ダウ800ドル安。逆イールド現象による世界経済への失望

米国株式市場は大幅安。ダウ工業株30種の下げ幅は2018年10月以降で最大だった。米国債の長短金利が12年ぶりに一時逆転したことを受け、景気後退懸念が高まった。

2年債利回りは一時、10年債利回りを上回る

2年債利回りは一時、10年債利回りを1.7ベーシスポイント(bp)上回った。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフマクロストラテジスト、ティム・グラフ氏は「米利回り曲線は歴史的に景気後退のシグナルと考えられるのが常だ。世界的に不安定感が増している」と述べた。
弱い経済指標、インフレ、世界的な貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)離脱などのリスク要因を受け、世界成長への懸念が拡大。
この結果、中銀による利下げ観測が市場で広がり、国債利回りが低下している。

また、リフィニティブのデータによると、英国債市場でも2年債と10年債の利回りが2008年8月以来初めて逆転した。

原因はやはり米中貿易戦争

市場動揺の起点は米中の対立だ。1日にトランプ米大統領が中国への追加関税を表明して以降、世界経済の減速懸念が一段と強まり、金利低下が加速。米政府は13日、米景気への配慮から制裁関税の一部品目の発動を先送りしたが、中国への圧力は弱めていない。世界の貿易はすでに鈍っており、企業の景況感も悪化している。
14日発表の4~6月期のドイツの国内総生産(GDP)は前期比0.1%減と、3四半期ぶりのマイナス成長に落ち込んだ。米中摩擦のあおりで自動車など製造業の輸出が落ち込んだ。英国も輸出や設備投資が鈍く、4~6月は6年半ぶりにマイナス成長となった。7月以降も米中対立の激化や金融市場の動揺など経済環境は改善していない。景気後退の一般的な定義である2四半期連続のマイナス成長も現実味を帯びる。
中国でも14日発表の7月の工業生産が約10年半ぶりの低い伸びとなり、小売売上高も鈍った。中国や独英は米製品の主要な買い手でもありだけにこれらの国々の景気が鈍れば、米景気に跳ね返るおそれがある。

それでも不調な通商協議

米政府が対中関税措置「第4弾」の特定品目発動を延期したことについて、米高官は14日、中国が延期発表後も譲歩する姿勢を示していないことを明らかにした。ただ、貿易戦争の解決に向けた協議は継続され、市場は忍耐強く見守る必要があるとの考えを示した。

トランプ政権は前日、9月1日に発動予定の中国製品に対する10%の追加関税のうち、ノートパソコンや携帯電話など一部製品への発動を12月15日に延期することを決定。ロス商務長官はCNBCのインタビューに対し、対中関税第4弾発動の一部延期は「見返りではない」とし、中国側から譲歩は一切ないと語った。
その上で、米中通商交渉の現在の状況を見極めることは時期尚早とし、米中の交渉団による電話協議は予定されているものの、次回の直接会談の日程は決まっていないと指摘。「正式発表があるまで、さらに双方が合意するまで、交渉がどの段階にあるかを話すことは時期尚早の感がある」と語った。中国が9月に直接会談を持つことにコミットしているかとの質問に対しては「日程は設定されていないはずだ」と応じた。

このほか、ホワイトハウスのナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)はフォックス・ビジネス・ネットワークのインタビューに対し、関税措置の一部発動延期は、米企業への痛手を和らげるためだったと説明。発動延期に対する中国による譲歩を期待することは「完全に誤っている」と述べた。

総括

景気とは、好不が循環していくもの。
そしてそれは自然に起こるものではなく、人が起こした一つの行動から始まる。

今回の騒動の発端は、米国による中国の追加関税第4段である。

逆イールド現象が景気後退させるのではなく、後退するから逆イールドになる。
更に言うと、逆イールドは投資家の資金移動の結果で、経済とは直接関係ない。

米中貿易戦争は世界大戦クラスの影響を与えている。

上述の通り、米中通商協議の出口は見えず、「耐える」ことを要請されている。

果たして世界は「耐える」ことができるか。
また、「耐える」ことができずに反発してしまうことはないのか。

歴史の転換期として注視したい。

出展

ロイター 8/15 ダウ800ドル安、米長短金利逆転で景気後退懸念

ロイター 8/15 米英で長短金利が逆転、景気後退懸念高まる

ロイター 8/15 中国経済指標、7月は低迷が顕著 鉱工業生産は17年ぶりの低い伸び

ロイター 8/15 対中関税延期は「見返りでない」、中国の譲歩見られず=米政府高官