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得意分野だけでは食べられない

 数か月前に旧い知り合いが言っていた。この年齢(50代)になってくると、得意なことを突き詰めるだけでは難しい。周辺分野や、いままでやっていなかったことに対応できるよう、守備範囲を広げていかないと、と。
 わたしには翻訳者の知り合いが多いが、みな生き残りを賭け「翻訳が上手くなるよう勉強して技を磨く」ことに必死だ。翻訳そのものの以外に、ツールの使い方なども学んでいる。
 自分はどうだろうか。校閲者としてはスタートが遅かったので、最初の数年は必死に学んだ。ライティングは20代から自己流でただ書いてきただけだったが、ここ数年はいろいろな講座を受けて、自分の書いたものを見てもらう機会を増やしてきた。英語は日々トレーニングを重ねている。ビジネスに直結する能力については、ずっとスキルアップするよう努めてきたといっていいだろう。
 数年前から絵を描き始めた。この日記のトップも自作だ。以前ほんやくwebzineに寄稿したときに描いた。子どものお絵描き程度だけれど、これが楽しい。また、十数年ぶりに美術館通いも始めた。先月は茨城県近代美術館で、学芸員によるコロー等の風景画鑑賞講座も受けてきた。美術検定を受けた。放送大学で「西洋美術の歴史と理論」の講義も受けている。
 つまり、「書くこと」の反対側にある「描くこと」および美術を学び始めたというわけだ。「得意なことだけでは難しくなってくる」と言った冒頭の友人は、あるスキルを身に着けようと40代も終わり近くになって学校に通った。努力は実を結び、彼はフリーランスから正社員へと転身を果たした。見事だ。
 わたしはというと、美術は現段階で趣味にすぎない。物書きにとって必要な教養ではあるが、そこ止まりだ。だが、ことばを商売にする人が美術とつきあう。その観点ならば自分にできる、自分にしかできないことはある。その準備もはじめた。もしも知り合いでこの記事を読んだ人は、ぜひ、楽しみに待っててほしい。規模は極小だけれど、ひとさまの役に立つちゃんとしたビジネスを数年で立ち上げるから。

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