あった、あった! これかー、ワンシート2万円のプレミアがついているレアものは!! ひょえー!! お宝発見!!
 菱川師宣の「見返り美人」、歌川広重「月と雁」の切手である。日本で発行された切手で最大サイズという。たしかに、切手帳のなかでもひときわ存在感がある。
わたしの「切手帳」には残念ながら1枚ずつしか入っていなかった。ワンシートなら2万円でも、1枚ではよくて2000円くらいのようだ。それでも充分に高価だが、手間を考えると売りたいとは思わない。
子ども時代に兄が記念切手を集めていた。母は発売日になると郵便局に並んで求める。そのとき、わたしの分もついでに1~2枚買っておいてくれた。兄とおそろいで買ってくれた切手帳に大事に入れておいたが、いつしか存在すら忘れていた。
 その切手帳が3年ほど前に出てきた。当時は郵便で請求書を送る得意先も複数存在したし、時々プライベートな手紙も出していたので、「こうやって少しずつ使っていけばいいか」と思っていた。
 しかし、切手を使う機会はどんどん減っている。年賀状は「年賀はがき」で数人に出すだけ。仕事の請求書はすべてpdfをメールに添付して送信。確定申告はまだ紙を郵送しているので、年に一回だけ定形外100g以内の料金として140円、書類の控えを自分宛の返送用封筒に貼る料金120円と、計260円使う。もうひとつの機会としては、美術館に行ったときミュージアムショップでポストカードを買って、自分宛てに送るというのがある。だが、数か月に1回、64円分だけだ。
 もう少し切手帳を見てみよう。「近代洋風建築シリーズ」「近代美術シリーズ」「伝統的工芸品シリーズ」などは、見ているだけでも美しい。岸田劉生の「麗子像」、東郷青児「辻芸人」や藤島武二「黒扇」など、誰もが一度は目にしたことがある有名な作品ばかりだ。
 一番古いのは、「天皇皇后両陛下御訪米記念(1975 昭和50年)」である。天皇の「~記念」はほかにも「天皇陛下御在位六十周年記念(昭和61年)」があった。わたしの切手帳にはないが、おそらく五十周年、四十周年のときも発行されたであろう。
 歴史を振り返るということで、ちょっと懐かしいものもある。「新東京国際空港開港記念(1978 昭和53年)」は、このとき成田空港ができたのか!と改めて思えた。だが、歴史といっても「天正遣欧少年使節400年記念(昭和57年)」というのは、うーん、そんなのあったかなぁという程度の知識しかない。
 さらに「第6回ライオンズ国際大会記念(1978 昭和53年)」「第11回国際電子顕微鏡学会会議記念(昭和60年)」にいたっては、「うーん、それって記念切手にする価値があったのだろうか」という感じだ。昭和50~60年代初頭の切手収集ブームに乗り、記念切手がじゃんじゃん発行されていた証がここにあるということにはなるが。
 全体としてこんな感じ。コレクター垂涎のレアものも(2枚だけとはいえ)あり、ほかは「こういう記念切手もあるのかー」と眺めるだけにすぎないが、おそらく一生使う分はあるだろう。
 そうだ、もしも80歳まで認知症にもならずに生きていたら、その記念として1冊まるごと寄付することにしよう。大した価値ではないとはいえ、切手の寄付というのはまだまだ受けつけているところもある。それに、少なくとも、額面分は実際に使えるのだろうから。

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