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メ酒'23所感 #6(若波本醸造・酉与右衛門 秋桜 他3本)


・若波 本醸造
-若波酒造(福岡県大川市)

私が福岡で最も好きな酒造、若波酒造。上品な果実味、透明感、優しい味わいは唯一無二である。2023年の初め純米吟醸 糸島山田錦 生酒を飲んだ時に、一つ若波の求める酒の像がわかった気がした。定番の純米酒、7/3にでた東条山田なども追いかけて飲んだが、どれを飲んでもおいしく今年の若波は極まっている。
こちらの本醸造は若波・蜻蛉特約店でもみかけず、みかけたら即買おうと狙っていらモノであるがなんと近所の酒屋に置いていた。
ラベルを刷新してのリリースらしいが、720ml 1200円台とかなりリーズナブルである。
若干のガス感に、青りんご・ハーバルな青い香り。丸みを帯びた旨味と軽快な酸味。純米系統の酒と比べると重心が低くしみわたる味わいだ。余韻は少し長く、軽快ではあるが酒質的には重たさも感じる。青い苦味も後味を締めてくれて心地よい。エスニックな料理への親和性を非常に感じた。一升瓶で置いておきたい一本だ。


・よこやま 純米吟醸 SILVER ひやおろし(BY)
-重家酒造(長崎県壱岐市)

10/13 よこやま ひやおろし

近年長崎は日本酒蔵の躍進凄まじく、六十餘洲(今里酒造)福田(福田酒造)などの老舗蔵に合わせ、若き蔵元たちが率いる気鋭の蔵も出てきている。そしてよく、飛鸞(森酒造場)と合わせて語られるのがよこやま(重家酒造)であろう。1990年以来日本酒作りを断念し、焼酎造りのみであった重家酒造。2018年に日本酒蔵の再建・復活を遂げた。
よこやま silver 1814以来の二度目のよこやまであるが、このひやおろしは''ゆるい''印象を受けた。甘味に厚みはあるもののまとまりがなく、だれている。酸味もほどほどに、もうすこし寝かせてもよかったのではないかという熟成感である。silver 1814でも相容れなかったが今回も決裂に終わった。

参考
・SAKE TIMES-長崎・壱岐島で28年ぶりに日本酒造りが復活!新銘柄で再出発を果たした「横山五十」の経緯をたどる


・酉与右衛門 純米吟醸 秋桜(22BY)
-川村酒造(岩手県花巻市)

日本三代杜氏集団・南部杜氏のど真ん中、花巻市石鳥谷。南部杜氏伝承館もあるこの地で昨年100周年を迎えたのが酉与右衛門を醸す川村酒造。
イメージは、''骨太''。特に定番の山田錦や自社田の美山錦などは、山塊のような旨みと凄まじいキレだ。
今作''秋桜''は酉与右衛門の夏酒、岩手県産吟ぎんがで仕込んだ、''夏ぎんが''と同じタンクの原酒を加水・火入れして寝かせたのではないかと思っている(恐らく)。
じんわり香るお米と酸味。飲み口の骨太な印象はほどほどに、線は優しく細く涼やか。しかし、余韻は長めに、秋風のような柔らかさである。
ここまで銘柄名と酒質がマッチしているお酒もそうないのではないだろうか。

・参考
全量純米蔵を目指す会(https://www.zenryojunmaikura.jp/kura/info/3)


・山本 ピュアブラック(23BY)
-山本酒造(秋田県山本郡)

10/18 山本 ピュアブラック

花の香酒造の帰りにふと寄った酒屋で手に取った「山本 ピュアブラック」なぜ南の方の酒屋で秋田の酒を買ったのかわからないが、福岡市ではあまり見かけない銘柄だ。穏やかなガス感に、軽い酸味。スパッと切れる酸味である。爽やかなキレと、微かな苦味。余韻のほのか甘みが心地よく、お手本のような食中酒である。HPに掲載されている、テイスティングコメントからなんとなくカジュアルな酒質をイメージしていたが、むしろ王道で硬派しかし間口は広いお酒のようだ。好みど真ん中というわけではないが、寄り添ってくれる親しみやすさがある。他の銘柄も楽しみな一本だ。余談だが、この硬めの酒質から開栓2日目以降も楽しめるお酒だと思っていたが、予想は外れて早飲み推奨であった。



・寒菊 剣愛山50-Chronicle- [純米大吟醸/剣愛山50]無濾過一度火入原酒
-寒菊銘醸(千葉県山武市)

10/22 

徳島県美馬市で栽培される''剣愛山''。徳島と言えば燗酒に向く酒米、阿波山田錦の産地である。信頼ある場所での新しき酒米に心躍った私は、一も二もなく購入に至った。
寒菊を飲むのは二度目で、前回の所感#4でも記載した通り非常に舌に合わなかった。しかし一本飲んで決してしまうのは尚早であり、同酒蔵の違う銘柄が心を掴むこともある。
いざ飲んだ今作は、いろいろな意味で予想とは異なった。
ほんのりとガス感を含む、さらりとしたテクスチャ。硬く突っ張った酸味に苦味が目立つ。シャープとも感じられる後味、余韻は短い。
つまるところ、従来の寒菊の味わいからは大きく舵をきった味わいであった。べたっとした寒菊の甘味には辟易こそすれどそれが持ち味であったであろうに、あろうことか他の酒造の真似事のごとき酒質とは。言うまでもなくそういった味わいを持ち味としている酒には遠く及ばないクオリティである。酒米の特徴柄そういった酒質になることは想像に難くないが、これも寒菊の新しい側面だということなのだろうか。
尚のこと、寫楽の剣愛山が味わってみたくなった。



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