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VTuberはプリン犬の夢を見るか?・因幡はねると見る夢

今日(5月15日)の昼12時過ぎ、サンリオのキャラクター、ポムポムプリンの公式Twitterが以下のツイートを投下して、TLが大騒ぎになりました。

このポムポムプリンくんがつけている服やアクセサリーは、間違いなくVTuberの因幡はねる(ねるちゃん)のものだからです。普通のサンリオファンは何なのか分からないようでしたが、因幡はねるファンとしては、彼女が熱烈なポムポムプリンファンであることは周知のことなので、驚いたと同時に大喜びしました。当のねるちゃんは13時過ぎに気づき、半分錯乱しながらも歓喜のツイートをしていました。本人も運営も知らず、完全にサプライズだったとか。

僕はそれを受けて切り抜き動画を上げ、「よかったね、ねるちゃん」というコメントを添えたのですが(後述)、その一行の裏にたくさんの思いが、感動がありました。それが何なのかについて書いていこうと思います。

夢叶えたやつ、どれだけおるんやろうか

「明日があるさ THE MOVIE」という映画があります。ダウンタウンの浜田雅功が主演していて、ロケット開発がテーマで面白いと聞いたので見ました。冒頭は主人公が子供のころの回想シーンで、アポロの月面着陸の中継を夢中で見ている様子などがノスタルジックな映像で流れ、そこに「ガキの頃の夢叶えたやつ、どれだけおるんやろうか…」というナレーションがかぶります。このシーンは印象的でした。

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確かに、子供の頃は「宇宙飛行士になる」とか「サッカー選手になる」とか無邪気な夢を抱きますが、そんな夢を叶えることが出来る人はごく一握りでしょう。夢というのは、「叶えることが難しい遠大な願い」といった意味合いが強いと思えます。なお、本来の日本語の「夢」にはそういう「願望」の意味は無く、夜に見る夢の意味だけであり、明治時代に英語の"dream"を翻訳するとき、この意味の訳にも当てたんだとか。

映画では、商社マンの浜田は「日本初の有人宇宙ロケットを個人で作る」という夢に取り憑かれている老科学者に出会い、最初はバカバカしいと思っていたけれど、次第にその老科学者の夢に魅入られ、自分の夢とも重ね合わせて協力するようになります。

初配信で語った「夢」

と、ここで話を戻します。VTuber因幡はねるの初配信は、2018年の6月9日で、もうすぐ1年になります。この最初の配信で彼女は、自分の「夢」を語りました。これはその部分を切り抜いた動画です。

VTuberとして成功し(人気者になり)、大好きなポムポムプリンくんとコラボすることが夢だというものです。いま見ると凄くエモいのですが、当時は最初「そんなことでいいの」と思っていました。夢ってもっと遠大なものじゃないのかなと。

でも少し考えて、確かにこれは容易ではないなと分かりました。まずサンリオのキャラクタは世界中で人気があり、プリンくんはサンリオで人気ベスト3には入りますから、ワールドクラスの人気です。一方でVTuberは、トップクラスの人でさえ、一般的な認知度はまだプリンくんに遠く及ばないでしょう。

また、VTuberでトップクラスになることがそもそも困難です。VTuberは2017年末くらいにブレイクし、ねるちゃんがデビューした2018年6月頃はすでに後発組で、競合が大量に参入しており、その中で頭角を現すのは大変でした。先発組に追いつくのはさらに大変です。

大手のグループだと、新人でもYoutubeのチャンネル登録者が初日に1万人を超えることがありますが、ねるちゃんが所属するグループ「あにまーれ」は後発で実績も無かったので、ねるちゃんが1万人を超えるのには1ヶ月かかりました。そういう難しい環境で、「ポムポムプリンくんとコラボする」というのは、確かに無邪気な「夢」といえるものだったでしょう。

自らのがんばりで地位を築いた1年間

でもねるちゃんはそんな中、1日も休まずに配信するという努力を続け、持ち前のトークや企画力でファンを集め、またつかんだファンを離さずに濃いファン層(通称、因幡組)を形成して、人気を築いていきました。一つのハイライトは、2018年12月1日にBS日テレで放送されたTV番組、「のとく番〜アイは世界を繋ぐ〜」内で発表された「バーチャルYouTuberランキング2018」で、4位を獲得したことでしょう。そのあたりについては別記事に書いていますので、よろしかったら読んでください。なにやらnoteの「編集部のおすすめ」にも選ばれた記事です。

ところで、「明日があるさ THE MOVIE」では、浜田の部署は落ちこぼれ集団なのですが、エリート部署が国家プロジェクトの宇宙開発に関わっていて、そちらと競うことになります。

そこまでの差は無いにしても、VTuberにも環境の違いはあります。大手はスタッフが何人もいて、企画したり動画を編集したりしてくれます。でもねるちゃんを含む多くのVTuberは、運営のバックアップは多少あるにしろ、企画や日々の配信は基本的に個人で行っています。大手は自前のスタジオがあり、3Dで頻繁に配信できますが、ねるちゃんは念願の3Dモデルは作られたものの、3Dでの配信はまだ1回しかできていません。3Dモデル自体のクオリティは非常に高いのでもったいないですが。

それでも、工夫や努力で乗り越えている様子は、応援したくなるものがあります。昨日(5月14日)発表された『週間VTuberランキング 5月14日号』では、全VTuberの動画の中で再生数6位になりました。ゲストが豪華だったというのもありますが、これだけのゲストを呼べるのはねるちゃんの力量であり、内容の評価も非常に高いので、立派な結果と言えます。

プリンくんの布教活動

VTuberとしての地位を確立する一方で、プリンくんの布教活動も熱心に行っていました。単純に好きだからでもあるでしょうが、普段の放送やTwitterで頻繁に話題にするし、特別な番組も作ってプリンくんの魅力を語り、本当に大好きなのが伝わってくるので、因幡組には自然にプリンくんファンが増えていきました。

サンリオピューロランドを紹介するため、自らピューロランドと直接交渉し、取材許可を得て放送をしました。ピューロランドの魅力や楽しみ方がマニアックな視点で語られていて、これを見てピューロランドに行った因幡組は多数いたようです。

いま「サンリオキャラクター大賞 」の投票が行われていて、ねるちゃんは毎日、プリンくんに投票したことをツイートしていますが、因幡組もプリンくんファンになった人は多くいるので、自発的にプリンくんに投票していました。

因幡はねると見る夢

今回、プリンくんが唐突にねるちゃんのコスチュームの絵を掲載したのは、そういった活動を前から見ていたからではないか、と想像しています。ねるちゃんの想いが、パッションが届いたという部分もあるでしょう。そういうのも含めて、感謝と親愛の表現ではないでしょうか。これまでやってきたことが、夢のために実ったわけです。

まだ「会ってコラボする」という夢が叶ったわけではありませんが、大きく前進したことは間違いありません。1年前に夢を語った時は、知名度も後ろ盾もない状態で、プリンくんとの接点も全くありませんでした。そこから、努力と才能でここまで来たのです。

それで僕は、「明日があるさ THE MOVIE」を思い出したのでした。夢を叶える人は少ない。でも、夢って叶うこともあるんだな、と。浜田が老科学者に魅入られたように、夢を叶えようとしてる因幡はねるに、僕たちは魅入られるのです。

この夢を叶えたとしても、それがゴールではないでしょう。僕はVTuberは今後ますます活躍の場が増えていくと信じています。VTuberの行く末とともに、因幡はねるを追いかけていれば、これからも感動を分かち合えることでしょう。まずはよかったね、ねるちゃん。


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