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メ酒'23所感 #2(イタリアンピルスナーの衝撃)


・寄 / Italian Pilsner
-Hobo Brewing(-)

川村洋平氏が行うファントムブルワリー''Hobo''。
23年8月には福岡にボトルショップが誕生し、私も足繁く通っている。
数々のアーティストや飲食店ともコラボ商品、遊び心のあるラベルと商品展開が魅力だが、この''寄''は頭一つ飛び抜けている。
東京の飲食店''寄''のオープンに際して制作した一本。透き通る黄金色の液体に、微かにハーバルな青い香りと、なんといっても上品なホップの香り。洗練された美しい味わいと下に沈むような、趣深い香り。こんなにも上品で美味いビールがあったのかと唸った逸品だ。



・翔空酔いどれメロン Alcoholic Muskmelon
-【翔空】LAGOON BREWERY(新潟県新潟市北区)

田中洋介氏が新潟の今代司酒造の代表を退き、新たな醸造所を立ち上げたのは2021年。クラフトサケ黎明の時期であり、この時期にいま最前線で活躍するクラフトサケのブルワリーが多く立ち上がっている。今作品は千葉県の浜田屋酒店とのコラボで、田中洋介氏は浜田屋酒店がある大網白里市の出身とのこと。
ラグーンブルワリーとしては初の果実系のクラフトサケだが、某角打ちビール屋で開栓済みのモノを飲んだところ、思った以上の感動は得られなかった。先日発売されたばかりの鳳凰美田 メロン青玉の甘さとメロンの凝縮感を覚えていたからか、ひどくドライに感じた。ドロドロとした酒質に瓜感と酒粕、チーズや醪などの感じも相まって私の最も苦手などぶろくの風味であった。開栓日から少し経っていたのだろうか。クラフトサケには心して近づかねば。


・稲とイチジク 試桶シリーズ
-稲とアガベ(秋田県男鹿市)

まさにクラフトサケ最前線で躍動する、稲とアガベ。昨年12月より試桶シリーズと題しブドウや、日本茶ミードなど幅広く展開する。秋田豪雨災害のチャリティとして抽選販売しか行ってこなかった最新の試桶シリーズを一般販売。それがこの、''稲とイチジク''だ。そしてこれはイチジクそのものではなく、佐藤勘六商店が作るイチジクの甘露煮の''露''を使用したものである。若干黄色味がかった黄金色に、スモーキーでとろみのある甘み。梨のフレッシュ感がつよく、酸味も十分にある。かなりの重たさを感じる酒質であり、これまた燗が似合いそうである
イチジクとの食べ合わせをしたが、本物のイチジクには敵いそうもない味わいである。

・旭興 初秋の純米吟醸(R4BY)
-渡邉酒造(栃木県大田原市)

日本酒界屈指の面白蔵、旭興・渡邉酒造。旭興は赤米・磨き9割9分・樫樽熟成のROSSOや貴醸酒 百を15回再仕込みした貴醸酒 千など変態スペック日本酒を世に送り出している。今作は見た目こそ、普通の純米吟醸だがそのスペックは相変わらず驚きだ。6種の酒米と異なる磨きの10のタンクの原酒をブレンド(詳細は下記)。
この多種のブレンドでまとまりのある味わいにできることも驚きだが、何よりもその味わいである。
香り高く、青く清涼感のある香り。鳳凰美田や鍋島に代表されるカプ系のものと比べてもかなり香り高い。
飲み口は繊細で線は細いが膨らみがあり、しっとりとした甘みとあと切れの良さを備える。テクスチャに若干のとろみがあり、50度前後で燗つけると、酸味のトゲが丸くなり、甘味が増し柔らかくまろやかになる。勿論多層的な味わいは感じられるが、何よりも渾然一体となった完成度には凄みを感じる。ウィスキーの蒸留所のようにブレンダーがいるのだろうか。
何よりも商品案内所に付記されていた、「初秋の純米吟醸が余れば、再ブレンドし''晩秋の純米吟醸を作る」という文章。本当にものすごい蔵である。

原料米
山田錦 精米30% 2.3%
山田錦 精米48% 11.8%
山田錦 精米50% 1.3%
夢ささら 精米40% 18.2%
夢ささら 精米50% 9.2%
夢ささら 精米55% 11.2%
とちぎ酒14 精米30% 20.0%
雄町 精米50% 3.2%
美山錦 精米50% 2.8%
愛山 精米40% 20.0%

・栗黒
-ひでじビール(宮崎県延岡市)

クラフトビールブーム第三波が来ている昨今、中堅ブルワリーの安定感は素晴らしい。デザイン性や話題性に媚び売らず、定番商品に磨きをかけている。
栗黒は宮崎県産の栗ペーストを用いたスタウト。
焦がした大麦の香ばしい香りと、醤油やカラメルのような色 。
コーヒーやマロングラッセの甘く香ばしい香りと味わい。
チョコレートのような深いニュアンスもあり、ビールのガス感と調和している。
デザートにもってこいのハイアルコールスタウトである。


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