FOMC今年3回目の利下げを発表

米連邦準備理事会(FRB)は29─30日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50─1.75%に25ベーシスポイント(bp)引き下げることを8対2で決定した。

3回目の米利下げ

利下げは予想通りで、前回9月に続き今年3回目。貿易戦争により米経済がリセッション(景気後退)に陥るのを防ぐ。ただFRBは、利下げを今後休止する可能性があることを示唆した。
FRBは今回のFOMC声明から、景気拡大を維持するために「適切に行動する」との文言を削除。この文言は将来的な利下げを示すものと解釈されていた。今回の声明では代わりに、「適切な道筋を見極めるに当たり、経済の見通しについて今後もたらされる情報の意味合いを引き続き注意深く監視する」とし、よりあいまいな表現にとどめた。

米経済の現状については、労働市場は「力強く推移し」、経済活動は「緩やかなペースで拡大している」とし、前回の声明をほぼ踏襲。利下げの理由については「経済見通しに対する世界動向の影響や弱いインフレ圧力を考慮した」とし、同様に前回の声明を踏襲した。

企業投資と輸出については、弱い状態が続いたとの見方を示した。
パウエルFRB議長は記者会見で「金融政策は良い状況にある」と指摘。「経済に関する今後の情報がわれわれの見通しと広範囲にわたって一致し続ける限り、金融政策の現在のスタンスは依然適切である可能性が高い」と述べた。

また前回のFOMC以降、英国が合意のないまま欧州連合(EU)を離脱する観測や世界的な貿易に関連するリスクは「前向きな方向」に進んでいるとしたほか、米経済は引き続き底堅いと言及。今年実施された利下げの緩和効果が引き続き経済に波及しており、追加利下げには「見通しの再評価」が必要だとした。
今回の決定ではカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁とボストン地区連銀のローゼングレン総裁が反対。両総裁は今年これまでの利下げにも反対票を投じている。
一方、前回のFOMCで50ベーシスポイントの利下げを主張して反対票を投じた米セントルイス地区連銀のブラード総裁は今回のFOMCで賛成に回り、FRB内部での利下げ圧力の低下が示唆された。
デレゲート・アドバイザーズの投資調査部門責任、ジム・パワーズ氏は今回のFOMCについて、「適切に行動するとの文言を削除したのは重要だ。市場では利下げ休止を意味していると受け止められている。これは想定されていたことで、全般的にプラス要因となる」と述べた。

米GDPは予想を上回るも低水準

米商務省が30日発表した第3・四半期の実質国内総生産(GDP)の速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比1.9%増と、市場予想の1.6%増を上回った。設備投資が減った一方で、個人消費が持ちこたえたほか輸出がプラスに転じた。住宅建設が7四半期ぶりに持ち直したことも押上げ要因だった。景気後退懸念が一段と和らぐ可能性がある。

ただ、米連邦準備理事会(FRB)が追加利下げを止める材料とはならないとみられる。貿易摩擦や世界経済の減速、英国の欧州連合(EU)離脱を背景に、11年目に入った過去最長期間続く米国の景気拡大が危機に直面しているためだ。
米中貿易摩擦によって景況感が悪化し、設備投資は2四半期連続で減少した。昨年導入された1兆5000億ドル規模の減税政策の効果が薄れていることも経済成長を抑制している。
FRBはこの日、2日間の政策決定会合を終える。会合では今年3回目の利下げを決めるとみられている。FRBは7月に2008年以来初めて利下げに踏み切った後、9月にも金利を引き下げた。
ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)のスン・ウォン・ソン教授は「景気は減速しつつある」とし、「企業の慎重姿勢が継続すれば雇用は減少する。賃金の伸びの鈍化で最終的には消費支出と経済成長に影響が及ぶ」と述べた。

MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は、「貿易戦争を巡る先行き不透明感に起因する向かい風で米経済はなお苦境にさらされている」とし、「奇跡的に成長率が第4・四半期に4.0%に跳ね上がったとしても、今年の成長率は2.8%を超えることはない」と語った。
第2・四半期GDPは年率で2.0%増だった。エコノミストは、インフレを引き起こさずに経済が長期間伸び続けられる成長率を1.7―2.0%と試算している。
第3・四半期は市場予想を上回ったものの、通年ではトランプ政権が掲げる19年の成長率目標である3.0%に届かないとみられる。18年は2.9%増だった。

トランプ米大統領は今月初め、10月に予定していた中国に対する制裁関税の引き上げを見送ることを決め、米中貿易摩擦は一時休戦状態にある。ただエコノミストは、これまでの関税が撤回されない限り、リスクは残ると指摘。トランプ政権の当局者は29日、米中通商協議を巡る「第1段階」の合意文書署名が、チリで来月開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に間に合わない可能性が出てきたと話した。
米経済の3分の2以上を占める個人消費は2.9%増と、前期の4.6%増からは減速したものの、健全な水準を保った。前期は17年第4・四半期以来の大幅な伸びだった。
失業率は50年近くぶりの低水準にあり、個人消費を押し上げている。ただ一部のエコノミストは、9月の小売売上高が7カ月ぶりに減少したことから、個人消費が今後も底堅さを保つかどうかを疑問視し始めている。消費者信頼感も低下しているほか、賃金の伸びは失速している。
設備投資は3.0%減と、3年半超ぶりの大幅な落ち込みだった。前期は1.0%減少していた。機器のほか、ガスや石油の立坑・油井を含む住宅以外のインフラ投資が軟調だった。設備投資の低迷につながった貿易摩擦や原油安を反映した。
航空機大手ボーイング(BA.N)の問題も設備投資の打撃となっている。先週発表されたボーイングの決算は、最も販売が好調だった737MAX機が運航停止となったことで利益が53%減少した。737MAXはインドネシアとエチオピアで墜落事故を起こした後、3月以降運航停止となっている。

総括

NYダウ平均は最高値に近づいているが、米経済指標は良い数字ではない。

米中貿易戦争が休戦状態になりつつあるが、追加した関税はまだ生きているため、ジリジリと世界経済を苦しめて行くことになるだろう。

相場の格言に
「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」
というものがある。

今どこにいるのか、冷静に判断する必要がある。

出典

ロイター 10/31 米FRBが0.25%利下げ 「適切に行動」削除、緩和休止示唆

ロイター 10/31 米GDP速報値、7─9月期1.9%増に小幅減速 予想は上回る