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風に吹かれて

毎日が私の手をすり抜け、駆け抜けてってしまう。

天然サウナと化したハウスで蒸されながらぼーっと、色々と、例えばあれがしたいなーだとか、頭に引っ掛かった話のことを自分で反芻してみたりしながら手を動かしていると、いつの間にか五時のサイレンが鳴る。
サウナを出て、深呼吸して、蛇口の水で顔を洗う。ここの井戸から出た水は地上の地獄めいた暑さなんて知らないかのように冷たくて気持ちいい。干からびた体が少し生気を取り戻す。
はあーと声を出して、まだまだ暮れる気配のない、木陰から見える空を見上げる。緑が揺れる。びしょびしょになった体(大げさだと言われるけど、本当に今日みたいな日は服が絞れるほどに汗が出る)にも涼しい風が当たる。

よし、帰ろう、今晩は何を食べようと考えつつ、ハウスに背を向けて車に向かう。エンジンをかけるとエレカシが流れてきた。大声で歌いながらハンドルを握る。

多分、いつもすれ違う近所のおじさんに、あいついっつもなんか歌ってるなって思われている気もするけど、この時間が、仕事終わりの解放感と、窓から入る風になびかれながら歌うのが、しかも今日はエレカシ、止めようとは思わなかった。爽快。


帰っていつも、今日は考えてたことを文章に残そうとは思う。熱々のお風呂に浸かりながら思い返してみる。だけど、断片的にしか出てこない。ウーンと唸りながら振り絞っても、細切れの記憶しか出てこない。どうしてだろうか。私の考え事たちはどこに行ったんだろう。もしかして、私のへたくそなエレカシと一緒に窓から風に乗って飛んでったのか。帰ってきてほしい。

ソファーでまっさらのevernoteを眺めて、数行書いては消して、やっぱ止めて、そのままごろんと寝そべって、だらーっとする。旦那と喋りはじめたり、テレビを見ているともう寝る時間が来る。今日も早かったなあと、少し寂しく思いながら布団に潜り込む。明日はメモでもしておくか。たぶんまとまることはないだろうけど。

今はただ、忙しく過ぎ去る日々に委ねるしかないのかもしれないと思った。生活のどこかで余裕を作れるといいな。また明日も熱帯地獄から手を振り仕事が待っている。今はただ寝るだけ、おやすみなさい。

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