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VTuberイベント「音楽的特異点」は特異点だったか?

特異点とは?

8月11日に、VTuber音楽イベントの「音楽的特異点 vol.0」に行ってきました。

このタイトルは「技術的特異点(シンギュラリティ)」のもじりですよね。「Project Singularity」という表記もあるし。技術的特異点とは、AI(人工知能)が進化して、”AI自身がAIを作れる”ようになった時点のことを言います。今は人間がAIを開発しているので、研究者の数とか、その人の仕事の速さとかに依存していますが、AIがAIを作れるようになれば、そういう限界はないので、あっという間に人間の知性を超えて超知性にまで進化するかもしれない。そうなると、社会や人間のあり方も全く変わってしまうだろうというのがシンギュラリティです。

今回のイベントは、それくらいの変化を音楽にもたらすという意気込みなわけで、相当ハードルを上げていると言えます。実際どうだったか、”設備面”と”イベント内容”に分けて感想を書いてみます。

設備について

イベントのプレスリリースでは、「最新のAR スクリーンを活用し、これま
でにない没入感を演出」とありました。最新のARスクリーンとはどんなもんなのかに興味があったのも、イベントに参加した理由です。

実際に会場に入ると、まずステージにスクリーンがあり、その前にさらに網(ネット or メッシュ)のようなスクリーンが張られていました。この写真で、ロゴが投影されているのが後ろのスクリーンで、前面にうっすらとあるのが網状のスクリーンです。

この網にVTuberが投影されます。半透過なので、後ろ側のスクリーンの映像も見えるため、スクリーンの前にVTuberが立っている立体感が得られるわけです。

こういう半透過のスクリーンとしては、ガラスに特殊フィルムを貼ったものがよく使われます。初音ミクのライブ「マジカルミライ」や、銀河アリスらが出演した1回目の「TUBEOUT! 」などで使われていて、ARライブではおなじみです。でもこういう、網状のものは初めて見ました。

調べてみると「アミッドスクリーン(網戸スクリーン)」というのはありましたが、それは製品というよりはファンメイドのようです。これほど大規模な利用例は見つけられなかったので、「最新のARスクリーン」のゆえんなのでしょう。

実際の体験ですが、良かったですね! 半透過ガラスは表面のテカりが気になることがありますが、網はテカらないので、そこにVTuberがいるような没入感が高いように思います。像の明るさも十分でした。席が前方だったおかげもあり、「銀河アリスちゃんが、ときのそらちゃんがそこにいる!」という感動がありましたね。

後ろのスクリーンは前面からは投影できないので、裏から投影なのかな? あるいは短焦点プロジェクター? 前面に網を張っているせいもあるでしょうけど、後ろのスクリーンの映像は暗めでした。でも明るいと前面の映像が見づらくなるので、これくらいで構わないのでしょう。

この方式のメリットとしては、ガラススクリーンよりも低コストなんじゃないでしょうか。大きなガラスパネルは搬入や設置も大変ですが、これは巻いて運べるし、設置も吊ればいいので簡単そうです。このクオリティのARライブが比較的安価に実現できるのであれば、確かに革新的かもしれません。

スクリーンだけではなく、設備は全体的に素晴らしかったですね。下の写真は開演前ですが、照明の感じがわかると思います。スモークがたかれていて、天井のスポットライトは演出に合わせて動きます。映画館を使ったARライブでは、照明の演出は映像で擬似的に行われますが、リアルな照明はやはり良いですね。

音響もとても良かった。かなりコストがかかっていそうですが、良いものにしたいという気持ちが伝わってきました。

そういえば、運営スタッフの方の多くが、スーツにネクタイというきっちりした格好だったのが印象的でしたね。イベント会社という雰囲気ではなかったけれど、どういうバックグラウンドなのかちょっと興味あります。

イベント内容について

僕が行ったのは2日目ですが、この日は11組のVTuberが出演しました。1日目だけや2日目だけのVTuberもいたようです。すごい出演者の数ですよね。

この中には、実際にリアルタイムに生で出演した方はもちろんいましたが、リアルタイムではない、収録での出演の方もいたはずです。MCほぼ無しで歌だけ歌ったとか、MCと観客の反応がズレてる方とかいたので。

でも、それでいいと僕は思いました。要所でリアルタイムでやる人がいれば、収録の人がいても構わないよなと。それでコストが下げられるだろうし、あまりMCをしないなら体験はそんなに変わらないと思えます。

たくさんの人数を出すことで、新人さんの売り出しはできるし、目玉の人気VTuberの負担は減ります。2曲歌ってMCをするくらいであれば、準備にそれほど時間はかからないので、人気VTuberを呼ぶこともやりやすいでしょう。上手いやり方だなと思いました。

もちろん、リアルタイムのパフォーマンスは欠かせないですけどね。銀河アリスちゃんとか、ときのそらちゃんとか、観客の盛り上げ方も含めて流石で、あの感じはリアルタイムじゃないと出せないでしょう。

音楽的特異点は特異点(シンギュラリティ)になりえるか?

そんなわけで、僕としては大満足なイベントでした。「最新AR」の臨場感が想像以上だったし、出演者は豪華だったし、内容もとても良かった。次回もぜひ行きたいと思います。

VTuberによる、映画館を使った疑似ARのライブも何回か行ってて、それも良いものですが、臨場感という点ではやっぱ本物のARの良さはあるなと再認識しました。疑似ARについては以前に記事を書いています。

では「特異点」という高いハードルは越えられたのでしょうか。それは今回だけでは分からないが、可能性はあるかと。今回の設備やイベント内容を見ると、かなり低コストでやることも可能ではないかと思えます。今回は最初なのでお金がかかってるでしょうけど、あのARスクリーンや、多数のVTuberを非リアルタイムも含めて出演させるやり方は、軌道に乗れば採算が取れるんじゃないかと。家ではできない体験なので、お客さんも呼べるはずです。

そうなると、この形式のライブはどんどん行われるでしょう。演者の負担が少なく、それでいて多くの人に見てもらうことができるし、見る側の満足度も高いので。すると「生身よりもVTuber(バーチャルミュージシャン)のほうが、ARライブもできるから良い」ということになり、「音楽ライブをやるためにバーチャルになる」ことが普通という、そんな時代が来てもおかしくありません。それは確かに、音楽業界にとってシンギュラリティの到来かもしれません。

今回は「Vol.0(ゼロ)」だったのですが、12月に「Vol.1」が行われるということで、さらに完成度の高い特異点の可能性を見せてくれるのでしょうから、楽しみにしています。

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