米中通商協議10月初旬に開催。緊張緩和の期待が拡がる

米国株式市場は大幅に上昇して取引を終えた 。米中両国が来月、閣僚級の通商交渉を開催することで合意したことを受け、通商面での緊張が緩和するとの期待が高まった。
堅調な経済指標も国内経済の鈍化懸念の後退につながった。

米中通商協議10月初旬に開催

米中両国は5日、閣僚級の通商交渉を10月初旬にワシントンで開催することで合意した。双方の閣僚が電話協議の末、一致したという。協議の詳しい内容は不明。米国市場ではこの日、株価(.DJI)が大幅に値上がりしたものの、市場関係者らは通商協議の行方に神経をとがらせており、今後も振れの大きい相場展開が予想される。

中国商務省がウェブサイトに掲載した声明によると、中国の劉鶴副首相はこの日、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、ムニューシン米財務長官と電話協議を実施。中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁も協議に参加した。10月の会議に向け両国の通商担当者らが9月半ばに準備協議を行うほか、双方が良好な環境づくりに取り組むことで合意した。

商務省の高峰報道官は「両国の閣僚級電話協議は非常に良かった。10月初旬の会議で大きな進展が得られるよう尽力する」とした上で、中国側は貿易戦争の拡大に反対すると強調した。
USTRの報道官も声明を出し、ライトハイザー代表とムニューシン長官が劉副首相との電話協議で「数週間以内に」ワシントンで閣僚級通商協議を実施することで合意したと発表。閣僚級協議に先立ち「意味ある進展に向けた地ならしのため、9月半ばに次官級会合を開催する」と明らかにした。

トランプ米大統領は3日、中国との通商協議は良好に進展しているが、交渉が自身の2期目まで持ち越しとなれば、交渉は一層困難になると強調し、中国に早期妥結を迫った。

米非製造業総合指数は好調

5日に発表された一連の米経済指標で、8月は非製造業部門の活動が活性化し、民間部門の雇用増のペースも加速していたことが分かった。
通商を巡る緊張の高まりで金融市場ではリセッション(景気後退)入りの懸念が出ているが、米経済が緩やかなペースで拡大し続けたことが示唆された。

米供給管理協会(ISM)が5日発表した8月の非製造業総合指数(NMI)は56.4と、2016年8月以来の低水準だった7月の53.7から上昇した。通商面での懸念がくすぶる中、新規受注が2月以来の高水準となった。
ロイターがまとめたアナリスト予想は54.0だった。指数は50が判断の分かれ目となる。
内訳では新規受注指数が60.3と前月の54.1から上昇。
一方、雇用指数は53.1と前月の56.2から低下し、17年3月以来の低水準だった。
ISMは「関税措置のほか、地政学的な懸念は払拭されていない」としながらも、「企業は事業環境についておおむね前向き」とした。
ISMが3日に発表した8月の製造業景気指数は49.1と、前月の51.2から低下し、2016年8月以来初めて景気拡大・縮小の節目となる50を割り込んだ。米中貿易摩擦が企業業況感の重しとなる中、内訳の新規受注や雇用が悪化し、全体が圧迫された。
この日に発表された指標は堅調だったものの、通商問題で企業信頼感が損なわれる中、米連邦準備理事会(FRB)は17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決定するとの見方が大勢となっている。

MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「通商問題を巡る先行き不透明性が極めて高いことで一部で企業信頼感が悪化した。ただ企業はこれまでと同様、従業員の解雇には踏み切っておらず、むしろ雇用を増加させている」と指摘。「リセッション下では通常こうしたことは見られない」と述べた。
雇用関連の指標では、企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスがこの日発表した8月の全米雇用報告は、民間部門雇用者数が19万5000人増と、ロイターがまとめたエコノミスト予想の14万9000人増を上回った。
エコノミストの予想レンジは11万─17万5000人増。7月分は14万2000人増と、当初の15万6000人増から下方修正された。
このほか労働省発表の8月31日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比1000件増の21万7000件と、小幅な増加にとどまった。景況感に打撃を与え製造業の重しとなっている貿易摩擦が労働市場に大きな影響となっていないことを示唆した。市場予想は21万5000件だった。
6日には労働省が8月の雇用統計を発表。ロイターがエコノミストを対象に実施した調査では、非農業部門の雇用者数は前月比15万8000人増、失業率は3.7%との予想が示されている。

このほか労働省が発表した第2・四半期の非農業部門の労働生産性(改定値)は年率換算で前期比2.3%上昇し、第1・四半期の3.5%上昇から鈍化した。速報値から改定はなかった。市場予想は2.2%上昇だった。
第2・四半期は製造業の生産性が2.2%低下し、全体を抑制。2017年第3・四半期以来の大幅な落ち込みとなった。速報値は1.6%低下だった。第1・四半期は1.2%上昇していた。

総括

8月の株価下落要因である米中貿易戦争の激化とリセッションの懸念はこれで幾分か収まった。

株価は上昇に転じると思われるが、まだ期待だけに留まっているため、ちょっとしたことで急激に下落しては戻す、といった不安定な状態が続くだろう。

安定するのは米中通商協議が良い結果、すなわち延期した追加関税の中止となることであるが、次回の会がどういう論点となるかはわからない。

また、9月末にFOMCによる金利政策の発表すなわち利下げの有無、10月は日本の消費税増税、英国のEU離脱が控えており、まだまだ安心とはいかない。

歴史的経済ショックは秋に起こりやすいので、アノマリー的にも注意したい。

出展

ロイター 9/6 米国株式市場=大幅高、米中貿易摩擦を巡る懸念後退で

ロイター 9/6 米中通商交渉、10月初旬に再開 中国「大きな進展に向け尽力」

ロイター 9/6 米非製造業好調、雇用増も加速 緩やかな景気拡大を示唆