日商簿記範囲外のEX論点【債権・債務④】~建設協力金~

日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。

今回は、債権・債務の論点から「建設協力金」を紹介します。




1.建設協力金

概要

事業用建物等の建設時に、土地所有者(貸主)に対して無利息または低金利で借り入れる建設資金を建設協力金と呼びます。
建物完成後は、預託保証金として扱われます。

建設協力金は、一定期間の猶予が設けられ、返済時には賃料と相殺することとなります。
上記の建設協力金を使用する方式を、リースバック方式(建設協力金方式)と呼んでいます。


仕訳

支払い時の仕訳

長期貸付金   XXX / 現金預金  XXX
長期前払家賃  XXX /

建設協力金を支払った際、その支払った金額ではなく、将来キャッシュ・フローの割引現在価値長期貸付金勘定を計上します。
また、長期貸付金と支払額の差額で、長期前払家賃勘定を計上します。

※問題によっては、最初に複利計算を挟むパターンも存在します。

期末時の仕訳

長期貸付金  XXX / 受取利息  XXX

支払家賃  XXX / 長期前払家賃  XXX

期末時の処理は、建設協力金は、返済金額よりも低い価額で取得しているため、支払額と返済額の差額は償却原価法を適用します。
計算に使われる利率は、割引率となります。

長期前払家賃は、毎期均等額支払家賃に振り替えます。
これは、当該現在価値と支払額の差額は、前払家賃と同様の性質を有していると考えられている為です。

返済時の仕訳

現金預金  XXX / 長期貸付金  XXX

返済時は、問題文の指示に従って長期貸付金を減少させます。

また、金利とともに返済を行う場合は、

現金預金   XXX / 受取利息  XXX
長期貸付金  XXX /

償却原価法の利息法を適用した場合と同様に、長期貸付金を増加させる金額の内、支払額 × 利子率を現金預金として計上し、差額を長期貸付金の増加額として処理する必要があります。


2.例題

(1)建設協力金

以下の資料に基づき、仕訳を示しなさい。
※千円未満の端数は、四捨五入する。

  • A社は、テナントとして入居する予定のビル建設に係る費用30,000千円を、地主であるB社に建設協力金として支払った。

  • 期間:X1年4月1日から10年間

  • 金利:最初の5年間は無利子、その後は利率2%

  • 条件:X7年3月31日から満期日まで、毎年3月末に6,000千円ずつ金利とともに返済する。

  • 割引率:5%

  • その他の条件は考慮しない。

①X1年4月1日の仕訳を示しなさい。

長期貸付金   21,614 / 現金預金  30,000
長期前払家賃  8,386 /

①長期貸付金21,614 = (返済額6,000 + 利息600) × 現価係数0.7462 +
(返済額6,000 +利息480) × 現価係数0.7107 +
(返済額6,000 +利息360) × 現価係数0.6768 +
(返済額6,000 +利息240) × 現価係数0.6446 +
(返済額6,000 +利息120) × 現価係数0.6139
②長期前払家賃8,386 = 支払額30,000 - 長期貸付金21,614

※割引率5%の現価係数は下記のとおりである。

  • 6年目 ⇒ 0.7462

  • 7年目 ⇒ 0.7107

  • 8年目 ⇒ 0.6768

  • 9年目 ⇒ 0.6446

  • 10年目 ⇒ 0.6139

②X2年3月31日の仕訳を示しなさい。

長期貸付金  1,081 / 受取利息  1,081

支払家賃  839 / 長期前払家賃  839

①受取利息432 = 長期貸付金21,614 × 割引率5%
②支払家賃839 = 長期前払家賃8,386 / 10年

③X7年3月31日(返済開始日)の仕訳を示しなさい。

現金預金  6,000 / 長期貸付金  6,000

現金預金   600 / 受取利息  1,739
長期貸付金  1,139 /
支払家賃  839 / 長期前払家賃  839

①現金預金600 = 支払額30,000 × 利率2%
②受取利息1,739 = ③X6年度末時点の長期貸付金27,587 × 割引率5%
③X6年度末時点の長期貸付金27,587 = 長期貸付金21,614 × (1 + 利率5%)^5


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