに留意して3名のライバーさんを紹介してみます。リンクはIRIAMアプリのプロフィール画面へのリンクなので、アプリが入ったスマホからでないとアクセスできません。

星宮かのん

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正統派なので最初に紹介しました。友達感覚の明るいピュアな子に元気をもらいたい、という時に向いています。初見で行くと丁寧に自己紹介してくれるし、スター(イイネみたいなもの)押しただけで「〇〇さんのハートにきらりんちょ!スターありがとう!」と決めセリフを返してくれます。初心者でも入りやすいライバーではないでしょうか。

桜もち

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初見さんが来ると、「桜もちよ。ツンデレ風味のバーチャル彼女だから、簡単にデレたりしないんだからねっ」といった自己紹介をしますが、普段はさほどツンツンしておらず、むしろ甘々な雰囲気なので「ダウト」とコメントされたりします。演技力があって、ツンデレなどいろいろな小芝居をして「彼女感」を出すのがうまいです。

中峯リリィ

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リスナーのことをイキリ子豚と呼び、煽り合うスタイルですが、硬軟織り混ぜてリスナーを手玉に取るのがうまいですね。普段は囁くような落ち着いたボイスなのに、ギフトが送られると急にテンションが上がって、例えばハートのギフトだと
「ハートありがとう。〇〇のハートにずっきゅん!(ウインク)」
というリアクションを萌え声で返します。なんかバカにされているような、でも可愛いから悔しいというやつです。

REALITYのライバー(VTuber)の例

誰でも始められるという性質上、入れ替わりは激しいかもしれませんが、やはり「こんな感じの人がいる」例として2名挙げてみました。男性ライバーも挙げたかったのですが、唯一見ていた方が最近配信されていなくて、紹介できなくなりました。リンクはTwitterです。

ちま

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「ただの主婦」がキャッチフレーズで、実際洗い物などをしながら配信していることもあります。当初はママキャラを演じていたが、無理していることに気づいて自然体に戻したそうですが、自然体でも癒しボイスで包容力があります。

夜煌ソナ

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9月のルーキーイベントで入賞して「注目のルーキー」のバッジをもらっていました。バッジがついている人は見たくなりますね。企画を考えてリスナーを楽しませようとしますが、「テスト前だから」と試験勉強をしている枠もあり、リスナーが勉強を手伝っていました。初見さんへの対応などがとても丁寧で、若いのにしっかりしてるなと思ってます。

トピアについて

スマホだけで配信できるバーチャルライバーアプリとしてはトピアもあるので、簡単に紹介します。誰でもライバーになれるということで、REALITYに近いですが、特徴はアバターのバリエーションが多いことと、JOYSOUNDのカラオケができることです。かなりがんばっていると思えます。

アバターはアニメ調というよりはファンシーなデザインで、女性ウケする感じでしょう。運営のインタビューによると、利用者の7割が女性で、女子中学生が一番多いそうです。

公認ライバーもいて、この画面写真のレミィ・ニュートンさんはその一人です。公認だけあって安定した配信ですし、初心者リスナーにはいろいろ教えてくれるので、入りやすいと思います。

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Colon: について

バーチャルライバー専用のプラットフォームとして Colon: もありましたが、2019年9月でサービスが終了しました。見た目はIRIAMなどと似ていますが、スマホだけでなくPCのブラウザでも見られるようになっていました。

特徴は、企業やグループと提携し、その提携したVTuberだけが配信するというコンセプトです。upd8やにじさんじなどから大勢が参加者リストに載っていましたが、コンスタントに配信していたメジャーなVTuberは、由宇霧さんや塩天使リエルさんなど一部だったと思えます。その後、方向転換しようとしていましたが、このやり方はあまり上手くいかなかったということでしょう。

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個人的感想

私の感覚で言えば、YouTubeは「面白い番組を見に行く」という楽しみ方ですが、これらのアプリは「声を聴きに行く」感じです。画面をがっつり見る必要は無いし、ずっと聞いていなくてもあまり支障が無いのが良いところで。YouTubeがテレビなら、これらのアプリはラジオかもしれません。

しかし映像も必要で、コメントで会話したりギフトを贈ったりしたときのリアクションが見えることは重要です。対話している感覚も大事なので。ラジオ+ビデオ通話という感じかもしれません。

入室メッセージが出て、ほぼ必ず名前を呼ばれるので、こっそり見たいという方には向いていないかもしれないし、気持ちはわかります。

配信者側から見るとどうでしょうか。気軽にバーチャルライバーができるという点で、REALITYやトピアは優れています。IRIAMはオーディションに受かる必要がありますが、配信環境はやはり手軽です。ゲーム配信などやりたくてもできないので、設定に悩む必要がありません。

YouTubeで人気のチャンネルと比べると、視聴者数は1ケタは少ないですが、だからダメというわけでもなく、例えばIRIAMの9月のランキングを見ると(顔ぶれはイベントの参加状況でかなり変わる)、9位までの人が100万ポイント以上稼いでいます。リスナーがその1ヶ月間に100万円以上投げたということで、人数が多くないからこそ、俺が応援しなきゃという気持ちになるものなんですよね。

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YouTubeのVTuberがスーパーチャットをどれくらい投げられているかは、クフイダさんが集計されていますが、データが取れている中で最新の2019年7月度を見ると、100万円超の収益のあるVTuberは19人でした。母数から見ると、IRIAMはすごいと言えます。しかも始めて数カ月の方でも上位に入ることがあるので、これからVTuberで身を立てようという方にとって、選択肢の一つとなると思えます。(ただし還元率はYouTubeよりはかなり低いようで、YouTubeでも個人か企業所属かで変わってきます)

もちろん、向き不向きはあるでしょうし、「たくさんの人に見てもらいたい」ということが目的なら、やはりYouTubeなどで頑張るほうがよいかもしれません。いろいろ模索している方もいるし、プラットフォーム側も、よりメジャーになるための施策として、大規模なフェスをやったり遊園地でイベントをやったりなどがんばっています。アプリ機能の進化もあるでしょうし、これからどう発展していくのか注目しています。

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