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Order and Harmony

今はもう争いを行わない。
ボクは「Order」による縛りを受けていない。
世界は調和を保っている。

2019年、その国のimperial eraが変わる。
彼らには「ゲンゴー」と呼ばれるているものらしい。
それが変わり一つの時代が終わるのだとか。
ボクには対して、いやむしろ全然関係のないニュースであった。
東洋の端っこにある国の時代の呼び方が変わろうと僕らには関係のない事だ。
しかし、そんな事を言ってられたのは遠い昔の話だ。
あの時から順を追って何があったか書いていこう。

4月その国でゲンゴーが発表された。
レイワとか言ったと思う。
意味は「Order and Harmony」とBBCが記事にしていた。
秩序と調和。
重苦しそうだとボクはトーストをビールを片手にその記事をみていた。
その国の人達はいまだに王家の事を崇拝して、その代替わりにゲンゴーを変えているらしい。
まぁ、その国に限らずまっずい食い物しか作らない国もいまだに王を信じているみたいだし人間はまだまだ学んでいないのだろうと思う。
それらとは違いボクらの国は自由だ。
自由とは何かと問われると戸惑ってしまうが、自由なことには間違いない。
自由について深く考えなくて良い程度には自由である。

5月、その国のゲンゴーが変わった。
5月になり正式に変わったという記事を見るまではゲンゴーの存在なんて忘れていた。
その程度のものだった。
その国の一番偉い人が、つまりは王様が出てきて儀式を行なっていた。
その国の人達はいまだに神とかそういうものが好きなのであろう。
先の大戦から学んでいない。
神を信じ、神の風を期待してぶつかり、儚く散ったというのに。
命をああやって捨てれる民族をボクは狂気だと思うし、敬意もはらう。
もう何十年も前に終わった話であるけれど。
今のその国の人達を見ていてもあの頃見せた狂気は特に感じられない。
長年の平和ボケのせいであろう。

6月、その国の偉い学者さんが新しい治療法を発見した。
18になってからずっと肉体労働をしてきたボクには詳しいことはわからないが、なんでも臓器を簡単に作ることができて移植も容易らしい。
ショッキングな話ではあるが、その国ではない国の死刑囚が腕を切られた後にその治療法で事前に作られてあった腕をつけて縫い合わせると再び動かすことができていた。
神経とかうまく昨日しているのかと疑問に思ったが難しいので調べる気も起こらなかった。
記事によるとその国が主体となって今後サービス化していくみたいだ。
また、その国の人達の抵抗をなくすために病院などで気軽に治療法を利用できるのだとか。
クローンを作れたりするのではないかと思いつつ記事を閉じて眠る。

年は飛んでまたある日、新しい治療法が大勢に利用できる仕組みをその国は完成させたみたいだ。
ビジネスに応用する訳ではなく、数年は慈善活動の一環として紛争地で無料で治療法を提供していくらしい。
平和ボケというか太っ腹というかボクにはよくわからない。
その国の人達はもう全員が使いたいときにその治療法を使えるみたいでむしろ積極的に他国へ広めていきたいらしい。
その国の誇りだとか。

治療法が提供されてから一年後、その紛争地で戦争がなくなった。

その国では技術がどんどん進歩していき、人が死ななくなっていった。
本体が死なないようになったのである。
というのも、とうとうクローンが完成したのである。
感情にその人とクローンの連続性があるのかと疑問に思うが、本体が電気信号を発信しそれに従いクローンが動く。
そしてクローンが感じたものをまた電気信号により本体へと繋がる。
つまり遠隔操縦のロボットとパイロットの関係のようだ。
この頃から、ボクらの国でもその技術が使えるようになった。
ボクはそういうのが怖いから、というかそんなに生に願望がないから使わないであろう。

この所、セカイで争いが減っている。
そりゃあ、傷つけても本体が死なない人が65%を超えたら殺す側もやる気が無くなるだろうとも思ったりする。
岩を山の上に持っていって、登りきったら岩が落ちていってしまう、それでまた岩を持ち上げる・・・みたいな面倒な作業のようにも思える。
つまりみんな殺すのが面倒になっているのだろう。
みんなその技術を使った。
ボクの近隣住民で生身の身体なんてボクくらいじゃないかとも思う。
その技術でセカイは平和になった。

セカイでその技術を使い、なおかつクローンによって日常生活を送っている人が80%を超えた。
そんなある日、その国の王様が会見を行うみたいだ。
テレビをつけて英訳を聞く。
その会見を聞き驚いた。
セカイが平和になった理由は別に人を殺してもあまり意味がなくなったからではないのだ。
人が殺せないようになっていたのだ。
つまりは本体がクローンにある対象を殺せという信号を送ってもそれを受信しないようになっているらしい。
殺すという事に限らず、負の行為を全く受け付けないのだとか。
秩序と調和が取れたセカイ。
そんな時代にしたかったというその国の王様のエゴ。
いや、理想は素晴らしいし目指すべきではある。
しかし、それを勝手にしていいのか。
いや、言い訳がない。
「Order -命令・指示-」
もう、それに80%以上の人が逆らえない。
きっと20%の人が抵抗しても殺されるだろう。
80%の人間による「クローンではない人間を殺せ」という「order」で。
あぁ、なんてセカイだ。
でも、ボクはまだ自由だ。
「Order」による縛りを受けていない。
そうだ、今からお隣さんを殺しに行こう。
意味のない行為だとはわかっている。
殺してもしなない。
死ぬ自由も与えられていない。
ボクは殺す自由を今から謳歌しに行こうと思う。
この狂った「Order and Harmony」のセカイに自由を示すために。

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集まったお金で本を買うか友人とご飯に行きます。 それが執筆の糧になります。 どうぞよしなに。