米中が第1段階通商合意を発表、追加関税見送り

米中両政府は13日、「第1段階」の通商合意に至った。
トランプ米大統領は15日に予定していた対中追加関税の発動を見送り、発動猶予と引き換えに中国は米農産物の購入を拡大していくと強調。
さらに「第2段階」の合意に向けた交渉を直ちに開始すると表明した。

15日発動の関税は見送り、署名は来年1月

第1段階合意を受け、中国は15日に予定していた一部の米国製品に対する追加関税の発動を見送った。
合意文書は来年1月の第1週にワシントンで米中の首席交渉官によって署名される見込み。
トランプ氏は13日、ツイッターで「米中は非常に大規模な第1段階協定で合意した。中国は多大な構造的変革の実施や農産物、エネルギー・製造業製品などの大量購入で合意した」と述べた。
米国は1600億ドル相当の中国製品に対する関税発動を見送るとともに、1200億ドル相当の製品に対する関税を従来の15%から7.5%に引き下げる。同時に2500億ドル相当の製品については25%の関税を維持する。
ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は13日、記者団に対し、中国が今後2年で米国の製品・サービスの購入を2000億ドル増やすことで合意したと説明した。貿易戦争が始まる前の中国の2017年の米国からの購入実績額は1300億ドル。
ライトハイザー氏によると、中国は2017年の購入実績額である240億ドルを基準とし、向こう2年間で米国産の農産物を320億ドル追加購入するという。また、中国の購入には特定の対象や目標があるものの、公表すると市場を歪める恐れがあるため、公表はしないとした。

通商合意条件を履行しない場合は追加関税措置

トランプ氏は、中国が購入する米農産物の金額は500億ドル相当に達する公算が大きいと指摘。さらに第2段階の合意に向け残りの関税を交渉のカードに利用する考えを示した。中国は次の交渉を直ちに開始することを望んでおり、自分も同意見だと語った。
米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は、中国が第1段階の通商合意の条件を履行しない場合、米国は関税を含む措置を講じると警告。合意を巡って不和が生じ解決が不可能になれば「何らかの措置が取られる。合意条件を履行させる手段として関税措置が取られる可能性もある」と述べた。

中国も合意発表、購入規模には触れず

中国政府も13日、米国が対中追加関税の段階的な撤回で合意したと発表。第1段階の合意に向け大きく前進したとし、中国内の外資系企業や米国内の中国企業に対する保護が拡大すると表明した。
廖岷財政次官は会見で、両国が第1段階の協定の文言で合意したとした上で「関税の撤回は貿易交渉における中国の懸念の核心部分だ」と強調した。だが、中国が合意した米国からの購入規模には触れなかった。
農業省や中国国家発展改革委員会(NDRC、発改委)の幹部らは中国が米国産の小麦、米、コーンの購入や米国からのエネルギー・医薬品などの輸入を拡大すると明言したが、規模や金額などは明らかにしなかった。

第2段階合意は複数回の段階を経る可能性

ムニューシン米財務長官は14日、米中が「第1段階」の通商合意に至ったことについて、世界経済の成長にとって「非常に良い」と述べた上で、第2段階の合意には複数回の段階を経て至る可能性があるとした。カタールで開かれたドーハフォーラムで語った。

米中両政府は13日、通商協議で「第1段階」の合意に至った。
ムニューシン長官は「第1段階」合意の詳細を記したファクトシートは双方による事実と文言のチェックが終わった後、14日遅くか15日に明らかになると述べた。
長官は「『第1段階』の合意が来年1月に完全に履行されることを期待する」とし、「最も重要なのは、履行可能な『第1段階』合意の確実な履行だ。その後に、『第2段階』合意の交渉を始める」と強調した。

その上で、「『第2段階』には重要な課題が残っている」とし、「第2段階」の中でも、おそらくはA、B、Cとさらに段階が分かれるとの見方を示した。
通商合意によってトランプ米大統領の再選の可能性は高まるかと問われると、長官は「大統領は何が起ころうと再選するだろう。大統領は素晴らしい経済を築くとともに、国家の安全保障に非常に力を入れているからだ」と語った。

また、米政府が多くの国に幅広く、定期的に制裁を課すことで、世界の準備通貨としてのドルの長期的な地位が損なわれる可能性について問われると、制裁は軍事衝突の代替手段としてしばしば用いられると説明。「だが、われわれが制裁について注意深くしていなければ、人々は他の通貨を使い始めるだろう」とも述べた。

統括

無事に第1段階合意に達し、まずは一安心というところ。このあと市場はどのように動くか。
懸念材料の米中通商協議と英国EU離脱は良い結果となり、悪材料は現状出尽くした。
利益確定させる動きと、次への期待どちらが勝つかに注目である。

一安心と言っても、まだ安全圏でないと考える。
12/15追加関税も見送っただけで、中止ではない。
第2段階合意に向けて、また圧力と報復が繰り返されるだろう。
米中貿易戦争はまだ終わった訳ではない。

出典

ロイター 12/15 米中が「第1段階」通商合意、関税発動猶予 米農産物購入拡大へ

ロイター 12/15 米中の「第2段階」通商合意、複数回に分割も=米財務長官