米個人消費が低迷、広がる米中貿易戦争の影響

米国株式市場は小幅に反落して取引を終えた。米企業の第3・四半期決算は全体的に堅調だったが、低調な米経済指標と地政学的な緊張感が重しとなった。

米個人消費が低迷、米中通商協議の合意のも不透明

インバーネス・カウンセルの首席投資ストラテジスト、ティム・グリスキー氏は、小売売上高について「経済の消費者側でストレスの兆候が示されたはおそらく初めてだろう」とし、「個人消費は米経済の救い手とされてきただけに、やや衝撃的だった」と述べた。
米中貿易摩擦を巡っては、前日に米議会下院が香港の抗議デモを支援する法案や決議案を可決したことで不透明感が高まった。
また、トランプ米大統領は16日、先週発表した中国との「第1段階」の通商合意の書面化に向けた作業が行われているとし、チリで来月開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で中国の習近平国家主席と会談するまでに署名する公算は小さいと述べた。
グリスキー氏は「市場がネガティブな出来事に反応しないのは驚きだ。その一部は月末に米連邦準備理事会(FRB)が利下げする観測や企業決算が予想外に好調であるためだ」と述べた。

FRB、米経済は「わずかから緩やかに」拡大

米連邦準備理事会(FRB)は16日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済は9月から10月上旬にかけて「わずかから緩やかに」拡大したとの認識を示した。ただ多くの企業から先行きについて低調な見方が示されたとも指摘。トランプ米政権の通商政策が米経済見通しに引き続き影響を及ぼしている可能性があることが示唆された。
このほかベージュブックは、物価上昇のペースが緩やかにとどまったとした。
ベージュブックは「多くの企業は景気拡大が継続するとの見方を示したが、向こう6─12カ月の成長見通しは引き下げた」と指摘。一部地区で通商を巡る緊張の高まりと世界的な成長減速が経済活動の重しになっているとの指摘があったとし、例として、ボストン地区で通商政策を巡る先行き不透明感から半導体メーカーが新工場の建設を延期したとの報告があったことを挙げた。また、ある供給業者は設備投資について、当初の5%増から最大25%削減に計画を変更したと報告したという。
15カ月続く米中貿易摩擦は米経済の抑制要因となっている。製造業活動を示す指数は9月に10年ぶりの水準に低下。関税を巡る先行き不透明感から企業は投資判断を先送りしており、設備投資が勢いをなくしている。
朝方発表された米小売売上高は7カ月ぶりに落ち込んだ。製造業の弱含みがより広範な経済に波及していることを示唆した。
トランプ米大統領は11日、中国との第1段階の貿易合意の概要を発表し、予定していた追加関税を先送りした。ただ両国の当局者は合意までにはまだ協議が必要だと言う。

ベージュブックによると、「いくつかの地区は、製造業が軟調な受注を背景に人員を削減したと報告した」。また、小売業者と製造業者双方にとって「新たに制裁対象になったモノを中心に」原価が上がっていると指摘した。
小売売り上げの報告はまちまちの内容だった。一方で家計支出は総じて底堅さを保った。
FRBは今年、2回利下げを実施。それまでは3年間、定期的に利上げしてきた。パウエルFRB議長は利下げについて、過去最長期間続く景気拡大を持続させるため、世界経済の減速や貿易摩擦、緩やかな物価による景気減速に先手を打つ「予防的利下げ」と説明した。
国際通貨基金(IMF)は15日、貿易摩擦によって2019年の世界経済が08―09年の金融危機以来の弱い伸びにとどまると警告した。
ベージュブックはまた、労働市場は総じて引き締まった状態が保たれているとの報告に言及。適切な人材が見つかりにくい状況が続く中で雇用は小幅に伸びた。

CMEグループのフェドウォッチによると、投資家はFRBが今月25ベーシスポイント(bp)の利下げを行うとみている。
今回のベージュブックはクリーブランド地区連銀が10月7日までに入手した情報に基づき作成した。

総括

経済指標への影響は、最後に個人消費に及ぶと言われている。
米中貿易戦争の影響は、ついにここまで到達した。

世界経済の行方は大きく2つあると想定している。

①米中通商協議が進展され、世界経済が上向く
②米中通商協議が進展せず、または進展が遅いため、世界経済後退を招く

ポイントは第一段階の合意を署名されるかどうかである。
残る議論が何なのかはわからないが、米中首脳会談が実現すれば署名がなされるだろう。

それまで経済指標が持つかどうか。
現象はFRBの利下げ期待がまた下支えとなっている。

出典

ロイター 10/17 米株は小幅反落、低調な米指標が重し 決算堅調

ロイター 10/17 UPDATE 1-米経済は「わずかから緩やかに」拡大、通商問題が重し=地区連銀報告