ある「ELLEGARDENへの言及」

5/10 22:40 やっとこさ仕事を終えて帰宅し、スーツを脱いで、僕は僕の耳元にだけ響く細美さんの声を聴きながらスマートフォンに向かっている。晩御飯もお風呂もまだだけど、今日はどうやら僕にとってとても大事な日になりそうで、今からこのごちゃごちゃの頭の中を整理すべく、また何よりも優先すべき事項としてこの感動を今のこの気持ちを殴り書きでもいいから書き留めておかなくちゃと思って、いまこれを書いている。

本当に突然だった。

今日は上司から全体へできるだけ定時に帰るように、と言われている日だったけれど、僕の眼の前にはなんともわかりやすいタスクの山。はぁ〜定時どころかいつもより遅くなっちゃうだろうな〜なんて思いながらちょっと気分を変えたくてスマホをいじってTwitterを見だした。19時になる少し前だった。そこでは友達が「ががが...」と呟いていて、それにまたもう1人の友達が「エルレガーデン復活やばくない?」と返していた。

???

は?

どゆこと?

何度も見返した。チケットが安い?何のこと?え、どゆこと、ちょ、まって、え?聞いてない聞いてない、本気で言ってる?冗談だったらおこよ?我おこプンプン丸だからね?

と心の中の一昔前のギャルが興奮気味である。しかし、私はいたって冷静だ、なんせここは職場だし、ぬかよろこびなんてしちゃったら恥ずかしいんだもの。指先はTwitter内の検索機能を表す虫眼鏡のマークをたしかな足取りでタップする。

検索するまでもなかった。トレンドの欄には #エルレ復活 の文字が。しだいに脈が早くなってきて指先も千鳥足だ。カラッカラの喉にポカリ流し込むときみたいな勢いで溢れる情報をゴクゴクと飲み込んだ。すぐさま500mlペットを飲み干した。

どうやらマジやな...。

この頃には僕の脈拍はいつもの倍近くになってたんじゃないか。全身に血が流れているのを久しぶりに感じた。末端まで赤い液体が巡るものだから手足が痒くなった。これを興奮と呼ばずになんと呼ぶのか(反語)。

しかし落ち着け、ステイ、俺ステイ、カームダウン。ここは職場だ。ウォークマンに手を伸ばしてアーティスト:Eの欄を眺めながらこれを爆音で聴きたい気持ちをぐっと、それはそれはぐっと堪えて、やっとこさ絞り出した言葉が

「嬉しすぎて俺のバターがジグしてる」

もうワケわかんなかった。ジタバタしても始まんなかったから、友達の「たった一つのことが...」というリプライを合図に「今を迷わせ」ないことにした。

「ちょっと喫煙所いてきます!」

タスクの山をあとにして、少し早足で敷地外へと出る。イヤホンのコードが絡まっているのがじれったい、いつもより音量を2つ上げて、僕のチョイスは「BRING YOUR BOARD!!」。"サーフライダー"の「It's time for a ride The tide is getting high」が流れるともう、なんもかんも、どうでもよくなって、交互に去来するおかえりとありがとうのせいでちょっぴり泣いた。

このアルバムを聴くと今でも中学生の頃ヘビーに通ったTSUTAYAがありありと目の前に浮かぶ。あの頃マキシマム ザ ホルモンにどハマりしていた僕は、もうとにかくそのへんのメロコアやパンクロックと分類された棚のこっちを向いてるCD(店員さんオススメのCDはジャケットを表に向けて並べてあって、POPが添えてある。CDショップのあの感じ。)を片っ端から聴いていた。それでもやっぱりジャケットで選んだりはしてて、なんかヘンなモンスターみたいな絵が描かれていたこのアルバムはすごく手に取りやすかった。それが僕のELLEGARDENとの出会いだった。次がペパロニ(女の子のお尻が良かった)で、イレブンファイヤー、ライオットと次第にウォークマンの曲も増えていった。

