人民元安の懸念は解消。だが世界的通貨安は進む

中国人民銀行(中銀)による人民元の対ドル基準値設定を受けリスク選好が改善し、人民元が上昇した。またドル指数は小幅高で推移した。
人民元の対ドル基準値(CNY=PBOC)は8日、世界的な金融危機以降初めて1ドル=7元を超える元安水準に設定されたものの、市場予想と比べて元高方向となり、元の下落抑制に向けた当局のシグナルと受け止められた。
7月の中国貿易統計で輸出が市場予想に反して増加し、3月以来の大幅な伸びとなったことも市場心理を押し上げた。

各国中銀は利下げを発表

米中の貿易摩擦が激化する中、世界各国で中銀による利下げの動きが相次いでいる。7日にはニュージーランド、インド、タイが、8日にはフィリピンが利下げを行った。
前出のイッサ氏は「各国中銀がそろってハト派対応を強めれば強めるほど、市場は経済が予想以上に悪化していると考えパニックになりかねない」と述べた。
ロイターは8日、政府高官の話として、ドイツ政府が気候変動関連政策に充てる資金を確保するために赤字国債の発行を検討しており、長らく堅持してきた財政均衡目標を断念し、政策を転換する可能性があると報じた。
これを受けユーロは値上がりする場面も見られたものの、午後に入り下落。イタリアのサルビーニ副首相(同盟党首)が連立与党内の不一致の解消は困難で総選挙のやり直ししか道はないと発言したことが材料となった。

人民元安騒動は一旦落ち着いたが、根本の米中貿易戦争は解決の道筋が見えない。

中国が報復に出ない限りこの落ち着きは続き、9月の米中通商協議に向けて期待が拡がり心理的に改善していくと思われる。

だが、世界的に金利が下げられるマインドが進み、通貨安の争いが始まりつつある。

最もセンシティブな為替に関する問題が大きくならないことを願う。

出典

ロイター 8/9 人民元上昇、リスク選好改善 ドル指数は小幅高=NY市場

ロイター 8/9 NY市場サマリー(8日)