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Z世代の自己肯定感の高め方、そして自己ブランディングとは ~インスタの「#バースデープレート」投稿から読みとる、Z世代の価値観の変化

 はじめまして。MERY Z世代研究所の西村です。

 みなさん、Instagramでの「#バースデープレート」投稿の人気ぶりはご存じですか?ハッシュタグ検索では23万投稿もされていることに加え、バースデープレート情報のみに特化したアカウントもあるほどです。
実際に、MERYのInstagramでも「バースデープレート特集」は、たちまち保存数や‘いいね’が歴代最高級に伸びる、反響の大きいネタです。

 恋人や友人の誕生日をサプライズでお祝いするのにぴったりな、バースデープレート。季節やシーンを問わずに、常に一定の需要があることから、人気ぶりはとどまることを知りません。そんな「#バースデープレート」投稿から、Z世代の価値観の変化を捉えてみました。

1. 自分の誕生日より、もっと重要

 Z世代にとって、もはや恋人の誕生日・友人の誕生日は、自分のそれよりもビッグイベントと言えるかもしれません。
お洒落なバースデープレートはないか、センス抜群なホテルはないか、持ち前の高いアンテナをフル活用して、知りたい情報をインスタから探し出します。そして、とっておきの誕生日プランで盛大に相手をお祝いするのです。

 ここで注目したいのは、Z世代は「自分が祝われている様子・プレゼントされたもの」よりも、「相手を祝っている様子・プレゼントしたもの」をインスタに投稿する傾向があるということです。TAKEよりもGIVEを重要視するという、Z世代の新しい価値観の変化が見受けられます。一見、些細な変化に思えますが、ここにはZ世代の根本的な価値観が隠されています。


2. なぜなら、結局は自分もうれしいから

 GIVEを重要視する理由としては、ふたつ挙げられます。
 まず、自分がされたこと・もらったものをストレートに投稿すると、それは図らずとも直接的な自慢になってしまうからです(理由その1)。いわゆる‘胡散臭さ’や‘自慢臭’に敏感なZ世代において、そういった内容の投稿は特に敬遠されがちです。Z世代の自慢は、手を変え品を変え、もっとわかりづらく、もっと複雑に、もっと何気なくなされ、それが今っぽいスタイルなのです。

 次に、相手にしたこと・あげたものによって自己肯定感を高めることができ、それがひいては自己アピールに繋がるからです(理由その2)。こんなに手間やお金をかけてお祝いしたい相手が自分にはいる、尽くしたいと思える相手がいる、そういった交友関係の密度の濃さが、自己アピールポイントに繋がり、さらに自己肯定感を高めることへと繋がります。
「SNSの普及によって、交友関係が希薄になっている」なんて言われることがありますが、実はそうではなく「SNSの普及によって、交友関係が強固になっている」のがZ世代なのかもしれません。

3. Z世代の“自慢”の形はどんどん複雑化

 理由その1の「Z世代の自慢はわかりづらくなっている」という点について、もう少し噛み砕いてみます。

 インスタが普及し始めたばかりのときは、「自分がされたこと・もらったものを載せる」行為自体が、自慢に直結しました。しかし、こなれたインスタの使い方をするようになったZ世代は、自慢に辿りつくまでいくつかのステップを挟みます。

 「インスタで最新のバースデープレート/サプライズに適したホテル/お洒落なプレゼントを頑張って探す」→「相手を盛大にお祝いする」→「自分がしたこと・あげた物をのせる」行為によって、ようやくさり気ない自慢が叶うのです。
 そして、最初の‘探すステップ’において、多くの手間やお金をかけます。なぜなら、そこでいかに感度の高いものを発掘できるかが、相手に喜んでもらうことと同じぐらい、自分のアンテナの高さをアピールすることに繋がるからです。このようにZ世代の自慢は、ゴールまでにいくつかの努力を挟んだ、もっと手の込んだものになっています。

4. GIVEのアピールはもっと一般的なものに

 では、そこまで趣向を凝らして、最終的には何をアピールしたいのか。それはまさに、理由その2に繋がりますが、そこまでしたいと思える相手がいるという交友関係の密度の濃さが挙げられます。
もちろん、自分が何かをしてもらった経験も、嬉しいことには間違いありません。しかしZ世代は特に、自分がしたいように愛情表現をすること、つまり「自分がしたこと・あげたもの」に価値を見出す傾向があるように見受けられます。

 
そのようなTAKEよりもGIVEを重視する傾向は、自分が直接手の届く範囲を超えて、もっと一般的・大々的なものへと様子を変えています。例えば、自分の推しをひたすら愛でる推し活はその最たる例です。もはや‘一人一推し’と言っても過言ではない時代がやってきており、年代を問わずカジュアルに好きなものを好きなように愛でられるようになりました。

 つまりは「好きなように愛情表現をしている自分のことが好きだし、そういう自分をみんなにも見てほしい」という自己肯定感×自己ブランディングの二要素が、Z世代の特徴を考える上で肝なのかもしれません 。

5. Z世代の心に刺さるものを提供するには

ここまで見てきたように、最近のZ世代のSNSの使い方は…
・わかりやすい「自慢」を好まない
・TAKEよりもGIVEをしている自分が好き
・そしてGIVEをしている自分をみんなに見てほしい
という傾向が強まっていて、投稿されているひとつひとつのトレンドはシンプルに見えながらも、その投稿の背景はどんどん複雑化しています。いわば、ナチュラルメイクと同じ。手が凝っていない、シンプルなナチュラルメイクのように見えて、実はとても手間がかかる複雑なメイク。

 そして、企業が提供するサービスやプロダクトに触れることでさらに自分のことを好きになれるか、ここに対するZ世代の嗅覚は鋭いでしょう。単なる視覚の‘映え’にとどまるものは少しずつ好まれなくなっている傾向はあります。それを使うことで自分を大切に扱えているか、それを使っている自分をアピールすることでどう見られるか、一歩二歩と‘意味合い’にまで踏み込んだものが好まれているといえます。

 Z世代の自己肯定感の高め方、そして自己ブランディングのトレンドを追ってみると興味深いです。自分→自分の視線も大事にしたいし、他人→自分の視線も大事にしたい。そんな二兎を追うZ世代の‘本当に欲しいもの’の見極めが、大事になってくるのかもしれません。

PROFILE|プロフィール
元・MERY公認ライター。大学生のときから約4年間、MERYに携わり、インスタグラム運営も行う。
現在は法科大学院に進学。自身もZ世代の一員として、Z世代研究所のインターンに従事している。

MERY Z世代研究所
メディア「MERY」事業における記事や各SNSをはじめ、有料コミュニティ「MERY&」のメンバーなどのリアルなZ世代との接点からインサイトを抽出しクライアント企業さまやメディアに対して研究内容を発信し、企業マーケティングの課題解決に生かしている。

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