友達が「細美さんって英検2級もっとるらしいよ」と言って「あぁ、やけんあんなに英語上手いんか」と返した会話が青苦さと酸味を帯びてフラッシュバックする。

僕の町の高架は残念ながら東西に延びていたけれど、それでも高架下を歩く時はしたり顔で"高架線"を流したりしていた。

9月9日は毎年"No.13"を聴く。これはきっとあるあるだよね。

活動休止を知ったのはしばらく後だった。2008年の休止らしいけれど、おそらくリアルタイムではなかっただろう。

僕は高校生になった。the HIATUSのアルバムも聴いてみた。好きになろうと努力した。同じ声だ。同じ声なのに。僕の好きだったバンドの面影はそこにはなかった。

僕は大学生になった。ロックフェスや好きなバンドのライブに自由に行けるようになった。いくつもの熱中できるバンドを知ることが出来た。ELLEGARDENは僕の中でのシャッフルリストの優先順位の上の方を維持しながらも、やはりもう片方の手で数える位置にいた。
そんな折、1機のモビルスーツの目がピンク色に光る。レーベル「じおんぐん」から赤い彗星のごとくデビューした彼らの名はMONOEYES。なんと驚くことにスコット・マーフィー(アリスター)と細美武士が一緒にバンドをやっているじゃないか!僕は夢中で"My Instant Song"のMVを齧り付くように見た。
好きだ、the HIATUSよりはあの感じに近い。スコット・マーフィーのハモりも心地いい。the HIATUSよりもエルレっぽい。
僕よりもっとエルレが好きな人たちには殴られそうな言い回しをするけれど、僕はその時すごく久しぶりにエルレの新曲を聴けたような気がして、嬉しかった。

でも同時に、「あぁ、エルレはきっと復活することはないんだろうな」とも思った。

細美武士があのthe HIATUSの世界観から離れて野外が似合うシーンに帰ってくる。モッシュができるバンドとして帰ってくる。それがELLEGARDENとしてではなかったことに、僕はどこか寂しさを感じていた。「あくまで休止だから!いつかはそのうち!ね?」と口では言っていても、どこか諦めていた。

僕は社会人になった。まだウンコみたいに使えないペーペーだけど、日々自分なりに精一杯仕事を頑張っている。そんなある日の出来事だ。

May 10th It's sunny day. ミスチルの25周年記念で音楽アプリでもミスチルが聴けるようになったのが嬉しくて、朝からSpotifyでミスチルを流してた。GW明けの木曜日だからか疲れ方が違う、絶対この感じは金曜日だろ、なんて考えながら「帰りもこの続きから聴こう」そう思っていたのにだ、彼らの復活ですっかり脳内の話題はもちきりだ。右脳はもうずっとヘドバンしながら踊ってる。左脳では目まぐるしく号外が飛び交っている。この感覚を忘れたくなかった。この夜が終わる頃にはきっと脳梁がちゃんと仕事をこなして右脳も左脳もお行儀よく今日のこの出来事を喜ぶのだろう、今日を記憶に変えていくのだろう。でもこれじゃダメだと思った。この騒がしい、雑然とした今を書き留めておくべきだと思った。

日付が変わってしまった。まだ晩御飯もお風呂も済ませてないのに。まだ金曜日がラスボスみたいな顔してニヤニヤしてるのに。でもこれでいい、これでいいのだ。ちゃんと殴り書きでも言葉にした。だからきっと明日も頑張れる。

Hi−STANDARDがシーンに帰ってきた。AIRJAMが開催される世界線上ではいま次々と奇跡が起きていて、DOPING PANDAがまたしてもミラクルを起こしちゃった。次はビークルの番かな?それともゴイステ?FACTが一夜限りの再結成とかしてくれないかな、THE MAD CAPSULE MARKETSは?THE BLUE HEARTSはどう?
ねぇ、想像するだけでワクワクしちゃう。
清志郎さん、志村、K、見てる?楽しいよ。
シド、コバーン、チェスター、どうか天国から見守っていてくれよな。

みんな、今年の夏は新木場か千葉か仙台のどこかで会おうな。お伽噺の続きを一緒に見よう。


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